クラウド環境でのセキュリティの必要性と8つのセキュリティ対策

クラウドサービスが利便性の高さにより急速に普及しています。その一方で、情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティ上の問題が頻繁に報じられており、クラウド環境のセキュリティに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、クラウド環境におけるリスクとセキュリティ対策について、経済産業省が公表している「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」をもとに解説します。

クラウドセキュリティとは

クラウドセキュリティとは、クラウド環境内でのデータ、アプリケーション、インフラストラクチャを保護するための方策、技術、手法、ポリシーの総称です。暗号化やバックアップなどのデータの保護、ユーザー認証や権限付与を行うアクセス管理、不正アクセスや攻撃を防ぐネットワークセキュリティなどの要素があります。

最近では、自社内にサーバーを設置するオンプレミス型ではなく、クラウドサービスを利用する企業も多く、効果的なクラウドセキュリティ対策が不可欠となっています。

クラウド環境でのセキュリティの必要性

多くの企業や組織、ユーザーが利用するパブリッククラウドサービスでは、サービス提供者が管理するサーバーを利用することになります。
システムの保守、運用、管理は主にサービス提供者にゆだねられることから、利用者の手間が軽減される一方で、セキュリティ面ではサービス提供者への依存度が高くなります。そのため、サービス提供者がクラウドセキュリティ対策を適切に実施しているかどうかを確認することが重要です。

また、利用者側にもリスクがあります。
設定や操作ミスによる情報の漏えいや不正アクセスの可能性が常に存在するからです。そのため、利用者側でセキュリティポリシーを策定し、従業員や関係者への教育を行うといった対策を講じることが急務となっています。クラウドサービスの安全な利用のためには、サービス提供者と利用者双方でのセキュリティ対策が不可欠です。

クラウドセキュリティとオンプレミスでのセキュリティの違い

オンプレミス型では、自社内にサーバーを設置して社内ネットワークを構成することにより、高いカスタマイズ性と堅牢なシステム構築を実現することが可能です。しかし、費用や構築に工数がかかります。
オンプレミス型の環境を、セキュリティ面で適切に維持管理していくためには、専門知識を持つ人員を確保し、絶えず進化するセキュリティの脅威に対応するためのリソースを準備しなければいけません。

クラウドセキュリティでは、前述のとおりインフラストラクチャの保護、ネットワークのセキュリティ、物理的なセキュリティなど、セキュリティの一部がサービス提供者によって管理されます。また、SaaSなどのクラウド環境ではインターネット経由で利用する形態のため、アクセス管理と認証の重要度が増します。

このように、クラウドとオンプレミスでは、サービス提供範囲の違いに起因し、セキュリティのアプローチに違いが生じています。

クラウドセキュリティ活用ガイドラインから考える8つのリスクと対策

経済産業省が公表している「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」をもとに、クラウドセキュリティの8つのリスクと対策について見ていきましょう。

1.インフラのリスクと対策のポイント

クラウドサービスを利用する際には、データ流出、システムダウン、なりすましといったリスクが存在します。
これに加えて、内部の操作ミスによるデータ喪失の可能性も考慮しなければいけません。

特にSaaSやPaaSのようなサービスでは、ウェブサーバーやアプリケーションサーバーにおける暗号通信の標準化といった、特定のセキュリティ対策が求められます。

なりすまし対策としては、証明書に基づく認証方法が効果的です。また、オペレーションの精度を高めることも重要です。物理的なセキュリティ対策として、デバイスが置かれている建物や執務区域へのアクセス制限、機器の使用やアクセス認可の管理なども効果的な方法として挙げられます。

これらの対策は、クラウドサービスの利用におけるセキュリティリスクを軽減し、より安全な環境を構築するために重要です。

2.仮想化基盤のリスクと対策のポイント

多くのIaaSで一般的な仮想化基盤を利用した仮想マシンサービスを利用する際には、物理的な環境にはない特有のリスクへの対策が必要です。
例えば、システムログが適切に取得できない可能性があるため、障害発生時に重要な情報を欠くリスクがあります。このような状況では、データの喪失や、サービスへのアクセス不能といった問題に至る可能性があります。

こうしたリスクに対処するためには、事前にデータのバックアップを取っておくことが重要です。
システムの迅速な復旧を目指すために、テンプレートを事前に準備しておくことも有効です。
また、クラウド環境が使用できない場合に備えて、バックアップ環境を整備しておくことで、障害発生時の影響を最小限に抑えることができます。

このような対策は、仮想化基盤におけるリスクに対応し、サービスの継続性を保つために非常に重要です。

3.サービス基盤のリスクと対策のポイント

サービス基盤に関連するリスクには、認証サービスや決済サービスへの攻撃が考えられます。
同じ端末やネットワークを共有することにより、ほかの利用者が攻撃を受けた場合に影響を受ける可能性があります。

このようなリスクに対処するためには、まずアクセス管理を適切に行い、不正アクセスを防ぐことが重要です。

また、サービスの所在地を限定することで、悪影響がほかのユーザーに波及するリスクを抑えることが可能です。しかし、サービスの所在地を限定すると、クラウドサービスの利便性が制限される場合があります。セキュリティと有用性を両立させるためには、適切なサービスの選定が求められます。安全性を高めつつ、サービスの効果を最大限に引き出すためのバランスが重要です。

4.統合管理環境のリスクおよび対策のポイント

クラウドサービスの変更が実施できるコントロールパネルが攻撃されることでサービス全体が使用不能になるリスクがあります。
このため、データの改ざんやサービスの停止に対する準備が必要です。また、アクセス管理を適切に行うことも重要です。
各ユーザーに対して適切なアクセス権を設定し、なりすましを含むさまざまな脅威に対して厳格な対策を講じる必要があります。

5.データ管理のリスクおよび対策のポイント

インターネット経由で利用できるSaaSやストレージサービスのデータ管理においては、リスクに対する意識が徹底されず、組織内の利用者が自由にデータをクラウド上に保存、閲覧、ダウンロードすることが挙げられます。これにより、クラウド上の膨大なデータの所在が不明瞭になることがあります。物理的ガバナンスの確保が難しいため、制御されたデータ管理方針を整備し、運用する体制が必要です。

また、ファイルごとに適切なアクセス権を設定することも重要です。これにより、データの意図せぬ改変や損失、破損を防ぎます。ダウンロードやアップロード時のウイルス感染を防ぐためには、ウイルスチェックを徹底します。

これらの措置により、データ管理のリスクを効果的に低減し、クラウド環境におけるデータの安全性を高めることが可能です。

6.データ分類のリスクおよび対策のポイント

クラウドに限らずオンプレミス環境にも該当しますが、適切なデータ分類が行われていない場合、アクセス権の適切な設定や運用が困難になり、結果として不正アクセスや情報漏えいのリスクが発生します。

このリスクを避けるためには、まず情報資産の分類方針を明確にすることが重要です。
明確な分類方針に基づき、データの作成、利用、保存、共有、廃棄などのプロセスに関するルールを構築し、従業員にしっかりと周知します。ルールの構築だけでなく、その運用を徹底することがデータ管理の安全性を高めるうえで大切です。

適切なデータ分類と管理は、組織全体のセキュリティ強化に寄与します。

7.ID管理のリスクおよび対策のポイント

ID管理においては、人の異動・退職などの情報がタイムリーにシステムに反映されず、本来アクセス権の無い人が情報にアクセスできる状況が発生するリスク、ネットワークからのサイバー攻撃やIDフェデレーションのトラブルが主なリスクとして考えられます。

対策として、人事システムとの自動連携が実現できるIDライフサイクルマネジメントシステムの導入、サイバー攻撃に対抗するためには、二要素認証や二段階認証の設定が効果的です。これにより、第三者による容易な侵入を防ぐことが可能になります。

IDフェデレーションに関しては、サービスごとにIDレベルを適切に管理することが重要です。
これにより、異なるサービス間でのIDの連携に関するトラブルを避けることができます。

8.人員のリスクおよび対策のポイント

社内の人員によるリスクは、セキュリティリテラシーの不足やサービス内容への理解不足などが原因で、プライバシーや重要情報の流出を引き起こす可能性があります。

これに対処するためには、まずセキュリティやデータ管理に関するルールを明文化し、徹底的に周知することが重要です。トラブルの予防対策やトラブル発生時の対応方法を明確にすることで、ヒューマンエラーのリスクを最小化できます。
社員向けのセキュリティ研修やクラウド利用に関する教育、監視環境の強化なども効果的な対策として考えられます。

これらの対策は、組織内のセキュリティ意識を高め、情報漏えいやそのほかのセキュリティ関連の問題を防ぐために重要です。

クラウドセキュリティは外部委託もおすすめ

企業がクラウドサービスを利用するなかで、情報漏えいやサイバー攻撃といったリスクが高まっています。
クラウド環境特有のセキュリティ対策が必要とされるこの状況に対応するため、経済産業省は「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」を公表し、セキュリティ意識の向上を呼びかけています。サービス基盤や人員管理など、さまざまな側面からセキュリティ対策を講じることが重要です。

専門の外部組織にセキュリティ管理をゆだねることもひとつの有効な手段です。専門知識を持つ外部組織によるセキュリティ管理は、内部リソースの負担を軽減し、より高度なセキュリティ対策を実現します。

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公開日 2024年03月07日

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