JCA手順とは?流通BMSへの移行が迫られる流通業界のデータ送受信仕様
小売業を中心とする流通業界において、JCA手順が定められたのは40年以上前のことです。アナログなやりとりが中心だった受発注データを、オンライン上でやりとりできるように仕様を標準化したJCA手順は非常に画期的でした。しかし、インターネット回線の発展に伴うデータ送受信方法の変化やEDI 2024年問題により、流通BMSへの移行が迫られています。
本記事では、JCA手順の概要やメリット・デメリット、JCA手順から流通BMSへの移行について詳しく解説します。
JCA手順とは
JCA手順とは、流通業界向けのデータ交換手順(EDI= Electronic Data Interchange)のことで、受発注データをやりとりするために作られたプロトコルのことを指します。1982年に日本チェーンストア協会と通商産業省(当時)が制定したもので、データの送受信の仕様を定めています。例えば、チェーンストアのような小売店の本部と問屋のような取引先との間で、伝票データをやりとりするときに用いられます。
JCA手順の仕組み
JCA手順は、コンピューター通信の基本的な手順である「BSC伝送制御手順(ベーシック手順)」のひとつで、伝票データの内容を表す「データ電文」と、制御用の「制御電文」が定義されています。制御電文の「開始要求電文」によって配信(データの送信)や集信(データの受信)が開始され、データの送受信が「データ電文」によって行われたあと、最後に制御電文の「終了要求電文」で通信を終了し、回線を切断するという流れです。
JCA手順では、伝票データのフォーマットとして「オンライン標準データ交換フォーマット」を制定しています。このフォーマットによって企業コード、商品コード、発注内容、仕入れや売上単価などのフィールドが定義されており、日付や送信元、サイズ、件数などデータの属性を格納する「ファイルヘッダレコード」、伝票番号や企業コード、発注日付、品目など伝票の内容を格納する「伝票ヘッダレコード」、発注番号や商品コードなど発注内容を格納する「発注明細ヘッダレコード」などに分けられます。
JCA手順のメリット・デメリット
JCA手順のメリット・デメリットを紹介します。
JCA手順のメリット
JCA手順には、インターネットがまだ一般的に普及していなかったころでも電話回線を使って通信できたことや、標準化された仕様によりデータのやりとりがスムーズになったことにも大きなメリットがありました。これにより、紙の伝票を郵送やFAXで送ったり、フロッピーディスクや磁気ディスクなどを使ったりするアナログなやりとりから解放されたのです。
JCA手順のデメリット
一方、JCA手順のデメリットとして、回線速度が遅いこと、専用のモデムが手に入りにくいこと、画像や漢字が送れないことの3つが挙げられます。
回線速度が遅い
JCA手順に使われるのは電話回線です。そのため、今日のようにインターネットが普及しブロードバンド回線が整備された環境においては、非常に速度が遅いと言わざるを得ません。電話回線の速度は2400bps/9600bpsなのに対し、ブロードバンド回線の速度は遅くても1Mbps、ポケットWi-Fiで30Mbps前後、ケーブルテレビ回線で80~100Mbps、光回線で180~200Mbps、速い回線では400Mbps以上出るものもあります。
1Mbpsは1,000,000bps(100万bps)のため、電話回線を使ったJCA手順の通信速度がいかに現在のインターネット回線の速度とかけ離れているかが分かります。そのため、インターネット回線を使って送受信した場合と比べて数十倍の時間がかかってしまい、発注のデータ送信に1~2時間もかかることもあるようです。
さらに、JCA手順では半二重通信という通信方式を採用しているため、一方が送信している間もう一方は受信のみになってしまい、同時に送信ができません。これも大きなデメリットであり、1~2時間のデータ受信の間ずっと待っている必要があります。
専用のモデムが手に入りにくい
半二重通信であることや電話回線を採用していることなどから、専用のモデムが必要です。しかし、JCA手順で使われる専用のモデムは生産している企業が少なくなっており、現在使っているモデムが壊れた場合、新しいモデムを入手するのが非常に困難になっています。新しいモデムが手に入らないと、その間受発注業務が行えなくなってしまう、または手作業となってしまうため、小売店にとっては致命的なダメージになりえます。
画像や漢字が送れない
JCA手順において通信可能なデータは英数とカナのテキストデータのみで、漢字や画像は送れません。また、データの長さにも制限があること、新たな項目を追加したくても定義されたもの以外はできないといったように拡張性が低いことなど、さまざまなデータをオンラインでやりとりするにあたり、使い勝手の悪さが目立ちます。
流通BMSへの移行
さまざまな問題点が目立つJCA手順ですが、電話回線を利用しているということから、現在「EDI 2024年問題」によって変更を余儀なくされています。これは、NTT東日本・西日本がINSネット(ディジタル通信モード)サービスを2024年1月で終了することにより、JCA手順の通信プロトコルを含むすべての「レガシーEDI」が従来通り使えなくなるという問題のことです。
*EDI 2024年問題について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
関連記事 INSネット終了への対策とは?EDI切り替え時の注意点を解説
NTT東日本・西日本では、INSネット(ディジタル通信モード)サービス終了に伴う影響を最小化するべく、切り替え後の補完策を用意しています。しかし、アナログデータをIPパケットに変換するプロセスが入ることで、処理時間はかえって増加してしまいます。また、この措置も2027年ごろまでと非常に限定的なため、いずれはインターネット回線を利用した通信手段に移行することが求められます。
ただ、「EDI 2024年問題」が起きる以前から、JCA手順における電話回線利用による処理の遅さは大きな課題となっていました。その解消のため、2000年以降にインターネットEDIが普及し始めると、一部ではWebEDIを利用する企業も増えていきました。ですが、WebEDIはインターネット回線を使うため通信速度が速く低コストである一方、標準化の概念がなかったため各社で仕様がバラバラでした。これは、接続先ごとに仕様の異なる個別のシステム開発が必要となり、流通業界全体の効率化とは逆行する動きとなっていました。
*WebEDIについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
そこで、これらの課題を解決し流通業界全体での効率化を推進するため、EDIを標準化しようと打ち出したのが「流通BMS」です。流通BMSとは「流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standards)」の略称で、経済産業省が中心となり、流通の業界団体や大手総合スーパーなどが協力して作られました。2000年代初頭にスーパーマーケット業界で導入が始まり、2022年12月には17,700社以上で導入されています。
流通BMSの特徴は、大きく分けて以下の2つです。
- インターネットの利用
- 通信手段にインターネット回線を使うことで、固定電話回線を使っていたJCA手順と比べて圧倒的に回線速度が向上しました。これにより、通信時間が大幅に削減されたほか、送受信を同時に行うこともできるようになりました。
- メッセージの標準化
- メッセージのデータ形式にXMLを採用し、流通業界全体のメッセージを統一しました。これにより、取引先ごとにシステム開発を行う必要がなくなり、業務プロセスも標準化されました。将来的に利用用途が拡大したとしても、簡単に項目を追加できるため拡張性に優れています。また、消費税の軽減税率にも対応しています。
*流通BMSについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
関連記事 流通BMSとは?JCA手順との違いや導入メリット、導入のポイントを解説
流通BMSに移行する際は専門性の高いEDIサービスベンダーへ依頼する
ここまで紹介してきたように、EDI 2024年問題などを受け、JCA手順から流通BMSに切り替える事業者は増加しています。しかし、流通BMSに移行する際はシステムの大掛かりな入れ替えが必要であり、専門的な知識が不可欠です。こうしたケースでは、専門性の高いEDIサービスベンダーに依頼するとスムーズな移行ができるため、おすすめです。
JCA手順から流通BMSへの移行はアウトソーシングで
JCA手順は登場した当時は画期的なシステムでしたが、固定電話回線を使っていることや専用のモデムがあまり作られなくなってきていること、画像や漢字が送れないことなどに加え、EDI 2024年問題により、現在早急に切り替えへの対応が迫られています。特に流通業界では、新たなEDIの標準化として流通BMSの導入が推奨されています。
インテックのEDIプラットフォームサービスではEDIの導入から運用までをアウトソーシングでき、手間を削減できます。INSネット(ディジタル通信モード)のサービス終了にも対応できる、可用性の高いEDIシステムの構築が可能です。
流通BMSへの切り替えを迷っている際には、ぜひお気軽にアウトソーシングをご相談ください。
*INTECが提供する「EDIプラットフォームサービス」の詳細はこちらのページをご覧ください
EDIプラットフォームサービス公開日 2023年03月20日
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