教育DXとは?学校の現場に与えるメリットと課題についても解説
ビジネスの場で話題になることが多いDXは、教育現場でも導入が進められています。
最新のデジタルテクノロジーを活用して行う教育現場の変革を「教育DX」といいます。
児童・生徒への指導方法や手段、教職員の業務などをテクノロジーによって変えていく取り組みです。
本記事では、教育DXの概要や求められる背景、メリット、導入のポイントなどを紹介します。
文部科学省も推進している教育DXとは
教育DXという名称を聞いたことはあっても、その内容についてあまり理解していない人も少なくありません。そこで、まずは教育DXの概要について解説します。
教育DXの概要
教育DXのDXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称で、デジタルによる変革という意味があります。デジタル技術によってビジネスや社会に変革をもたらすことを指し、主にビジネスの場でよく使われる用語です。
教育現場でもDXの必要性が高まり、文部科学省は2020年に、「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を発表しました。
児童・生徒への指導にデジタルを取り入れるとともに、教職員の業務の効率化も目指しています。
教育DXが求められる背景
教育DXが求められる背景にはさまざまな事情があります。
まず、IT人材の不足に備える観点から、優れたIT人材を育成するためにデジタルを活用した教育が必要です。将来、すべての仕事でパソコンをはじめとしたデジタルツールを使う可能性が高まっており、ITエンジニア以外の職種でも、これらのツールに早いうちから慣れ親しんでおくことが重要です。
同時に、コロナ禍のような状況では児童・生徒や教職員が学校に通えないことがあります。そのような場合に備えるためにも、教育DXは必要不可欠です。また、教職員の業務負担を減らすためにも、さらなる教育DXの導入が期待されています。
文部科学省のDX推進プラン
2020年に文部科学省は、「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を発表しました。
2022年には、デジタル庁、総務省、経済産業省と連携して「教育データ利活用ロードマップ」を公表し、教育現場におけるDX推進を推奨しています。
今回は、「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」の「小・中学校」と「高等教育」に関する内容について解説します。
小・中学校でのプラン
小・中学校では、ICT環境の整備と「GIGAスクール構想」が進められてきました。
GIGAスクール構想とは、児童・生徒が1人1台のパソコン・ネットワークを利用できる環境を整備する取り組みです。文部科学省は、1人1台端末を支給することにより、デジタル社会に取り残されることのない教育を目指しています。
また、教育DXの一環として以下についても推進を行っています。
・学習eポータル
日本の初等中等教育に適した学習プラットフォームです。GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を使って、デジタル教科書や教材、学習ツールなどをニーズに合わせて活用し、学習状況の把握や振り返りができるようになります。
・MEXCBT(メクビット)
学習eポータルからのリクエストを受けて、問題を管理し、出題や採点を行うシステムで、希望する全国の小・中・高等学校などに提供されています。文部科学省によると2021年12月にスタートし、2023年11月時点で約2.6万校、約820万人が活用しています。
*参考:文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について|文部科学省
・デジタル教科書
紙媒体での教科書の内容をそのまま電子的記録した教材です。画面の拡大縮小、音声読み上げ機能により、視覚障害のある児童生徒への支援が必要な場面での活用にも期待されます。2024年度から小学校5年~中学3年の英語の教科書で導入予定です。
GIGAスクール構想の1人1台端末については、当初2023年度での完了を目指していましたが、コロナ禍により前倒しされ、2021年3月末にはほとんどの小・中学校で完了しました。故障やバッテリーの耐久年数といった端末の問題に備え、5年程かけて計画的に更新する計画も具体化されています。
GIGAスクール構想の計画は当初、プログラミング学習に主眼がおかれていましたが、コロナ禍を経験したことで、リモート授業に切り替えられる環境づくりも計画のなかで重視されるようになりました。
今後、速度やセキュリティポリシーに関するネットワーク環境の改善や、校務における教育DXの推進などについても随時進められていくとされています。
高等教育における推進プラン
高等教育(高等専門学校、専門学校、大学)ではより具体的に、IT人材を育成することが目標です。現場実習・実験に近い経験を授業に取り入れ、実社会で役立つ人材を育てるとしています。
ICTを利活用することで、どこにいても国際的な教育機会を享受できるようにし、国際競争力のあるハイブリッド教育環境を実現する取り組みを推進するなどとしています。
2021年には「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」をスタートさせ、国公私立大学へ補助金の交付などを行っています。また、短期大学と高等専門学校を含む大学に対して、デジタライゼーション・イニシアティブ「Scheem‐D」を実施し、大学教員やデジタル技術者、企業が協働で、デジタルを取り入れた教育アイデアに対して実装していく取り組みを継続して行っています。
教育DXのメリット
教育DXを導入・推進した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
教職員のメリット、児童・生徒と保護者のメリットの両方を見ていきましょう。
教職員のメリット
感染症まん延時でも対応しやすい
例えば、感染症の拡大によって学校での授業が難しくなっても、日ごろから端末とネットワークの環境を整えておけば、すぐにリモート授業に切り替えることで授業が滞りません。教職員は自宅からでも授業やテストの出題・チェック、業務に必要な申請などができ、通勤日を減らすことができます。
児童・生徒一人ひとりに最適化された指導ができる
1人1台の端末を使用して行うICT教育は、生徒ごとの習熟度に合わせた教育が可能です。
「デジタルドリル」、「CBT試験」などでは個人の習熟度に合わせた教育ができます。テスト結果をデータ化して分析することで、苦手分野をサポートし、得意分野を伸ばす授業も実現できるでしょう。
教職員の業務負担を軽減できる
事務作業の多くをデジタル化することで、業務負担を軽減できると考えられます。プリントや書類の作成、出欠確認などがシステム上で行えるため、以前よりも作業時間を減らすことが可能です。児童・生徒の学習内容・成績もデータ化して保存できるので、必要に応じてすぐにデータを抽出でき、採点や集計もAIに任せられるようになるとされています。
児童・生徒と保護者のメリット
ITに関する技術と知識を早くから身につけられる
これから社会に出るには、少なからずIT関連の知識があるほうが有利に働きやすいでしょう。学校で早めにITを身近に感じておくことで、社会に出てからのスキル習得が容易になります。また、SNSで児童・生徒がトラブルに巻き込まれることも多く、ITリテラシーに関する教育の必要性が高まっています。ITに関する知識を学校で早い段階から学んでおくことは重要です。
保護者にとっては学校の状況を把握しやすい
児童・生徒も保護者も、オンラインのデータで勉強の進み具合を的確に確認できます。学校との連絡をオンラインでやりとりできるようになり、欠席や遅刻などの連絡もすぐに入れられます。また、子どもの行動を学校側とオンラインで共有することで、急なトラブルにも対処しやすくなるでしょう。
教育DXを推進する際の課題
教育DXを導入・推進するにはいくつかの課題があります。
どのような点が問題になりやすいかを考えながら、進めていくとよいでしょう。
インフラ整備のための負担
教育DXの導入を進めるには、まず、デジタル端末やシステムなどのインフラを整備することが必要です。学校内だけではなく、教職員や児童・生徒が自宅で使う際の端末やインターネットの状況を把握しなければいけません。また、セキュリティが万全ではないシステムは、サイバー攻撃の対象となる場合があります。
教師の知識・経験の不足
実際に端末やネットワークを使う教職員の知識や経験が足りていないという問題があります。コンピュータやITを取り巻く状況は日進月歩のため、常に使用者は新しい情報にアンテナを張らなくてはいけません。サイバー攻撃が高度化、悪質化の一途をたどっていることもあり、ITを活用した効果的な授業方法の模索、習得に注力するだけではなく、教職員にもセキュリティに関する一定の知識が求められます。
教育DX導入の事例
GIGAスクール構想を推進するために、文部科学省が運営する「StuDX Style」より、教育DXを取り入れている自治体や学校の事例を紹介します。
校務のDXを積極的に推進
ある学校では、校務のDXとしてGIGAスクールで導入したクラウドのソフトウェアを活用してDXの推進に取り組んでいます。学級だよりや連絡帳などをパソコンで作成し、学習支援ソフトで配信を行っています。
*参考:「学校全体で校務のDXに取り組む」練馬区立関町北小学校~『職員室をクラウド化します』~
ICTを活用した先進的な授業を実施
ある義務教育学校では、早くからICT教育を積極的に取り入れてきました。児童・生徒の発達段階に応じて、最先端のAIやIoT、プログラミング教育を実施しています。また、ICT教育を通じて、協働力やプログラミング的思考、創造力などを育んでいます。
*事例紹介ページにて高岡市教育委員会様の取り組みについても詳しく紹介しています。
事例紹介最新版文部科学省セキュリティガイドラインに則した校務のクラウド化で、教職員の働き方が変化!
支えるのは「技術・制度・運用が揃った教育情報セキュリティ管理基準」と「インテックの技術力」
教育DXは教職員にとっても児童・生徒にとってもメリットが大きい
いま、学校でもDXの導入が進んでいます。教育DXを推進することで、教職員の業務負担が軽減し、リモート授業や個人の習熟度に合わせた授業が実現しやすくなります。児童・生徒にとっても、早い段階からITやAIに慣れ親しむことは、社会に出た際に役立ちます。教育DXは教職員と児童・生徒のどちらにもメリットがありますが、導入にはインフラ整備、万全なセキュリティ対策などの専門知識が必要です。そこで、教育DXの導入を外部に委託するという方法もあります。
インテックでは、文部科学省のGIGAスクール構想や、教育情報セキュリティポリシーガイドラインに沿って『校務のクラウド化支援』を提供しています。インテックの『ID認証サービス(認人)』や『マネージド型クラウドサービス(EINS/SPS Managed)』『WAF構築サービス』で構成したネットワークと、統合型校務支援システム、クラウドストレージを組み合わせて、校務で必要となるシステムをクラウド上で利用できるようにするサービスです。教育DXを進めていく際にセキュリティでの不安をお持ちの企業・教育施設のご担当者は、ぜひ一度ご相談ください。
*インテックが提供する「校務のクラウド化支援」の詳細はこちらのページをご覧ください
校務のクラウド化支援公開日 2024年05月17日
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ゼロトラストセキュリティで実現!安全な校務のクラウド化とは
これまで学校現場では、内部ネットワークのなかにサーバを構築し、限定した場所や端末から内部ネットワークを利用する「オンプレミス」でのシステム形態が主流となっていました。しかし、これからはどこからでもアクセスして校務が行える「クラウド化」の実現が求められます。
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