APIでデータをつなぐサプライチェーン革新
―青果物物流の未来を拓くインテックのDXソリューション

～現場の理解と協力のもと進める新たな仕組みづくり～

青果物物流は私たちの食卓を支える重要なインフラです。

しかし、トラックドライバーの時間外労働の上限規制、慢性的な人手不足、非効率な業務プロセスなどが重なり、従来のやり方では維持が難しくなりつつあります。

このような状況を背景に、インテックではDX（デジタルトランスフォーメーション）による青果物物流の課題解決に取り組んでいます。

今回は、その取り組み状況とDXによる解決策、今後の展望について紹介いたします。

*物流課題を解決するAPI連携について、以下のお役立ち資料とサービス紹介資料もあわせてご覧ください。

物流2024年問題とは？

物流業界では「2024年問題」と呼ばれる課題が深刻化しています。

これは、働き方改革関連法により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限される問題です。同時に拘束時間（労働時間＋休憩時間）の規制も強化され、輸送能力の低下が懸念されています。

国土交通省によれば、特に具体的な対策を講じない場合、2024年度には国内の輸送能力が約14%（4億トン相当）不足し、その後も対応が行われなかった場合2030年度には約34%（9億トン相当）不足する可能性が指摘されています。

出典：国土交通省「物流の2024年問題について」資料1

青果物物流では荷待ち時間や荷役作業による拘束時間が特に長く、輸送効率の低下やコストの上昇が課題です。そのため、人員増員や労働時間調整だけでなく、業務効率化、物流拠点整備、物流DXといった変革が求められています。

青果物物流の現状と課題

青果物物流は2024年問題をはじめ、多くの課題に直面しています。特に卸売市場への納品は深夜から早朝の勤務となるため、ドライバーの体力的負担が大きく、時間外労働規制の強化により従来の仕組みが維持できなくなる可能性が高まっています。

また、紙伝票を使用した手作業の多さが業務効率を下げるとともに、卸売市場では大量のトラックが集中することで渋滞や待ち時間が発生する悪循環が生じています。

青果物の鮮度維持のために「当日収穫・当日配送」が基本とされていますが、この慣行が物流効率を大きく悪化させています。さらに問題を複雑にしているのが、地域ごとの独自ルール（ローカルルール）の存在です。業務の標準化やデジタル化、システム導入を妨げる大きな要因となっており、青果物物流全体の最適化を困難にしています。

青果物物流改革に向けての取り組み

これら青果物物流の課題を解決するために、新たな物流システムの構築が求められています。ここで注目されているのが、「ベジロジナカジマメソッド」と呼ばれる新たな物流の仕組みです。

青果物物流の最大の課題（当日発送から翌日発送へ）を解決する
ベジロジナカジマメソッドとは

5本の柱をそれぞれ紹介します。

ベジロジ倉庫（高機能鮮度維持倉庫）

青果物の鮮度を48時間以上維持できる冷蔵設備を備え、生産者が収穫・出荷スケジュールを柔軟に調整できる環境を整えます。これにより、確実な適期収穫が可能となり、また、収穫作業時間の制約が緩和され、家族行事などに合わせた働き方も実現できます。

ベジロジトラック（高機能冷蔵トラック）

近年の酷暑下では既存の冷蔵車による品質維持が困難になってきています。ベジロジトラックでは断熱や遮熱の機能を強化し、翌日配送でも鮮度を損なわずに輸送できるようにします。翌日発送となれば、産地ごとの入場時間を管理できるようになり、卸売市場における渋滞問題も解消されます。

ベジロジシステム（情報システム）

紙伝票を電子化し、作業効率と作業スピードの向上を図ります。トラックの位置情報などのリアルタイムデータを一元管理することにより、トラックの到着予定時刻などの情報共有を関係者間でスムーズに行います。また、生産者による収穫・出荷から卸売市場に納品されるまでの、青果物トレーサビリティ情報の一貫管理を目指すシステムです。

ベジロジカレッジ（現場教育）

青果物物流事業者や従事者の意識、知識、技術の向上を図ります。

ベジロジプロデュース（経営支援）

青果物流改革に必要な経営計画や設備投資等のコンサルティングを行います。

このベジロジナカジマメソッドはすでに実証が進んでおり、ベジロジ倉庫、ベジロジトラック、ベジロジシステム、それぞれ大きな成果が出ています。このうち、インテックはベジロジシステムの実証に参加しています。

情報システム ベジロジシステムの一翼を担うインテック 実証実験に参加

ベジロジナカジマメソッドの柱のひとつであるベジロジシステムを支えるべく、インテックはベジロジシステムの実証実験に参加し、物流DXの可能性を検証しています。

「実証実験を通して、青果物物流の現場課題を肌で感じています。紙伝票の電子化をはじめとするデジタル化は、現場の業務を劇的に変える可能性を秘めています」（株式会社インテック・歳谷氏）。

ベジロジシステムの仕組みと成果

ベジロジシステムは、紙伝票を電子化してスマホ上で、必要な人がいつでもどこでも伝票を参照・確認できるようにしたものです。トラックドライバーと卸売市場の荷受担当が、スマホからそれぞれの専用画面を操作します。トラックドライバーのスマホ位置情報をもとにトラックの到着予定時刻情報を共有する仕組みや、QRコードを活用し、卸売市場の荷受担当は画面をタップするだけで荷受検品作業が完了する仕組みをつくりました。具体的には以下の機能を実装しました。

• 1.物流データの電子化: 運送会社・車番、産地、等級、数量などのデータをデジタル化
• 2. QRコードによる簡易受領: スマートフォンでのQRコード読み取りと簡単なタップ操作で荷受検品作業が完結
• 3. 到着時刻予測: トラックドライバーのスマホ位置情報による到着予定時刻の算出

実証実験では大変良い成果を得られました。

実証ルート（青果物集荷場～卸売市場）において従前の作業と実証時を比較すると、集荷場での積み込み作業時間は約130分から110分へ、卸売市場での納品作業時間は約40分から30分へと短縮し、全体で約30分（約18%）の時間削減に成功しました。

とくに卸売市場に評価いただけたのは作業効率の向上に加え、いつ何が届くのか予定情報を事前に確認できる点です。これらの情報が、卸売市場の荷受検品作業計画の最適化に貢献することを検証できました。

さらに、「複雑な等階級にも対応できるシステムに期待している」「このシステムを利用する業者が増えれば増えるほどメリットが増えていくので、皆が使えるように普及させてほしい」といった前向きな意見が多く寄せられています。

ベジロジシステムは2025年度中に実装化に向けた実証実験を進め、早期実用化を目指しています。今後は卸売市場の先の仲卸や生産者を含めてさらなる最適化が生まれることが期待されます。

現場のニーズに応えながら、インテックは青果物物流のデジタル変革を着実に推進しています。

ベジロジシステムを支えたインテックのAPIプラットフォームサービス

実証実験の成功を可能にした技術基盤こそが、インテックが提供する「APIプラットフォームサービス」です。このプラットフォームは、異なるシステム間の連携を可能にし、企業の壁を越えて青果物物流全体の効率化を実現する要となっています。

青果物物流の業務効率化を阻む大きな壁は、異なる業務システムの乱立と情報連携の難しさです。この課題を解決するのがAPI（アプリケーション・プログラミング・インターフェース）技術です。インテックのAPIプラットフォームサービスは、既存のEDIやEAIシステムも活用しながら、サプライチェーン全体をデータでつなぐ情報基盤を構築しています。

「私たちが目指しているのは、サプライチェーンの上流から下流までを一気通貫につなぐデータ連携基盤です。その実現に向けた第一歩が、今回のベジロジシステムの実証実験なのです」と歳谷氏は語ります。

今後の青果物物流改革に向けての展望

インテックのAPIプラットフォームサービスを活用することで、青果物物流のDX化は今後さらに加速していくと考えられます。
特に、次の4つの成果が期待されています。

• 1. 労働負担の軽減（業務の効率化により、長時間労働の抑制）
• 2. 属人化の解消（データに基づく作業で、誰でも同じ精度で業務が可能に）
• 3. トレーサビリティの向上（消費者に鮮度や輸送状況の可視化を提供）
• 4. サプライチェーン全体の効率化（データ連携で全体最適を実現）

「サプライチェーン全体がデータでつながることで、物流改革だけでなく、生産者の収益向上にもつながる可能性があります」と、歳谷氏は語っています。「将来的には、サプライチェーン全体が一気通貫でつながることによって、様々なDXが生まれるのではないかと考えています。例えば、生産者の減少がひとつの社会問題です。物価や輸送費の高騰により生産者への実入りが少なくなっていることが要因のひとつと言われていますが、DXによりサプライチェーン上で様々な効率化が進み、生産者の実入りを増やすことに貢献できるかもしれません」。

"つなぐ"ことで社会課題を解決 ― インテックが目指すデータ連携とは

青果物物流DXでの取り組みは、インテックが掲げる「産業OS」構想の一環です。「産業OS」とは、スマートシティ領域の 「都市OS」と同様に、産業界においてもシステム、企業、そして人を有機的に結びつけ、業界の壁を超えたデータ連携を推進することで新たな価値を創造するというインテックが提唱するコンセプトです。

「ベジロジシステムでの成果は、『産業OS』というコンセプトの実現可能性を示す重要な事例です」と歳谷氏は位置づけます。「『つなぐ』というシンプルな理念が、複雑な社会課題の解決につながることを実証できました」

「産業OS」コンセプトを実現するための中核技術である「APIプラットフォームサービス」は、従来のEDIやEAIなどのデータ連携手法とAPIを組み合わせることで、リアルタイムかつ柔軟な情報共有を実現します。例えば、物流企業と食品メーカーがリアルタイムにデータを共有することで、配送の最適化や在庫管理の効率化が可能になります。さらに、電子請求書や決済業務の効率化も進み、企業全体のDX推進を加速させます。

「産業OS」コンセプトを実現することによって、単なるシステム連携にとどまらず、業界の垣根を超えたデータ連携により新たなビジネスモデル創出し、これまで解決困難だった課題に対する革新的なアプローチが可能になります。例えば、青果物物流の効率化は地域経済の活性化や輸出拡大にも寄与し、日本の更なる農業発展に貢献するとともに、環境負荷低減など持続可能性の向上にもつながる可能性を秘めています。

インテックは「つなぐ」という理念のもと、多様な産業界での課題解決に挑戦し続けています。「産業OS」を通じた業界の枠を超えたイノベーションが、持続可能な社会の実現に向けた一歩となることが期待されています。

まとめ

ここまで、青果物物流の課題と解決策、そしてベジロジナカジマメソッドのご紹介とその中でのインテックの役割について整理しました。 「ベジロジナカジマメソッド」とインテックのAPIプラットフォームサービスを活用することで、物流の効率化・持続可能性向上が期待されています。

歳谷氏は「DXによる改革は、単に作業を効率化するだけでなく、業界全体の持続可能性を高める取り組みです。インテックは今後も『つなぐ』技術を通じて、社会課題の解決に貢献していきたいと考えています」と締めくくります。

今後もさらなるDXの進展が求められる中、インテックの挑戦は続きます。

公開日 2025年05月26日

資料ダウンロード

• APIプラットフォームサービス 紹介リーフレット

  インテックは、既存領域（EDI・EAI）とDX領域（API）のシナジーを創造し共創する世界感「産業OS」を提唱しています。 APIプラットフォームサービス及び産業OSのコンセプト資料になりますので、ぜひ、以下よりダウンロードしてください。

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• 誰も取り残さないデータ連携で実現する企業のDXと活用モデルの紹介

  昨今のDX（デジタルトランスフォーメーション）の流れを背景に、「複数領域が抱える社会課題に対して、領域間・企業間でデータ・サービスを連携して解決しようとする動き」や「顧客ニーズの多様化・製品ライフサイクルの短期化に伴い、他社のデータ・サービスを活用する動き」が強まっています。
  本書を通じて、その変化に対応する一助となる情報をご説明するとともに、DX時代における次世代の情報流通基盤の在り方について提案いたします。

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