教育現場が変わる校務DXとは?
メリットと推進のコツを成功事例付きで解説

ICT教育を含め、教育現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しています。なかでも注目されているのが、教職員の業務効率化や働き方改革にもつながる「校務DX」です。

本記事では、校務DXの基本的な考え方から、注目される理由、具体的な取り組み方法、導入のポイントなどについて解説します。


ゼロトラストセキュリティで実現!安全な校務のクラウド化とは

校務DXとは

教育現場の業務には生徒の学習教育に関する業務と、学校の運営や管理、事務作業といった校務に関する業務があります。校務の効率化にICTを活用するのが、校務のデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

文部科学省が提唱する教育のICT化施策であるGIGAスクール構想によって、生徒が1人1台のIT端末を使用して教育を受けられるようになりました。並行して教職員の業務をデジタル化する校務DXも導入が進められています。

校務DXでは、学級運営や保護者との連絡、事務系の業務など、従来アナログで行ってきた業務をデジタル化するだけでなく、業務フロー自体の見直しや外部連携の促進、さらにはデータ連携による新たな学習指導・学校経営の高度化を目指します。
具体的には、クラウド環境を活用して、単なる業務のデジタル化から一歩進んだ業務プロセスの変革を行い、最終的にはデータを活用した教育活動の質的向上を実現することが校務DXの本質です。

例えば、教職員間の情報共有をリアルタイム化したり、学習記録と指導計画を連動させたりすることで、より効果的な個別最適化学習の実現が可能になります。このように校務DXは単なる業務効率化にとどまらず、教育の質の向上と学校運営の最適化を同時に実現する取り組みといえます。

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取り組みが加速している校務DXの現状

文部科学省は教職員の働き方改革を推進するため、校務のDX化を提言しています。これを受けて学校現場でも意識が変化し、校務DXへの取り組みが活発化しています。ここでは文部科学省が示す校務DX推進の具体的な視点や取り組みと、校務DXが望まれる背景について紹介します。

※参考 文部科学省|GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~ 文部科学省|働き方改革の実現・教育活動の高度化に向けた次世代校務DXウェビナー(YouTube)

教職員の働き方改革の推進

校務のDXは、働き方改革の促進につながる可能性があります。

教員の労働時間は長時間に及ぶことも多く、これまでも業務内容や労働時間の見直しについて考えられてきました。そこで、ICT技術により授業と校務の両面を効率化させ、労働時間の短縮を図ることが進められています。

文部科学省でも2023年には全国の自治体に学校DX戦略アドバイザー事務局の窓口を開設しました。

ペーパーレス化の推進

学校では連絡事項や会議資料、名簿など多くの書類を扱っていますが、ペーパーレス化を進め、事務作業の負担を大幅に減らすことが考えられています。

紙ベースの作業が残っている部分は、デジタルに移行していくことが重要ですが、紙を使っていた長年の習慣や、教員ごとのITスキルの差、受け手である保護者のデバイスの問題などがあり、推進が遅れているというケースもあるようです。

そこで、誰でもが使いやすいクラウドサービスを導入し、まずは校内業務でやり取りされる文書からペーパーレスを導入することが多くあります。

非常事態への対応力強化

感染症まん延時や大規模災害などの非常事態では、在宅での授業や校務への迅速な切り替えが求められます。校務DXを進めることで、これらの状況に柔軟かつスピーディに対応できる体制を構築できます。

特に、大規模災害におけるレジリエンスの観点から、校務支援システムのクラウド化が重要です。従来の自前サーバ(オンプレミス)では、地震や津波などにより学校施設や教育委員会庁舎が被災した場合、校務系データが喪失する危険性が高くなります。実際に、東日本大震災では被災地域の学校の40%がデータを損失したという報告があります。

クラウド化により、大規模災害時でも児童生徒の安否確認や健康状態の把握、学習支援などの業務を、避難所や仮庁舎からでも安全に実施できるようになります。こうした非常時への備えという点でも、校務DXへの意識が高まっています。

※参考
文部科学省|GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~

デジタル化で業務時間が大幅短縮した例も

文部科学省の「統合型校務支援システムの導入のための手引」によると、統合型校務支援システムを導入した札幌市では校務にかけていた時間が年間1人あたり103時間削減でき、茨城県つくば市では年間89.2時間の削減ができたと紹介されています。教員の業務負担軽減のため、デジタル化させていくことは効果的です。

※参考
文部科学省|統合型校務支援システム導入の手引き

クラウド化によるロケーションフリーな働き方の実現

ロケーションフリーとは、特定の場所に縛られず、インターネット環境があればどこからでも仕事ができる働き方です。現在の校務DXは単なるデジタル化にとどまらず、これらのシステムをクラウド化し、ロケーションフリーで校務処理をできるようにすることが重要視されています。クラウド化により、教職員は学校内に限らず、自宅や出張先からでも安全に校務システムにアクセスし、業務を遂行できるようになります。

文部科学省では2029年度までに「教職員の働き方改革にも資するロケーションフリーでの校務処理を行っている地方公共団体の割合」を100%にするという目標を掲げており、今後ますますクラウドベースの校務DXが推進されていくと予想されます。

システム統合によるデータ連携の実現

校務DXの推進で重要な観点の一つが、各種システムの統合とデータ連携です。従来は教務系システムと校務系システムが分断されており、データの二重入力や連携の非効率さが課題となっていました。
こうした課題解決のため、最新のセキュリティ対策を講じた上でのネットワーク統合が進められています。特に注目されているのが「ゼロトラストセキュリティ」の考え方です。従来の閉域網による運用から、アクセス制御による高度なセキュリティ対策へと移行することで、より柔軟で安全なシステム連携が可能となります。また、統合されたデータを可視化するダッシュボードの導入も進んでおり、児童生徒の出欠状況や成績、健康状態などの情報を一元的に把握・管理できるようになっています。

インテックでは、セキュアなネットワーク環境と、統合型校務支援システム、クラウドストレージを組み合わせ、さまざまな校務をクラウド上で利用できるご支援を行っています。

*インテックが提供する「校務のクラウド化支援」の詳細はこちらのページをご覧ください

校務のクラウド化支援
ゼロトラストセキュリティで実現!安全な校務のクラウド化とは

校務DXを行うメリット

実際に校務DXを行うと得られるメリットを紹介します。

働き方改革の推進ができる

校務DXの実現により事務作業がデジタル化されれば、業務効率が向上し、働き方改革の推進につながると考えられます。
具体的には以下のような点で業務効率の向上が見込めるでしょう。

  • 成績データや出席記録が自動で連携され、通知表作成の手間が削減できる
  • 生徒の学習状況や健康記録を一つの画面で簡単に確認できる
  • 教員間の指導記録や会議録をリアルタイムで共有できる
  • 学校行事と授業計画を一元管理できる
  • 他校との情報交換や教育委員会への報告をオンラインで行うことができる

業務効率がアップすれば教員の心身の健康が保たれ、ライフワークバランスもより良くなるとと考えられています。

リモートでの授業・校務が可能になる

校務のDXが進んでいれば、リモート業務にすぐに切り替えられます。事務作業を学校外でできるため、時間を有効に使って働けます。コロナ禍のような感染症のまん延時や、台風などの災害時への対応もスムーズです。災害時のレジリエンス対応にも有効です。

情報共有が円滑化される

デジタルプラットフォームを通じて、教員間での情報共有がリアルタイムで可能です。情報の一元管理および共有により、教員間の情報格差が減少することも期待されます。さらに、教育委員会・学校・保護者間のデータ連携も格段に充実し、よりスムーズな情報共有が実現できます。また、掲示板などのグループウェアを活用すれば、他校の教員とも幅広く交流し情報交換することも可能です。

より効果的な教育活動が行える

手作業や紙ベースの作業をデジタル化することで、データ入力や処理の時間が短縮します。効率化によって、教員の働き方が変わることで、授業をより磨くことが可能になります。また、生徒の成績、出席状況、行動記録などのデータを一元管理することで、個々の生徒の状況を総合的に把握するといった教育支援が可能になるでしょう。

文部科学省も「学校における働き方改革」の目的として、教員が子供たちに対して効果的な教育活動を行えるようになることを掲げています。

校務DXを進めるポイントと注意点

校務DXを行う方法と、その際の注意点やポイントを説明します。

セキュリティを万全にする

学校では生徒に関するさまざまなデータを扱っているため、セキュリティについては特に注意を払う必要があります。文部科学省でも「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和6年1月)」を策定し、地方公共団体が設置する学校に向けて、セキュリティのガイドラインを示しています。

従来は校内にサーバーを置き、閉鎖されたネットワーク空間でデータをやり取りするオンプレミス型が主流でしたが、ここまでに見てきたようなメリットを享受するには、クラウドを活用した校務用システムへの移行が推奨されています。

クラウドを導入する場合には、ゼロトラストを前提としたセキュリティの構築が重要です。文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に準拠したセキュリティ対策を行っているシステムの導入を推奨しています。

※参考
文部科学省|教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和6年1月)

*こちらの記事も合わせてご覧ください。

関連記事教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改訂ポイントとは?

押印を廃止の方向へ

学校では押印や署名が必要な書類が多いことが、DXの円滑な進行を妨げていると考えられます。政府も2024年6月18日のデジタル行財政改革会議を経て「デジタル行財政改革 取りまとめ2024」において、教育現場でも働き方改革を妨げるFAXや押印を、2025年末には全学校で原則廃止にするとしています。そこで脱ハンコのためのシステム導入も考える必要があります。

※参考
内閣官房|デジタル行財政改革 取りまとめ2024

定期的にIT研修を行う

ITの世界はどんどん変化しています。苦手なイメージもあるベテラン教員だけではなく、若手であっても最新のITに精通しているとは限らず、定期的な研修は欠かせません。国・自治体が推奨しているガイドラインなどをもとに、全教職員でコンプライアンスの確認をしていきましょう。

システムの構築について専門の会社に外注する

学校で働く職員は仕事量が多いうえ、ITについて十分な知見を持っているわけではありません。外部の専門の会社に依頼することで、安全かつ使い勝手のよいシステムの導入が可能になります。

*こちらの記事も合わせてご覧ください。

関連記事校務のクラウド化による学校運営の効率化とセキュリティの重要性とは?

校務DXの事例紹介

校務DXを行った事例を紹介します。

安全を確保した校務のクラウド化を実現 高岡市教育委員会

高岡市内の学校では、学習については各学校から直接インターネットへ接続する環境を構築し、高速・大容量通信を実現していました。しかし、各校の校務に関しては、校内サーバーを利用していたため、学校内からしかネットワークへアクセスできず、ホームページの更新や保護者向けの緊急メール配信などは、すべて担当者が校内でしか行えませんでした。

そこで、最新版文部科学省セキュリティガイドラインに則した校務のクラウド化に取り組むことになりました。これにより、文部科学省が校務DXの方向性として示している、教員端末の一台化、ロケーションフリーで校務ができる環境がほぼ実現されています。

*事例紹介ページにて高岡市教育委員会様の取り組み事例を紹介しています

事例紹介 最新版文部科学省セキュリティガイドラインに則した校務のクラウド化で、教職員の働き方が変化!
支えるのは「技術・制度・運用が揃った教育情報セキュリティ管理基準」と「インテックの技術力」

リモート業務も行えるように 練馬区立関町北小学校

文部科学省が紹介する「学校の取組例」では、学校の取り組み例として、学校が汎用のクラウドツールを活用してデジタル化に取り組んでいる例が多数紹介されています。

練馬区立関町北小学校では校務改善のために、GIGAスクール構想における標準仕様にあるソフトウェアを積極的に活用しDXを推進するとともに、クラウド型校内研修にも取り組んでいます。

連絡帳や学級だより、健康観察表(保健板)などもクラウド化し、個人面談の日程調整も表計算ソフトを使用して行っています。

※参考
文部科学省|学校の取組例

校務DXでは業務プロセス全般の見直しが重要

校務DXは、教職員の働き方改革と教育の質向上を実現する重要な取り組みです。成功に導くには、単に業務の一部にパソコンやインターネットを取り込むのではなく、業務プロセスの見直しやシステムを使う側の意識改革が求められます。

自治体や学校の実情に合わせた計画的な推進と、セキュリティ対策の徹底が必要ですが、学校の業務は多岐にわたり規模も大きいため、専門的な知識がないと推進は困難です。校務のクラウド環境への移行や、セキュリティ確保の対応などに豊富な実績を持つ外部に委託するというのは、1つの有効な選択肢となるでしょう。

インテックでは、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーガイドラインに沿って、校務のクラウド化を支援しています。セキュアなネットワーク環境と、統合型校務支援システム、クラウドストレージを組み合わせ、さまざまな校務をクラウド上で利用できるようにしています。

統合型校務支援システムやファイルサーバのクラウド移行を検討中の教育委員会様は、ご参照ください。

*インテックが提供する「校務のクラウド化支援」の詳細はこちらのページをご覧ください

校務のクラウド化支援

公開日 2024年11月12日

資料ダウンロード

  • ゼロトラストセキュリティで実現!安全な校務のクラウド化とは

    これまで学校現場では、内部ネットワークのなかにサーバを構築し、限定した場所や端末から内部ネットワークを利用する「オンプレミス」でのシステム形態が主流となっていました。しかし、これからはどこからでもアクセスして校務が行える「クラウド化」の実現が求められます。
    クラウド化をゼロトラストセキュリティで安全に実現するためのポイントを紹介します。

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