AIによる働き方改革とは?成功事例の紹介とAI導入のポイントを解説

少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化するなか、働き方改革の重要性が高まっています。
その解決策として、AI活用による業務効率化が注目を集めています。しかし、単にAIを導入すれば働き方改革が実現するわけではありません。AIの特性を理解し、うまく活用していくことが重要です。

本記事では、AIを活用した働き方改革の必要性や具体的な活用事例、導入時のポイントについて詳しく解説します。
働き方改革でAI活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

AIで働き方改革を行う必要性

そもそもAIとは?

AIとは、人工知能(Artificial Intelligence)の略称で、人間の知的な行動を機械で再現するための技術です。機械学習や深層学習といった手法を用いて、大量のデータから規則性やパターンを見つけ出し、新しいデータに対して適切な判断や予測を行うことができます。

近年、AIの技術的進歩と普及が目覚ましく、さまざまな分野で活用されるようになっています。特にビジネスの現場では、AIを用いた業務の自動化や効率化により、生産性の向上や人的ミスの削減など、大きな効果が期待されています。

働き方改革が必要な背景

日本では、少子高齢化の進行により労働力人口が減少する一方、長時間労働や非正規雇用の増加など、さまざまな労働問題が顕在化しています。こうした状況を受け、政府は働き方改革を重要施策に位置づけています。2019年4月には「働き方改革関連法」が施行され、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得などが盛り込まれました。

しかし、労働力人口が減少するなかで、生産性を維持しながら働き方改革を実現するのは容易ではありません。そこで注目されているのが、AIを活用した業務の効率化です。AIの導入で、定型的な作業の自動化による従業員の負担軽減や、AIの高度な分析による業務の最適化や意思決定への支援も期待できます。労働力不足と働き方改革という2つの課題を同時に解決するためにも、AI活用は有効策となるでしょう。

AIが得意・不得意な業務や分野

働き方改革を進めるうえで、AIをうまく活用することで業務の効率化や生産性の向上につなげることができるでしょう。そのためにまずはAIの機能を理解しましょう。

AIが得意・不得意な業務や分野を解説します。

AIが得意なこと

AIは大量のデータを高速に処理し、複雑なパターンを見つけ出すことが得意です。例えば、画像や動画の認識・分類では、AIを用いることで、膨大な量の画像データから特定の情報を高精度で検出することができます。

また、自然言語処理の分野では、AIを使って大量のテキストデータから分析や意図理解を行うことができます。そのため、営業や販売業務では顧客の購買パターンを効率的に分析するといったことが可能です。需要予測や在庫最適化などの業務でも、AIは過去のデータから将来の需要を予測し、適切な在庫量を算出するといった精度の高い分析を行うことができます。

このようにAIはデータ処理や分析を得意としています。

AIが不得意なこと

AIは経営戦略の立案や新商品の開発といった、高度な意思決定、人間の総合的な判断力が求められる業務は不得意です。さらに繊細な表現が必要とされる小説や脚本の執筆、デザインの制作など、クリエイティブな発想が必要な業務も、現状ではAIが完全に代替することは難しいでしょう。
加えて、法律や医療など、高度な専門知識が必要な分野での判断は、AIだけでは困難なケースが多くあります。人間の柔軟な思考力や、経験に基づく判断が不可欠な領域は不得意だと言えます。

AIと人間の得意分野を理解し、両者の強みを活かすことが、AIを活用するうえでの重要なポイントとなります。

働き方改革でAIを活用するメリット

働き方改革においてAIを活用するメリットを解説します。

人手不足への対応

少子高齢化による人手不足は多くの企業で深刻化しています。こうした状況下でも、AIを活用することで、単純作業や定型業務に必要な人員を削減し、限られた人材を付加価値の高い業務に振り向けることができます。

例えば小売業界では、AIを用いた需要予測により適切な在庫管理を行うことで、店舗スタッフの業務負担を軽減しながら、売り上げの最大化を図っている事例があります。また、金融機関においては、AIの画像解析を活用した審査業務の自動化により、人手不足の解消と融資判断の迅速化を実現しています。


*AI画像解析について、詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

関連記事 AI画像解析とは?画像解析の基礎から活用事例までをわかりやすく解説

業務効率化で長時間労働を防止

日本の労働者は長時間労働の傾向にあります。OECD加盟国における労働者1人あたりの年間平均労働時間(2021年)を比較すると、ドイツの1,349時間に対し、日本は1,607時間と258時間も長くなっています。

長時間労働は心身の健康を損なうだけでなく、生産性の低下にもつながります。AIを活用した業務の自動化や効率化により、労働時間の短縮と生産性の向上を図ることができます。

定型業務の自動化による従業員の負担軽減

書類確認、受発注業務、請求書の処理、在庫管理などの定型業務をAIで自動化することで、従業員の負担を大幅に軽減できます。また、ヒューマンエラーで起こるミスの削減にもつながり、業務の品質向上も期待できます。例えば建設業界では、AIを活用した建設図面の自動チェックにより、設計ミスの早期発見と手戻り作業の削減を実現しています。


*ChatGPT環境の概要と運用効果について、自社事例を交えてご紹介しています。

導入事例 Azure OpenAI Serviceによる安心・安全なChatGPT環境を構築
生成AIを活用するための利用ガイドラインをパッケージ化した企業向けChatGPT導入のサポートを開始

AI活用で業務効率化に成功した事例

それでは、実際にAIを活用して業務効率化を実現している事例を見ていきましょう。

チャットボットやAIによる問い合わせ対応自動化の事例

カスタマーサポートの分野では、チャットボットやAIを活用した問い合わせ対応の自動化が進んでいます。大手コールセンターのT社では、オペレーターの生成AI活用によって、難しい問い合わせでも顧客を待たせず即座に回答できるようになりました。さらに、電話を受けたオペレーターが回答できない場合、より専門知識があるスタッフに引き継ぐ「エスカレーション」の作業が6割削減される見込みです。

AI-OCRとRPAを組み合わせた業務自動化の事例

AI-OCRとは、AIを活用した光学文字認識技術のことを指します。紙の文書をデータに変換する際に、AIを活用することで高精度な読み取りが可能となります。

AI-OCRを導入することで、手書き文字や印刷文字を高精度で読み取り、デジタルデータ化することができます。金融機関のY銀行では、インターネットバンキングの利用申込書や融資契約書などの読み取りを自動化し、RPAの範囲を広げたことによって、人的ミスが大幅に削減されました。
こうした業務効率化を行うことで、長時間労働を防ぐことが可能となります。


*AI活用と関連性の高いDXについて、こちらの記事でご紹介しています。

関連記事 DXとAIの関係性とは?AI活用の現状と課題、活用のポイントなどを解説

生成AIとマルチモーダルAI活用で自治体職員の作業時間削減の事例

生成AIとは、コンピュータが学習したデータを元に、新しいデータをアウトプットする技術です。人間の思考に近い処理が可能なため、業務の効率化や人材不足の課題解決に向けた活用に期待が高まっています。マルチモーダルAIは、多様な種類の情報(言語、画像、音声、動画など)を一度に認識、検索する技術です。

富山県では、生成AIとマルチモーダルAIを活用し、自治体職員の働き方改革を推進する実証実験を実施しました。
地方自治体、特に広域自治体である都道府県では、取り扱う業務が幅広く、それに伴う書類や資料も多岐にわたり、形式も保管場所もバラバラという現状があります。また、数年ごとの人事異動で引き継ぎや業務知識習得の時間が確保しにくいため、職員の業務負担が大きくなっているという課題がありました。
そこで書類検索の作業では、業務書類をデータ化してAI活用で検索した結果、必要なファイルを短時間で効率的に見つけられるようになりました。これにより広報課の問い合わせ対応時間が削減に成功し、さらに利用者に特別なスキルがなくてもわかりやすい回答が可能となりました。

複雑化・多様化する自治体業務をAI活用で効率化することで、人口減少時代においても安定した行政運営と自治体職員の働き方の満足度向上が期待できます。


*こちらの事例について、下記のページで詳しく紹介しています。

関連記事 生成AIとマルチモーダルAIを組み合わせたデータ利活用の実証実験を通じて、「一歩先の自治体DX」を検証!
ペーパーレスや電子化による「書類DX」の先は、業務の在り方から見直す「業務DX」の時代へ

関連記事 インテック、富山県と生成AIおよびマルチモーダルAIを活用した働き方改革の実証実験を実施
~複雑化・多様化する自治体職員業務の効率化検証~

AIで働き方改革を行う際に注意するポイント

実際にAIを導入して働き方改革を行う際は、どのような点に注意すべきか解説します。

課題の明確化とAI活用の目的を設定

AIを導入する前に、まず自社の働き方改革で解決したい課題を明確にすることが重要です。例えば、単純な業務の自動化による生産性向上が目的なのか、顧客対応の高度化によるサービス品質の向上が目的なのかによって、導入すべきAIの種類や範囲は異なります。

また、AIを活用してどのような効果を期待するのかを明確にすることも大切です。定量的な目標を設定することで、導入後の効果検証がしやすくなります。

事前準備と体制構築

AIを導入する際は、AIに学習させるデータの整備が欠かせません。自社に蓄積されたデータを活用できるよう、データの整理・統合・クレンジングを行う必要があります。
また、AIを活用した業務改革を進めるためには、現場の業務知識を持つ社員を巻き込んでプロジェクトを進めることが重要です。現場の意見を取り入れながら、実践的なAI活用方法を検討しましょう。

加えてAIを導入・運用するための専門チームを社内に設置するなど、体制面の整備も必要です。専門チームが中心となって、AIの導入から運用、効果検証までを一貫して行える体制を構築することが望ましいでしょう。

AIと人間の業務分担を設計

AIを導入する際は、AIと人間の役割分担を明確にし、それぞれの強みを生かす形で業務設計を行う必要があります。具体的には、AIには単純作業や大量のデータ処理を任せ、人間はより創造的で高度な判断が必要な業務に専念するといった役割分担が考えられます。

また、AIの導入によって、一部の業務が自動化されることへの不安や抵抗感を持つ社員もいるかもしれません。AIを活用した場合に業務がどう変わるのかを社員に丁寧に説明し、コミュニケーションを十分に取ることも重要です。AIの導入目的や期待される効果、社員へのメリットなどを明確に伝え、理解を得ることが欠かせません。

まとめ

AIを活用することで、業務の自動化や効率化を進めて生産性を向上させ、働き方の改善をも実現することができるでしょう。
AIを導入する際は、解決したい課題の明確化と目的設定など、事前準備とデータ整備、AIと人間の役割分担の明確化とコミュニケーションが重要なポイントとなります。

今後、AIの技術はますます発展していくことが予想されます。働き方改革の手段のひとつとして、AIを効果的に活用することで、企業の持続的成長と従業員の生産性向上や満足度の改善につなげていきましょう。

一方で、自社でAIを導入・運用していくには、AIに関する専門知識やデータ整備、社内体制の構築など、乗り越えるべき課題も少なくありません。
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公開日 2024年06月28日

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