スマートシティにおけるデータ活用|都市機能の向上と新しい価値の創出

デジタル化が進む中、都市機能の向上や新しい価値の創出には、データの活用が不可欠です。

本記事では、自治体や企業がどのようにデータを活用できるのか、事例を詳しく解説します。
この記事を参考にスマートシティの促進へ活かしてみてください。

データ利活用型スマートシティとは

データ利活用型スマートシティとは、ICTを駆使し収集したビッグデータを活用することにより、住民の生活の質(QOL)の向上と都市の課題解決を目指す新たな街づくりのことです。
日本政府が提唱する「Society 5.0」と密接に関連しています。

IoTやAIを利用してデータの活用を推進し、高品質なサービスを提供することで、市民のQOLや生産性を高め、都市の活力を維持し創出しています。

ビッグデータを用いた街づくりの始まりは、2012年です。
初期段階では主に分野ごとにシステムを構築して課題解決にあたっていました。
複数分野にまたがった社会問題を解決するため、2017年に総務省は「データ利活用型スマートシティ推進事業」をスタートさせました。

実現にはデータ連携基盤(都市OS)が欠かせない

データ利活用型スマートシティの成功の鍵は、データ連携基盤、つまり「都市OS」です。
さまざまな事業者や他の地域が提供するサービス・機能を自由に組み合わせ、活用するためには、システム的な共通の土台を用意する必要があります。
この共通の土台のことをデータ連携基盤(都市OS)と呼びます。

データ連携基盤によって、さまざまなデータが連携され、効果的に利用されることで、スマートシティ内で必要な情報にすぐアクセスできるシステムが整います。

関連記事 スマートシティを実現するために必要なデータ連携基盤とは?都市運営の鍵となるデータの活用

スマートシティではオープンデータの活用も必要

オープンデータを活用することで、スマートシティのサービスや政策策定において、より広範な視野を持った取り組みが可能です。
データにはオープンデータ以外にも、行政データ・企業データなどがあります。

以降では、データの種類について詳しく解説していきます。

オープンデータとは

オープンデータとは公共機関によって収集され、誰もが自由にアクセスや使用、加工、再配布できるよう一般に公開されているデータのことです。
主に以下のような幅広い調査に基づく統計データのことを指します。

●生活状況
●消費動向
●景気動向 など

オープンデータは、政府や地方自治体などの公的機関が提供する公式Webサイトから無料でダウンロードできます。


関連記事 自治体によるオープンデータの活用事例6選!意義や公開手法など解説

行政データとは

行政データとは行政機関に集積されたデータのうち、主に守秘義務がなく積極的に公開されているデータのことです。
例えば、交通量渋滞情報や事故情報などの交通情報やひったくり、不審者などの犯罪情報など行政データにあたります。
また、河川の水位情報や台風、津波情報など災害予知情報なども行政データです。

企業データとは

企業データとは企業が運営に関連して収集し、分析しているさまざまな情報の総称です。
以下が企業データに該当します。

●顧客データ:顧客の購買履歴・好み・行動パターン など
●売上データ:売上高・販売数・原価 など
●広告データ: 表示回数・クリック数 など
●交通データ:移動・滞在・道路の通行量 など
●SNSデータ:フォロー数・リーチ数 など

パーソナルデータとは

例えば、以下の情報が当てはまります。

●氏名
●住所
●電話番号
●メールアドレス
●生年月日
●性別
●写真
●購買履歴
●移動履歴 など

パーソナルデータは、個人のプライバシーに関わるため、取り扱いには注意が必要です。
また日本の個人情報保護法やEUのGDPR(一般データ保護規則)など、外国法が適用される可能性があります。

一方、個人を特定できないデータは非パーソナルデータと呼びます。
例えば集団の動向や傾向、地域の気候データ、交通データなどです。
非パーソナルデータの中には個人の行動が特定されるデータもあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

データ活用事例

ここでは、データの中のオープンデータや行政データ、個人データが地方自治体にどのように利用されているかを具体的な事例を通じて紹介します。

オープンデータの活用事例:北九州市におけるオープンデータの推進

北九州市では職員の業務負荷を軽減するため、問い合わせが多いデータをオープンデータとして優先して公開しています。
周辺自治体と連携し、都市圏単位でのデータ公開に努め、積極的なデータの利活用を目指しています。
官民データ活用推進条例の制定をきっかけに庁内でのオープンデータの認知度が上がり、その活用が促進されました。

行政データの活用事例|会津若松市

会津若松市では行政データとICTを活用し、以下の2つの取り組みを実施しています。

●地域情報ポータル「会津若松+」
●loTヘルスケアプラットフォーム

会津若松市が運営する「会津若松+ 新しいウィンドウで開く」は、 年齢や性別などの個人の属性情報(年齢・性別・家族構成等)を踏まえて、必要な情報をピックアップしてレコメンドする機能が構築されています。
loTヘルスケアプラットフォームは、健康情報を個人が管理できる基盤です。
ウェアラブル端末や自治体、医療機関などから集約された健康データを取得し、健康サービスを提供しています。

企業データの活用事例|札幌市

札幌市では「さっぽろ圏データ取引市場 新しいウィンドウで開く」に取り組んでいます。
データ取引市場とは、企業や団体が保有するデータを無償・有償で提供・利用できるサービスです。

以下のデータを公開しています。
●チ・カ・ホ人流データ
●火災状況及び救急状況
●新規許可食品営業営業許可施設一覧 など

データ取引市場では今後、地域団体や事業者と連携して、データ取引所活用のためのイベントを実施し、活用方法の具体化などを検討していきます。

パーソナルデータの活用事例|薩摩川内市の事例

薩摩川内市の医療機関や調剤薬局、介護事業所などがインターネットを経由し、患者のデータを共有するシステム「かごネット 新しいウィンドウで開く」の運用をしています。
かごネットは、薩摩川内市の医療・介護関係機関が相互に患者の医療情報を共有するシステムです。
病院や診療所、歯科、調剤薬局、介護事業所などが患者の医療データを共有するために使用されています。

例えば、患者の受診歴・病歴・アレルギー情報などの個人データが共有され、適切な医療サービスを提供してもらえます。
また、緊急時や災害時にも効果的に機能し、患者の治療履歴や処方情報に迅速にアクセスが可能です。


*自治体によるオープンデータ活用の活用事例について、こちらの記事もご覧ください。

関連記事 自治体によるオープンデータの活用事例6選!意義や公開手法など解説

スマートシティの取り組みは民間企業へ広がっている

スマートシティの取り組みは、データ利活用型スマートシティの動向とともに民間企業へ広がっています。

民間企業はビッグデータ、AI、IoTなどの先端技術を駆使し、スマートシティ内でのデータ収集、解析、活用を進めており市民の生活を豊かにし、都市問題の解決に貢献しています。民間企業が参加することでスマートシティの構築と運営における相乗効果が生まれ、より包括的かつ効率的な都市開発の実現が可能です。
またスマートシティのサービスとして市民に提供されるだけでなく、他の地域や海外にも展開され、経済的価値をさらに生み出す可能性を生み出そうとしています。

民間企業におけるデータ利活用型スマートシティの事例

民間企業がどのようにデータを活用し、スマートシティの進化に貢献しているか事例を以下で紹介します。

画像AI解析システム及びデータ連携基盤

株式会社愛媛CATVは「画像AI解析システム及びデータ連携基盤」を活用しています。

株式会社愛媛CATVはローカル5Gや画像AIの先進ICT・IoT技術を駆使し、産業創出において新たなプラットフォームを構築しました。
プラットフォームの構築で、商店街や商業施設、観光地、工場などでリアルタイムな情報を取得できるようになりました。

今後は収集したデータをケーブルテレビ専用チャンネルで地域住民へ発信し、日々の生活や行動に活用してもらいたいとデータの活用を検討しています。
具体的には街の監視カメラなどから収集される商店街や観光地の人流情報や駐車場の満員者情報、混雑情報などのリアルタイムな分析です。


*詳細は、こちらの導入事例をご覧ください。

導入事例 総務省『令和4年度 地域課題解決のためのスマートシティ推進事業』に採択地域共同利用型の『画像AI解析システム及びデータ連携基盤』を構築し民間主導によるスマートシティ・地域DXを推進!

ゆれくるコール

ゆれくるコールは、アールシーソリューション株式会社が提供するスマートフォン用緊急地震速報通知サービスです。
利用者があらかじめ設定した地点の予想震度や予想到達時間をプッシュ通知でお知らせしてくれます

気象庁の緊急地震速報のデータを活用し、地震発生直後に緊急通知を受け取ることで、利用者は事前に身を守る準備や心構えができる仕組みです。
また地震後にはコミュニケーションツールを活用して振り返りを実施し、次に向けた防災・減災のための対策を考えるきっかけにもなっています。

まとめ:データを活用したスマートシティの将来

スマートシティの将来は、データの利活用に大きく依存しています。
データを活用することで、交通・安全・エネルギー・医療・教育など、都市のあらゆる側面がスマート化され、市民の生活の質が向上します。

弊社ではIoTによるリアルタイムデータやオープンデータなど、さまざまなサービス・ソリューションと連携し、地域の暮らしに関連するデータを収集・可視化・利活用を促進するデータ連携基盤を中心とした「エリアデータ利活用サービス」を提供しています。

スマートシティに向けたデータ活用に関してお悩みの際は、お問い合わせよりご相談ください。

公開日 2024年03月15日

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  • 【自治体の担当者必見!】失敗しない!スマートシティの進め方ガイドブック

    本書はスマートシティの取り組みを推進するための進め方やコツについて解説するeBookです。
    スマートシティの取り組みを進める際の⼀助としてご活用ください。

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    スマートシティの実現を目指すお客様に向けて、データ連携基盤・都市OSの必要性やメリット、オープンデータの活用、各自治体での取り組み事例を紹介しております。

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