製造業DXでビジネスモデルを転換するステップを徹底解説!
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる技術革新ではなく、ビジネスモデルそのものの転換を意味します。
製造業においても、DXの推進は重要な経営課題のひとつです。しかし、その具体的な内容や必要性、実現に向けてのポイントは、多くの製造業従事者にとって未知の領域となっています。
今回の記事では、製造業におけるDXとは何かを紹介したうえで、その背景や進め方を解説します。
DX推進の課題と解決方法にも焦点を当て、自社でのDX実現に向けた実践的なポイントも紹介します。
DXの波に乗り遅れたくない製造業の情報システム部署の方々は、ぜひ最後までご覧ください。
製造業DXとは
製造業におけるDXは、生産・流通・販売といったプロセスにデジタル技術を導入することで、従来のアナログ手法では達成できなかった効率化や生産性の向上を図ります。最終的には、新たな価値の提供と変革をもたらすことを目指します。
製造業のDXは、まずデータの蓄積から始まります。製造業の現場では、変革に必要なデータを収集する機能が整っていないケースが少なくありません。
まずは、デジタル化を通じて、データの効率的な収集・蓄積を実行し、集まったデータをもとに、さらにデジタル技術を活用して製造業の全プロセスの情報を一元管理することで、現場へのスピーディなフィードバックが実現します。それにより高い生産性を維持しつつ、コストを抑制できるようになります。
現在、製造業DXが重視されている大きな理由は、デジタル移行がなかなか進んでおらず、アナログ手法が残ってしまっている製造業の現場でDXを実現することで、日本の製造業のさらなる発展が期待される点にあります。
製造業がGDPの20%を占める重要な産業でありながら、熟練工の技術や経験に依存する傾向が強いという点も、DX化が急務である理由です。グローバル経済において競争力を維持し、経済成長の速度に追いつくために、製造業DXは不可欠な要素です。
製造業DXのメリットとビジネスモデルへの影響
製造業DXのメリットと、ビジネスモデルへの主な影響は以下のとおりです。
業務自動化による生産性の向上
デジタル技術の導入によって、製造業の開発設計から製造プロセス、事務作業に至るまでの業務の自動化が可能になり、生産性が大幅に向上します。業務改善と人的コスト削減を同時に実現できるでしょう。
*AI画像解析を活用した製造業の生産性向上について詳しくは、こちらもご覧ください。
関連記事 【製造業×AI画像解析】2024年問題など、製造業の課題を乗り越えるために「人の動きの可視化」が重要ポイント
プロセスの可視化と効率化
デジタル技術の導入により、製造業の全プロセスが可視化され、設備や生産状況、受注から納品までのデータ管理が容易になります。
異変の早期発見や迅速な問題解決が可能となるため、販売予測の精度向上や物流量、リソースの最適化を実現できます。
属人化の解消と標準化
業務をデジタル化することで業務プロセスが標準化されるため、業務の属人化の解消が期待できます。
製造業に限らず、さまざまな産業にいえることですが、属人化して特定の社員しか対応できない業務がしばしば発生しがちです。業務の属人化は、生産性向上の足かせ要因となります。その業務を担当する従業員の配置転換ができないため、組織の硬直化の原因にもなります。
DXを通じて業務を標準化し、属人化を解消すれば、生産性を高めつつリソースを付加価値の高い作業へ配分できるようになります。その結果、製品やサービスの品質向上も期待できます。
*こちらの記事では、データを活用した業務の標準化について紹介しています。
関連記事 データ利活用コラムVol3:画像データを用いて作業を標準化する方法とは【製造業×データ活用】
製造業DXの具体的な取り組み事例
インテックの製造DXの事例を紹介します。
株式会社広上製作所:センサでプレス機の動作データを採取し効率化と生産計画に活用
富山県高岡市に本社を構える株式会社広上製作所は、金属製品メーカーとしてさまざまな金属製品の加工・組み立てや塗装を手がけています。
同社では、手動で操作するプレス機がボトルネックとなり、労働生産性に課題を感じている状態でした。
そこで、単発プレス機の稼働状況を把握するため、インテックの「課題解決特化型IoTサービス 生産数予実状況見える化」を導入しました。
プレス機のストローク数をセンサで集計し、可視化した稼働状況のデータを傾向分析に活用しています。
今後は可視化されたデータをもとにプレス機の運用方法を改善し、生産性の向上を目指す予定です。
*こちらの事例の詳細は、導入事例をご覧ください。
導入事例 単発プレス機の稼働率を把握するため、センサでプレス機の動作データを採取し、稼働状況をグラフ表示
設備の停止時間を把握することで、効率化と生産計画に役立てる
株式会社エイチアンドエフ:IoTで得られたデータを活用してプレス機の安定稼働と品質維持に貢献
福井県あわら市にある株式会社エイチアンドエフは、総合プレス機械メーカーとしてグローバルに展開する企業です。
主に自動車車体用の大型プレスを製作しています。顧客がプレスを長きにわたり使い続けるためには適切なメンテナンスが欠かせません。
同社では、サービスマンが常駐して各顧客のプレスの保全をサポートしています。
この保全作業を効率化させるために、プレスには「IoT-Box」というプレスの稼働状況を診断する設備が併設されています。
インテックのIoTやAWSの知見を活用して、同設備のデータ集計・分析を効率化するためのシステムを開発しました。インテックのシステムとIoT-Boxが連携することにより、異常が生じた箇所の裏付けとなる根拠の数値が得られ、データに基づいて事前に予備品の購入を判断できるようになっています。
また、データで示すことによりアフターサービスの高度化を実現しています。
*こちらの事例の詳細は、導入事例をご覧ください。
導入事例 IoTで得られたデータを活用して職人の技能を伝承し、サービスマンの負荷を減らすことでプレス機の安定稼働と品質維持に貢献する
製造業DXにおける課題とその解決策
製造業DXの実現にあたっての主な課題と解決策は以下のとおりです。
現場の属人化
製造業では、業務を分業化して従業員の専門性を高める傾向にあり、作業プロセスが属人化しがちです。そのため、デジタル技術を活用した生産性向上が他業種に比べて進みにくく、企業全体でノウハウを共有・継承しにくい状況にあります。
デジタル技術により情報を「見える化」し、作業の効率化と技術・ノウハウの継承を容易にすることが大きな解決策です。
DXを推進できる人材の不足
データの重要性を理解し、デジタル技術を効果的に導入できる人材が不足しています。
この問題を解決するためには、製造業に精通したDX人材の採用や、従業員にDXに関する教育と訓練プログラムを提供する必要があります。
さらに、外部の専門家やコンサルタントを活用して、必要な専門知識とリソースを確保し、DXプロジェクトの成功を支援するとよいでしょう。
*DX人材について詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
IT投資が進んでいない
IT投資の観点は、主に「現在の経営資源の維持に焦点を置いて利益を追求する企業」と「環境に応じてビジネスモデルの変革に焦点をあてる企業」の2つに分けられます。
現在の経営資源の維持に焦点を置いて利益を追求する企業の場合、既存システムの保守が目的となってしまい、人材育成や業務効率化のためのIT投資が十分に行われていないことがあります。その結果、市場のニーズの変化に適切に対応できず、競争力が低下するケースが増加しています。
競争力を維持し、成長を実現するためには、ビジネスモデルの変革に焦点をあてることが重要です。将来のニーズに適合する新しい戦略を探求し、それに基づいてIT投資を計画するとよいでしょう。これにより、変化する市場環境に適応し、持続的な成功を実現するための土台を築くことができます。
DX推進のポイント
それぞれの段階で明確な目標を定め、進捗管理を行いながら、全社的なDX推進を実現することが重要です。
1.目的の明確化
DXの目的を明確にします。
目的には「コスト削減」「業務の効率化」「社内情報共有の促進」などが挙げられるでしょう。具体的な目的を設定することで、社員が一丸となって取り組めるようになります。
2.組織体制の整備
DX化のための組織を整備します。
社内で求心力を持つメンバーやDXに関する専門知識を持つメンバーを集め、適切なチームを構成することが大切です。社内では、文系・理系の枠組みにとらわれず、数理やデータサイエンス・AIなどの、DXに必要な技術や知識を持つ人材の育成を進めます。必要に応じて、外部からの人材の雇用も検討します。
3.DX化の現状把握
自社のDXに関する現状を把握します。
機械設備のデータ取得、システム間のデータ連携、部門間の情報共有、作業の標準化などのチェックポイントを設定し、課題と対策を検討します。
4.要件定義の実施
課題解決に必要なIT技術について要件定義を実施します。
この段階で外部のコンサルティングサービスやITベンダーを活用し、自社の事情をよく理解しながら主体的に取り組みましょう。
5.ITサービスの導入
要件定義が完了したら、サービスの導入プロジェクトを進めます。
プロジェクトリーダー、システム担当者、ベンダーと密接にコミュニケーションをとり、スモールスタートで始めます。小さな成功例を積み重ねて、大きな業務へと適用していくことが重要です。
着実にステップを踏んでDX実現を
今回の記事では、製造業DXについて解説しました。製造業DXは、生産性の向上、効率化などの多くのメリットをもたらします。
DXの推進には、現場の属人化、DX推進人材の不足、IT投資が進まないことなどの課題がありますが、計画的で段階的なアプローチを踏み、着実に実施しましょう。製造業DXは、今後の製造業界の競争力と持続可能性を大きく左右するため、製造業の企業にとって必須の課題といえます。
インテックの製造DXではお客様の業務状況の整理から課題解決までを伴走支援いたします。自社に充分なノウハウがなく、DX推進に課題を感じている企業のご担当者は、ぜひ一度ご相談ください。
公開日 2024年02月19日
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