【EDIシステム利用企業向け】ISO20022の特徴や移行時の留意点を解説!
国際銀行間通信協会(SWIFT)は、2025年11月までに現行の外国送金ファイルフォーマット(MTフォーマット)を国際標準規格「ISO20022」に移行すると発表しました。これにより、外国送金業務を利用する企業は新たなフォーマットへの対応が必須となります。
本記事では、ISO20022の概要や企業が取るべき対策、EDIシステムの移行における課題などを詳しく解説します。2025年の期限に向けて、外国送金業務の円滑な移行を実現するための留意点をお届けします。
ISO20022とは
ISO20022は、金融業界における通信メッセージの国際標準規格です。この規格は、国際標準化機構(ISO)によって策定されました。
ISO20022の最大の特徴は、金融取引の全プロセスを通じて一貫したデータフォーマットを使用できる点です。外国送金をする企業から銀行への送金指示に始まり、送金銀行・中継銀行・受取銀行間の情報受け渡し、そして銀行から受取人への情報伝達に至るまで、全ての段階で共通のフォーマットが適用されます。
さらに、ISO20022は従来の規格と比較して、より豊富な情報をコンピューターが処理しやすい形式で送受信できるように設計されている点も特徴です。
現在、ISO20022は国際銀行間通信協会(SWIFT)や世界各国の国内決済システムで採用されており、グローバル金融取引の標準として普及しています。
ISO20022が誕生した背景
ISO20022は、金融業界全体で使用できる統一的な通信メッセージ規格として2004年に制定されました。その誕生背景には、金融取引の国際化と技術革新による通信環境の変化があります。
金融業界では長年、複数の通信規格が並立していました。そのような状況は業務プロセスの複雑化を招き、情報交換の効率低下を引き起こしていたのです。ISO20022は、こうした課題を解決するために生まれました。
ISO20022の開発は当初、証券分野の既存規格ISO15022の後継版として始まりました。しかし、開発過程で上記のような金融業界全体の課題が明らかになり、その役割は大きく拡大します。その結果、銀行分野も含めた幅広い金融業務に適用可能な統合的な枠組みへと発展したのです。
外国送金を行う企業は、ISO20022への移行が必須に
国際金融取引の世界に大きな変革が迫っています。国際銀行間通信協会(SWIFT)が、2025年11月を期限として、長年使用されてきた外国送金のファイルフォーマット(MTフォーマット)から国際標準規格ISO20022への全面移行を発表しました。この決定は、グローバルな金融取引に携わるすべての企業に影響を及ぼす重要な変更です。
この変更により、外国送金業務を行う企業は重要な対応を迫られています。企業は指定された期日までに、使用するファイルフォーマットと伝送手順を新基準に合わせて変更する必要があります。
以下では、移行の理由と企業が取るべき対応について解説します。
移行の目的
ISO20022へ移行する主な目的は、金融取引プロセスの効率化と透明性の向上です。
従来のMTフォーマットは文字数制限があり、記録できる情報は限られています。また、送金企業から受取企業までの情報伝達に複数のフォーマットが使用されており、そのたびにフォーマットを変換する必要がありました。そのような状態は、業務プロセスの複雑化、マネーロンダリングのリスク増大を招いていました。
ISO20022フォーマットは、送金企業から受取企業まで一貫して使用できる統一規格です。これにより、情報の正確性が向上し、取引の透明性が高まります。
ISO20022への移行により、安全で効率的な国際金融取引の実現が期待されています。
企業が取るべき対応
ISO20022への移行に伴い、外国送金を行う企業は重要な対応を求められています。特にEDIシステムを通じたファームバンキングサービスを利用している企業は、データ作成・伝送方法の変更が必要です。
この移行は単なるシステム更新にとどまりません。業務プロセス全体の見直しが求められます。主な影響と対応として、以下が挙げられます。
- 入金業務:新フォーマットによる情報量増加への対応
- 送金業務:ISO20022のフォーマットへの段階的移行
- EDIシステム:データ作成・伝送方法の変更とシステム改修
- 業務フロー:新フォーマットに合わせた再設計
2025年11月までに、企業はこれらの課題に対応しなければなりません。円滑な移行を実現するには、業務システムの更新、業務プロセスの再設計、そして綿密な移行計画の策定が不可欠です。
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EDIプラットフォームサービスISO20022の特徴
ISO20022には、以下のような特徴があります。
- 柔軟性・拡張性が高い
- 標準化対象の範囲が広い
- 標準化された内容は、ISO20022のウェブサイト上で公開され、常に最新情報を入手することができる
順番に解説いたします。
柔軟性・拡張性が高い
ISO20022の特筆すべき特徴の一つは、その高い適応性と成長性です。これは主に、データ記述言語としてXML(Extensible Markup Language)を採用していることに起因します。
従来の金融通信で広く使用されていたMTフォーマットは、固定長の通信メッセージ規格でした。このフォーマットでは、予め定められた厳格な構造に従って情報を入力する必要があり、メッセージの構成に大きな制限がありました。
一方、ISO20022がXMLを採用したことで、これらの制約が大幅に緩和されました。XMLの特性により、メッセージの構造や内容に関する柔軟性が格段に向上しました。具体的には以下のような利点があります。
- 可変長フォーマット:必要に応じてデータフィールドのサイズを調整できます。
- 階層構造:複雑な情報を論理的に整理し、表現することが可能です。
- タグによる意味付け:データの種類や目的を明確に示すことができます。
これらの特徴により、ISO20022は現在の要件を満たすだけでなく、将来的な業務の変化や新たな規制要件にも柔軟に対応できるよう設計されています。
標準化対象の範囲が広い
ISO20022は、単にメッセージの形式を決めるだけでなく、業務プロセスまで体系的に標準化している点が特徴です。
従来の標準規格でも、業務の流れやメッセージのデータ項目に関する条件は規格書に記載されています。しかし、それらは文章形式での記載に留まっていました。
ISO20022では、業務の流れやメッセージの条件を「ビジネスモデル」と「メッセージモデル」として定式化しています。さらに、これらのモデルから、「フォーマット」を自動生成する仕組みも可能となりました。
標準化された内容は、ISO20022のウェブサイト上で公開され、常に最新情報を入手することができる
ISO20022の標準化された内容は、「レポジトリ」と呼ばれるデータベースに格納されます。このレポジトリには以下の要素が含まれています。
- ビジネスモデル:金融業務の概念的な構造や流れを表現したもの
- メッセージモデル:実際の通信で使用されるデータ構造の定義
- フォーマット:具体的なメッセージの形式や構文規則
これらの情報は、関係者間で共有・更新が可能な形で管理されています。ISO20022の特筆すべき点は、このレポジトリの内容がウェブサイトを通じて公開されていることです。誰でも自由にアクセスでき、常に最新の標準化情報を入手できるようになっています。この開放性により、金融業界全体での情報の透明性が高まり、標準化プロセスの効率化とイノベーションの促進につながっています。
ISO20022に準拠したEDIシステムへ移行する際の留意点
ISO20022準拠のEDIシステムへの移行は、企業間取引の効率化と標準化を促進する重要なステップです。しかし、この移行プロセスには慎重な計画と実行が求められます。
移行にあたっては、特に以下の点に注意が必要です。
- 新旧システム間でのフォーマットの違いに注意する
このような課題に適切に対応することで、円滑なISO20022への移行が可能になります。十分な準備とテストを行い、データの整合性を確保することで、新システムへの移行を成功させることができるでしょう。
新旧システム間でのフォーマットの違いに注意する
ISO20022と従来型フォーマットの間には情報量の差があります。例えば、ISO20022では送金受取人向けのインボイス関連情報などが含まれることがありますが、従来型フォーマットではこれらの情報を全て格納できない可能性があります。
このような状況に対応するため、一部のシステムでは従来フォーマットとの互換性維持が必要です。そのため、データマッピングや変換プロセスの慎重な管理が求められる場合があります。
ISO20022への移行はお早めに
この記事では、ISO20022への移行に関する重要な情報と留意点について解説しました。外国送金業務を実施する企業は、2025年11月までにファイルのフォーマットや伝送手順を変更しなければなりません。特にEDIシステムのファームバンキングを利用している企業は、早急な対応が求められます。
ISO20022への移行には、新旧システム間の互換性確保など、技術的な課題への対応が不可欠です。また、2025年11月の期限に向けて、計画的かつ効率的な移行プロセスの管理も求められます。
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具体的には、以下のような機能・サービスを提供しています
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- データフォーマット変換:新旧フォーマット間の変換を自動化
- 運用管理機能:データ交換の状況をリアルタイムで確認可能
- コンサルティング/アセスメントサービス:ISO20022への移行計画策定支援
- セキュリティ対策:暗号化やPCI DSS準拠など、高度なセキュリティ機能
- BCP対策:並列・分散・遠隔での稼働により、災害時の事業継続性を確保
これらの機能により、ISO20022への移行に伴う技術的課題や運用負荷を軽減し、スムーズな移行をサポートします。また、移行後も安定したEDI運用を実現します。
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EDIプラットフォームサービス公開日 2024年11月27日
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