HL7 FHIRによって広がる医療情報活用

医療情報活用に関しての課題

医療機関ではデジタル技術をもとにした医療情報活用を通じ、業務効率向上や医療サービスの質向上が求められていますが、医療情報活用が十分に進んでいないという課題があります。

医療情報活用を進めることで、院内での部門間連携や院外における地域連携をスムーズに行えるようになり、診療の質向上や医療安全、働き方改革などに貢献できるため、医療情報活用に関する課題の解消は大きな意味を持ちます。


複数の医療機関や異なるシステム間での医療情報の交換

院内だけでなく医療機関の間においても、医療情報の交換に関する課題があります。医療情報は、病院・医療機関や使用しているシステムによって異なる形式で管理・蓄積されていることが少なくありません。その場合、スムーズな情報交換が困難になる場合もあります。

その阻害要因

医療情報を活用した効率化・品質の向上が求められている中でDX化が進んでいない主な背景として、「標準化の遅れ」と「情報連携基盤の不在」が挙げられます。


医療DXの阻害要因 1標準化の遅れ

1つ目の要因は医療現場における医療情報の標準化の遅れです。

標準化への取り組みは進んでいるものの、十分ではありません。たとえば、ベンダーごとにデータ構造が異なっていたり、各医療機関が独自のハウスコードを採用していたりすることが標準化を進めるうえでの壁となっています。


医療DXの阻害要因 2情報連携基盤の普及の遅れ

2つ目の要因として、それぞれの情報を管理する基盤・プラットフォームが普及していなかったことが挙げられます

電子カルテに基本的な情報はまとまっているものの、部門システムにしか蓄積されていない情報もあり、一元管理ができている状態にはなっていません。また、各システムから医療情報を抽出する場合に、ベンターによっては多くの対応コストや時間がかかることもあります。

データを抽出できても、目的に合わせてデータ構造を変える必要があり、ここでも手間が発生します。医療DXの実現に向けては、情報を蓄積したうえで必要に応じてデータを変換し、目的に合わせて出力することが重要となります。

また、各システムを選定・開発する場合においても、単一目的の達成だけに焦点を合わせるのではなく、その後のデータ連携などを見据えなければ部分最適化に留まってしまい、十分な活用・運用ができないケースもあることに注意が必要です

FHIRを標準にすることで出来ること

上記のような医療情報活用の課題や医療DXの阻害要因を解消するものとして、「FHIR」と呼ばれる医療情報交換の標準規格があります。FHIRを標準にすることで、医療情報の相互活用や医療機関同士あるいは他の医療系システムとの連携が可能になります。

FHIRとは

FHIRとは「Fast healthcare Interoperability Resources」の略であり、一般的なWeb技術を用いて医療情報をやり取りできる医療情報交換の次世代フレームワークのことです。

また、HL7とは、医療情報のデータ連携を標準化するための国際規格です。HL7 FHIRを導入することで、医療データ交換の規格を揃えることができ、それにより医療データの相互連携が可能となります。

HL7 FHIRは、医療情報をテキストベースのデータ形式であるJSON/XMLで定義されています。JSON/XMLはWeb(HTTPプロトコル)で一般に用いられるデータ交換方式であり、形式変換しやすい点が特徴です。データ構造だけでなく、HTTPプロトコルのRESTを使うところまで定義されているため、I/Fを独自に開発しなくてもアクセスが可能で、簡単に情報を取得・共有できます。

医療情報の相互活用

HL7 FHIRは既存の医療情報をFHIRリソースにマッピングすることで、医療データを相互活用する際に効果を発揮します。

具体的には、複数の医療機関における患者情報の共通化や、診療状況の横断的管理、さらに電子カルテから臨床研究用システムへの連携のように、異なるシステム間で医療情報をやり取りする場合などに活用されます。また、データの同期については、目的に応じて、リアルタイムであってもバッチ処理であっても利用可能です。

医療機関同士の連携

日本では少子高齢化が今後ますます進行することから、医療に対する需要が供給を上回っていくことが予想されます。こうした需要と供給のギャップへ対応するためには、病院内の効率的運用に加えて、病院間の連携強化も求められます。

必要な患者に適切な医療を提供できるよう、地域全体でのケアを考え、各病院の機能を再編したり、必要に応じて病院を統合したり、それぞれの病院や診療所が連携したりすることが重要ですが、HL7 FHIRの活用により病院間での情報共有やデータの相互活用が容易になることで、こうした連携を、よりスムーズに行えるようになります。

他の医療系システムへの連携

HL7 FHIRを活用することで他のシステムとの連携も可能となります。連携可能なシステムの一例として、昨今はスマートデバイスの普及や医療情報のデータ増などに伴い、PHR(Personal Health Record)の活用が期待されています。PHRは、医療や健康、介護などに関する自身の情報を、病院ではなく患者自身でも管理できるシステムです。PHRを用いることで、自身の体調変化にすぐに気づけるようになり、診察時の参考にもできるなどのメリットがあります。

また、RWD(リアルワールドデータ)への連携も近年注目されています。RWDとは、健診データや電子カルテのデータ、ウェアラブルデバイスなどから得られたデータなどを含む実臨床で得られたデータの総称であり、大量のデータを得られることから臨床開発の高度化や診断の適正化などさまざまな効果が期待されています。

FHIRアプリケーションの普及

今後、FHIRに対応したアプリケーションが普及し、FHIR対応のアプリケーションを活用する機会が増えることで、電子カルテやアレルギー、検査結果などさまざまな既存の医療データをFHIR形式で出力できるようになります。また、FHIR対応アプリが増えることでコストの適正化が進むとともに、Webビューワやスマートフォンのアプリケーションなどの中から使いやすいビューワを選択可能になるといったように、選択肢が広がることも期待できます。

今後の展望

今後、10年幅で見ると、すべての病院システムのベンダーがFHIRのインターフェースを持つようになることが予想され、それにより医療機関がさまざまなメリットを享受できることが期待されます。

たとえば、医療機関での患者情報のやり取りや薬局との処方情報のやり取りがスムーズかつタイムリーになることや、紙情報のハンドリング・二重入力等を解消できること、院内システム/院内機器の接続コスト低下などが主なメリットです。また、FHIR対応アプリが増えることでデータやアクセス方法が標準化され、適正コスト化するとともに選択肢が広がることや、RWD活用がさらに進むことなども考えられます。

FHIRを支える基盤としての医療情報連携プラットフォーム

インテックが提供する「医療情報連携プラットフォーム」は、高度なデータ利活用を可能とする医療機関のDX推進プラットフォームであり、院内の医療情報の一元管理、リアルタイム活用、データ構造の変換を実現します。

今回ご紹介したFHIRにも標準対応し、採用している医療システムベンダーに関わらず目的に応じたデータ変換することができます。医療機関が主体となって医療情報の利活用を推進できる環境(基盤)を提供します。また、院内システムだけでなく、他医療機関等との接続も可能です。

【事例】病院情報システムのデータをFHIRに変換し、臨床研究用EDC(Electric Data Capture)と連携し臨床研究の効率化を実現

大阪公立大学医学部附属病院様では、病院情報システムの電子カルテと研究データを管理する臨床研究用EDCの間でデータ連携が行われておらず、研究に必要な臨床データを電子カルテからExcelに手入力で転記しなければならないため、多くの時間と手間がかかっていました。また、臨床データはDWHに格納されていましたが、ベンダー独自のデータ構造・データ表現で記述されており、データの再利用がしにくいことも課題でした。

そこでHL7 FHIRを活用して、臨床データを電子的に収集するための臨床研究用EDCと病院内の情報の連携を行いました。病院情報システムのデータを医療情報連携プラットフォーム上に蓄積することで、臨床研究用EDCに大きなカスタマイズを加えることなくデータ連携が可能になり、業務の効率化を実現しました。


*詳しくは、こちらの導入事例をご覧ください。

導入事例 電子カルテの医療データを臨床研究支援システム「REDCap」にリアルタイムで連携 臨床研究を効率化するとともに、研究の可能性も広げる

公開日 2023年09月19日

資料ダウンロード

  • 医療情報連携プラットフォーム『HL7 FHIR導入時の検討ポイント』

    [本書の内容] 全14ページ
    ○厚生労働省標準規格として採択されたHL7 FHIR記述仕様で実現する電子カルテ情報共有サービス
    ○医療情報交換の次世代標準フレームワーク「HL7 FHIR」
    ○FHIR化における取り組み時の留意点
    ○活用、導入による医療機関のメリット
    ○インテックの提供する「医療情報連携プラットフォーム」

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