自治体によるオープンデータの活用事例6選!意義や公開手法など解説
デジタル化が進む現代において、自治体や企業が持つデータの価値が高まっています。
2016年に施行された「官民データ活用推進基本法」により、国および地方公共団体はオープンデータの取り組みを義務付けられました。
データ活用は新たなビジネスの機会創出や地域社会の課題解決に貢献する可能性を秘めた取り組みです。
しかし義務付けられた自治体にとっては、どのようにデータを活用すれば良いのか、方法や効果が明確ではありません。
本記事では、オープンデータを効果的に活用している自治体や民間事業者の具体的な事例を紹介します。
オープンデータとは
オープンデータとは、機械が判読できる形式で、二次利用が可能なルールに基づき公開されたデータを示します。
市民や民間企業はデータを自由に使い、加工や頒布ができ、商用利用も可能です。
オープンデータは例えば、人口統計や公共施設の場所などです。
分野横断的にデータを利活用・連携するデータ利活用型スマートシティの実現には、オープンデータの活用は欠かせません。
自治体や企業がオープンデータを効果的に利用することで、より良い社会の構築に貢献できます。
オープンデータの定義
オープンデータの定義には、以下の3つの要素が含まれている必要があります。
-
1. 二次利用可能なルールが適用されたもの:データが営利目的や非営利目的に関わらず、誰でも自由に加工、編集、再配布できるもの
-
2. 機械判読に適したもの:データは機械が読み取りやすい形式
-
3. 無償で利用できるもの:誰もが無償でアクセスし、利用できるもの
オープンデータは公共の利益のためだけでなく、民間企業による新しいビジネスモデルの創出にも寄与する可能性を秘めたデータであるべきです。
反対に著作権があったり、利用にお金がかかっていたりする場合はオープンデータに当てはまりません。
*参考:「オープンデータ基本指針」(首相官邸) を加工して作成
オープンデータの意義・目的
総務省では、以下のようにオープンデータの意義・目的を定義しています。
1.国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化
2.行政の高度化・効率化
3.透明性・信頼の向上
*出典:総務省ホームページ
オープンデータを活用することで国民や民間企業が政府と協力し、新しいサービスやビジネスモデルの開発に貢献し経済全体の成長を促進できます。
また行政機関によるデータに基づく意思決定により、効果的な政策立案やサービス提供が実現可能です。
さらに政府が提供するオープンデータにより、行政の透明性が高まって、市民による政策の分析や評価が容易になります。
オープンデータの公開手法
オープンデータは、情報が広く誰でもアクセス可能で利用しやすい状態で提供されることが重要です。
主な公開手法には、以下のものがあります。
- 政府や自治体などが保有するホームページ上で保有データを公開する方法
- ホームページにオープンデータのファイル一覧を搭載する方法
- オープンデータカタログサイトで公開する方法
実際の公開方法で多いのは、自治体のホームページ上です。
メンテナンスのしやすさやコストなどを考慮した上で、公開方法を選定しましょう。
*参考:「オープンデータ取組済自治体資料」(デジタル庁) を加工して作成
自治体のオープンデータ活用事例6選
ここでは、具体的にオープンデータを活用し、地域社会の発展やサービス改善に成功した自治体の事例を6選紹介します。
事例1【防災】福島県会津若松市「会津若松市消火栓マップ」
会津若松市は、官民データ活用法で定められたオープンデータ標準セットに含まれる消火栓の位置情報データを活用し「会津若松市消火栓マップ」を作成しています。
消化栓が見つからないという課題があり、消防活動の迅速化と市民の安全を目的に作成されました。
実際に消防団員が現地に到着するまでに消火栓の位置を把握できるようになりました。
また消火栓マップは、地域の防災意識を高めるためのツールとしても機能しています。
この他若松市では、横断的にデータが活用できるようデータ基盤サイト「DATA for CITIZEN」を運営しています。
*参考:「会津若松市消火栓マップ」(デジタル庁)
を加工して作成
事例2【防災】岡山県倉敷市「中国地域防災オープンデータMAP」
岡山県倉敷市は、地域の防災対策を強化するために「中国地域防災オープンデータMAP」を開発しました。
中国地域防災オープンデータMAPでは、官民データ活用法に基づく標準セットの防災関連データを活用しています。
市はデータを用いて以下の情報を市民に提供しています。
- 居住地の安全確認:位置周辺の安全性を確認できる
- いざというときの行動シミレーション:避難先を検索し、シミレーションできる
- 避難所情報の充実:任意に設定した位置周辺で避難できる場所を検索できる
- 日常生活の質の確保:災害後の生活支援情報を参照できる
市民は災害発生時の避難行動を迅速に取れて、安全性の向上が図られています。
また、市の防災計画の策定や改善にも役立てられ、災害対応能力の強化に寄与しています。
*参考:中国地域防災オープンデータMAP
事例3【防災/観光】京都府・京都市「KYOTO Trip+」
京都府・京都市では「KYOTO Trip+」を通じて、国際観光都市京都を訪れる旅行者に対し、観光情報と防災情報を多言語で提供しています。
KYOTO Trip+は、スマートフォンで情報収集をする旅行者向けに開発されました。
アプリでは、
- 観光情報
- 防災情報
- 気象情報
などを個々のニーズに合わせて多言語で提供し、安心・快適な旅行体験をサポートしています。
さらに、旅行者・住民が気象状況や減災に役立つ情報を投稿し、共有する機能も提供されています。
*参考:「KYOTO Trip+」(デジタル庁)
を加工して作成
事例4【保育】神奈川県横浜市金沢区「かなざわ育なび.net」
横浜市金沢区では、子育てに関する情報が行政のWebサイト内に分散し、孤立を感じる母親が増えているという課題に対処するため「かなざわ育なび.net」を開発しました。
きっかけは子育てに関する情報が行政のWebサイト内に分散して、検索性が悪くなったことです。
利用者は、子どもの生年月日や居住地の郵便番号を入力することで、健康診断・予防接種の時期や保育園の空き状況などの情報を簡単に検索できます。
かなざわ育なび.netは情報を提供するだけでなく、オープンデータ化とオープンソース化に取り組んでいます。
事例5【行政】石川県羽咋市「羽作市データ公開サイト」
石川県羽咋市は、行政の最適化や効率化を進めるために「スマートシティ化」を新たなまちづくりのテーマとし、データ連携基盤を構築し、様々なビッグデータの利活用を行うことを目指したスマートシティデータ連携基盤を構築しました。
この取り組みにより市役所内で分散していたさまざまな情報を一元化し、可視化できるようになりました。
例えば、河川監視や観光用のライブカメラ画像、IoTによるセンシング情報などを集約し、市民生活に密着した情報をダッシュボード上で見ることが可能です。
また積雪深センサを用いて、リアルタイムで積雪監視ができ、災害時の迅速な情報共有や除雪作業の効率化を実現しています。
*詳細は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事 インテック、石川県羽咋市のスマートシティデータ連携基盤を構築し、行政の効率化を支援 ~積雪監視や防災など、市民生活に密着したデータ集約と可視化を実現~
事例6【福祉】東京都狛江市「ココシルこまえバリアフリーナビ」
狛江市では高齢者や障がい者、ベビーカー利用者のために「ココシルこまえ バリアフリーナビ」を開発しました。
ココシルこまえ バリアフリーナビは、狛江市内を循環するコミュニティバス「こまバス 新しいウィンドウで開く」のバス停から医療機関等の施設までの移動を支援するものです。利用者は階段やエレベーターの有無、バリアフリートイレやベビールーム、障がい者用駐車区画、AED等の設置場所を加味した最適なバリアフリールートを選択できます。
さらに国土交通省が提供する歩行空間ネットワークデータと、狛江市が提供する公共施設等のオープンデータを活用して、スマートフォンアプリを通じてナビゲーションも可能です。
ココシルこまえ バリアフリーナビにより、市内の移動がより安全で快適になり、高齢者や障がい者の生活の質が向上します。
*参考:「ココシルこまえ バリアフリーナビ」(デジタル庁) を加工して作成
*データ活用について、こちらの記事もご覧ください。
関連記事 スマートシティにおけるデータ活用|都市機能の向上と新しい価値の創出
自治体のオープンデータ活用事例一覧
カテゴリー | 事例 | 自治体 | 自治体 オープンデータセット | 左記以外のデータ活用 |
---|---|---|---|---|
防災 |
福島県会津若松市 |
●消防水利位置情報 |
| |
防災 |
岡山県倉敷市 |
●避難場所情報 |
●国交省国土地理院自然災害伝承碑情報 |
|
防災/観光 |
京都府・京都市 |
●観光スポット |
|
|
保育 |
かなざわ育なび.net |
神奈川県横浜市 |
●医療機関一 |
●区内保育室一覧 |
行政 |
石川県羽咋市 |
●AED設置箇所 |
●河川監視カメラ・観光用ライブカメラのリアルタイム画像 |
|
福祉 |
東京都狛江市 |
●AED等の位置情報 |
●国土交通省:歩行空間ネットワークデータ |
*参考:「20200928_resources_od100_local_all_00.pdf」(デジタル庁)
民間事業者によるオープンデータ活用事例3選
ここからはオープンデータを活用して革新的なビジネスを展開し、社会に貢献している民間事業者の事例を3選紹介します。
事例1:アクトインディ株式会社「いこーよ」
アクトインディ株式会社が運営する「いこーよ」は、2020年8月から瀬戸市の親子向け施設情報のオープンデータを活用し始めました。
子育て層の約8割が利用し、全国81,000件以上の施設情報や口コミ数37,000件以上を掲載しています。
瀬戸市との連携によって、地域の子育て支援や活性化をサポートすることが目的です。
そのためアクトインディは、自治体のオープンデータをいこーよに取り込み、利用・掲載しています。
これにより多くのユーザーが瀬戸市のオープンデータを閲覧し、施設やイベントの利用につながっています。
事例2:アールシーソリューション株式会社「ゆれくるコール」
アールシーソリューション株式会社の「ゆれくるコール」は、地震発生時の緊急地震速報をスマートフォンに通知するアプリです。
ゆれくるコールは、気象庁が提供する緊急地震速報を元に開発されています。
推定震度や予想到達時間、震源地などの情報をプッシュ通知で提供します。
またアプリには震度マップやゆれ体感や安否確認機能などがあり、利用者が体感した震度など情報を共有することも可能です。
これにより自治体は地震発生時の状況をより詳細に把握し、対応策を立てやすくなりました。
ゆれくるコールは地震対策の一環として自治体にとって価値の高いサービスとなり、地域住民の安全確保と被害軽減に貢献しています。
事例3:さっぽろ産業振興財団「札幌市ICT活用プラットフォーム」
一般財団法人さっぽろ産業振興財団は、札幌市の課題に対する実証・検証結果を反映した「札幌市ICT活用プラットフォーム」を構築しました。
札幌市ICT活用プラットフォームは、携帯基地局データや人流データ、道路状況データ、生体データなどを活用して以下の分野でサービス提供やオープンデータ化を進めています。
●観光:人流と購買情報のクロス分析を通じて、国籍別/商品別プロモーションを展開
●交通:道路の積雪情報や滑りやすい路面情報収集して渋滞予防や安全対策を実施
●健康:歩数や生体データを分析して、健康増進のための情報を提供
上記の取り組みで、札幌市の経済の活性化や利便性の向上を目指しています。
*参考:「札幌市データ活用プラットフォーム構築事業」(国土交通省)
を加工して作成
まとめ:オープンデータを活用して地域社会を向上させよう
自治体が公開するオープンデータを活用することで、スマートシティの構築やサービスの改善、市民の生活の質の向上など、多方面にわたる利点が期待されています。
オープンデータは情報が透明化され、市民参加と協働が促進されることで、より効率的で効果的な地域運営が可能です。
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公開日 2024年03月15日
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