スマートシティ官民連携プラットフォームとは?目的や内容を解説
日本は、高齢化や都市型災害などの社会課題に直面しています。
現在では社会課題の解決のため最先端技術と研究開発を駆使し、スマートシティを推進した新たな都市モデルを創造するSociety 5.0の実現に取り組んでいます。スマートシティへの取り組みを提言するだけでなく、異なるセクター間の協力を促進し、より効果的なスマートシティの実現を目指す「スマートシティ官民連携プラットフォーム」が設置されました。
本記事ではスマートシティにおけるスマートシティ官民連携プラットフォームの重要性を掘り下げて、課題にどのように対応し、新しい価値を創造していくのかを詳しく解説します。
スマートシティ官民連携プラットフォームとは
スマートシティ官民連携プラットフォーム は、スマートシティの取り組みを官民連携で加速するため、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省により設立されました。
現在は、企業や大学・研究機関、地方公共団体、関係府省などが参加しています。
主な目的は行政と民間が連携しながらそれぞれの強みを活かすことにより、最適な公共サービスを提供して、地域の価値や住民の満足度を最大化することです。
この取り組みは全国に広がっており、地方公共団体と民間企業が協力し合うことで、地域固有の課題に対応したスマートシティの構築が可能です。
例えば、企業は革新的な技術やソリューションを提供し、自治体は地域の実情に基づいた要望や情報を提供します。
官民連携によって、地域特有のニーズに合わせたスマートシティ実現に取り組んでいます。
官民連携の共通の基本方針
スマートシティ官民連携プラットフォームの共通の基本方針は、以下のように定められています。
官民連携の基本方針は、行政と民間企業が協力して社会問題に取り組み、効果的かつ効率的な公共サービスの提供を目指すため設定されました。
基本方針は連携の目的や姿勢、役割分担、サービス水準の確保、競争性・透明性・公平性の確保などを定めています。
スマートシティ官民連携プラットフォーム960団体の構成
スマートシティ官民連携プラットフォームは960団体から構成され、下記のメンバーが参加しています。
●事業実施団体:644団体
●関係府省:12団体
●オブザーバー会員:301団体
●経済団体等:3団体
※会員情報:令和6年1月24日時点
事業実施団体は技術開発やサービス提供に直接関与し、スマートシティの実現を推進します。
一方の関係府省は政策的な支援や規制の枠組みを提供し、オブザーバー会員は観察やフィードバックを通じてプロジェクトに貢献しています。
スマートシティにおける官民連携の必要性
スマートシティ官民連携プラットフォームは、日本が直面する都市課題の解決するために欠かせません。
日本では急速な高齢化や都市型災害への対応、技術革新の波に適応することが求められています。
スマートシティに取り組むためには、自治体・企業・教育機関などの協力が不可欠です。
スマートシティ官民連携プラットフォームを使うことにより、各団体の知見と資源を結集し、持続可能な都市開発を実現できます。
さらに住民の利便性を高めるサービスの提供や地元企業の成長促進、新たなビジネスチャンスの創出だけでなく、住民の参画を促進し、彼らのニーズに基づく都市開発を推進することで、より住みやすい社会が実現できます。
スマートシティの推進における官民連携の目的とは
官民連携の目的は、必要なデータの共有と持続可能なビジネスの展開です。
官民それぞれが持つスマートシティ構築における必要データの共有
スマートシティの推進において、官民それぞれが持つデータの共有は欠かせません。
地方自治体は行政業務から得られるデータを保有していますが、これだけでは質の高い住民サービスの提供はできません。
消費者の購買行動や企業間の商取引情報、社会インフラの維持・整備に関するデータなど民間企業が持つデータなどと組み合わせることで、より包括的かつ効果的なサービスの提供ができます。
官民が保有するデータを組み合わせることで、新たなビジネスチャンスの創出や地域経済の活性化が期待されるだけでなく、住民にはより効率的で利便性の高いサービスが提供されます。
データを活用した民間企業の「持続可能なビジネス」の展開
持続可能なビジネスは民間企業がサービスやインフラの提供者として、住民や企業などの受益者から対価を得て住民の生活の質を向上させる役割を果たすことを目指しています。
スマートシティ官民連携プラットフォームを通じて、民間企業が地域の課題に対して積極的に取り組むことで、より良いサービスの提供を実現する可能性が高まります。
このような取り組みによって、スマートシティに関わる企業間での競争が生まれ、これがより良いサービスの提供へとつながり、官民連携の目的を達成することにつながっています。
スマートシティ官民連携プラットフォームの活動内容
スマートシティ官民連携プラットフォームは、スマートシティの実現に向けた多様な活動を展開しています。
ここでは、スマートシティ官民連携プラットフォームの具体的な活動内容について解説します。
スマートシティ関連事業を実施する会員の支援
スマートシティ官民連携プラットフォームの活動の一つに、スマートシティ関連事業を実施する会員の支援があります。
各府省のスマートシティ関連事業を実施する会員に対して、資金面やノウハウ面を各府省が一体となって支援する活動を実施しています。
これにより、会員団体はそれぞれのプロジェクトにおいて、より効率的かつ効果的にスマートシティへ取り組むことができます。
共通する課題を抱える会員同士の解決策等を検討する分科会の開催
スマートシティ官民連携プラットフォームの活動の中核として、スマートシティ関連事業における共通課題に対処するための分科会の開催があります。
分科会では交通・モビリティや観光・地域活性化などのテーマに基づき、異なる分野の専門家が一堂に会して、課題解決のための戦略を共有・議論します。
分科会により会員間の知識共有が促進されることで、スマートシティの推進における実践的な解決策が見つかるでしょう。
企業・大学・地方公共団体との情報共有やマッチング支援
スマートシティ官民連携プラットフォームでは、スマートシティの実現に向けた実施体制を強化し、技術やサービスの横展開の促進を目指すために、企業・大学・地方公共団体間の情報共有とマッチング支援をしています。
マッチング支援を利用することで、モデル事業の横展開に資する異なる団体間と連携が可能です。
これにより、地方公共団体と民間企業などが新たなコンソーシアムを形成し、共通の課題に対する効果的な解決策を共有する機会が創出されます。
国内外へのスマートシティの取り組みへの普及や促進活動
スマートシティ官民連携プラットフォームでは各地におけるスマートシティの取り組みの普及やモデル事業で得られた知見などの横展開を図るため、国内外へのスマートシティの取り組みを普及し、促進する活動を実施しています。
メールマガジンの配信やホームページの更新、各種の会議での情報発信などの活動を通じて、有識者による基調講演やモデル事業の取り組みを紹介し、スマートシティの認知拡大を狙っています。
スマートシティ官民連携プラットフォームで紹介されているスマートシティへの取り組み例
スマートシティ官民連携プラットフォームでは、令和6年2月1日時点で全国284個のプロジェクトが紹介されています。
全国から厳選した4つのプロジェクトを取り上げ、それぞれの地域が直面している課題に対する独自のアプローチと成果を詳しく紹介します。
愛媛県松山市・東温市・今治市「ローカル5Gと汎用画像AI技術による先進的スマートシティ地域活性化事業」
愛媛県松山市・東温市・今治市では、ICTやIoTの活用遅れが人口減少や高齢化の一因となっており、以下の課題がありました。
●資源の有効活用による活性化
●中小企業の生産性向上
●観光拠点であるしまなみ海道の安全
●快適なサイクルツーリズムやインバウンド促進
●商業施設での混雑状況の可視化 など
そこで地域の産学官民によるスマートシティ推進組織を立ち上げ、株式会社愛媛CATVが主体となり、ローカル5Gや画像AIを含む先進ICT・IoT技術を用いたスマートシティプラットフォーム(FIWARE)を構築しました。
この事業により、地域のにぎわいの創出や生産性の向上、地域DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が期待されています。
*参考:「ローカル5Gと汎用画像AI技術による先進的スマートシティ地域活性化事業」(国土交通省)
を加工して作成
富山県富山市「富山市スマートシティ推進基盤構築事業」
富山県富山市では、総務省のデータ利活用型スマートシティ推進事業の一環として、市全体の生活利便性と快適性の向上、安心・安全なまちづくりを目指しています。
例えば、以下のような取り組みをしています。
●富山市の居住区域の98%にIoT化を導入
●LPWAとクラウドIoTプラットフォームを活用したオープンなスマートシティプラットフォームの構築
●市全域にわたるIoT化の推進
●産学官連携による「富山市スマートシティ推進協議会」の立ち上げ
●子どもを見守る地域連携事業などのパイロットプロジェクトの実施 など
市民の生活向上や産業活性化、社会インフラの効率化に貢献し、持続可能なスマートシティへの道を切り開いています。
*参考:「富山市スマートシティ推進基盤構築事業」(国土交通省)
を加工して作成
秋田県仙北市「スマートシティ推進コンソーシアム」
仙北市ではスマートシティモデルを通じて、市民生活の質の向上、産業活性化、雇用拡大など地域内の生産性向上を目指しています。
具体的な取り組み分野は、以下の通りです。
●交通・モビリティ:
自動運転型モビリティサービスの実装により、地元交通事業者の人材確保や路線の非効率化、財政支出の課題に対処し、
観光二次アクセスの向上と滞在型観光地化を推進
●エネルギー:
水素エネルギーの活用により、ドローンの社会実装を促進し、地域内でのエネルギーの地産地消を目指す
●観光:
観光人流データの活用により、通過型観光地から滞在型観光地への転換を目指し、宿泊者数や観光消費額の向上を図る
●農業:
スマート農業による農業の高度化を推進し、農業従事者の作業負担を軽減し、効率化により生産性を向上させる
●ドローン:
物流事業者の人材確保と配送の効率化を行い、市民の生活に必要なサービスを維持発展させる
仙北市の取り組みは新しい産業の創出とともに、市民の生活の質向上に貢献しています。
*参考:「イノベーションの駆動力としてのスマートシティモデル」(国土交通省)
を加工して作成
熊本県人吉市「ライティング防災アラートシステム構築事業」
熊本県人吉市では、令和2年7月豪雨による球磨川水害の甚大な被害を受け、復興に向けての取り組みの一環として、新たな防災システムの構築に着手しました。人吉市ではライティング防災アラートの導入と人吉市防災ポータルサイトを設立しています。
ライティング防災アラートは橋梁の手すりと側面に設置された変色可能なLED照明を使用し、緊急時に照明の色彩変化で避難を促す視覚的アラートとして機能します。国や県から提供される水位データや気象データに基づいて、クラウドを通じて照明機器の変色を操作するシステムで、自動および手動操作が可能です。
また、平時にはLED照明を観光コンテンツとして活用し、観光地域復興のモデルケース創造を目指しています。
人吉市防災ポータルサイトは、これまでWeb上にバラバラに公開されていた河川情報や気象情報、避難所情報などの防災・災害情報をまとめたサイトです。このような取り組みを通じて、人吉市は災害への迅速な対応と情報伝達、観光振興にも貢献するまちづくりが進んでいます。
*参考:「ライティング防災アラートシステム」(国土交通省)
を加工して作成
まとめ:スマートシティ官民連携プラットフォームを活用してスマートシティを推進する
スマートシティの推進には、自治体や民間企業、大学などさまざまな機関とのデータ共有や連携が欠かせません。
異なるセクター間の協力を促進し、より効果的なスマートシティの実現するために必要なのが「スマートシティ官民連携プラットフォーム」です。
令和5年12月現在では966団体が加盟し、日本のスマートシティ推進に向け取り組んでいます。
スマートシティ官民連携プラットフォームを活用してスマートシティに取り組みましょう。
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公開日 2024年03月15日
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