最新版文部科学省セキュリティガイドラインに則した校務のクラウド化で、
教職員の働き方が変化!
支えるのは「技術・制度・運用が揃った教育情報セキュリティ管理基準」と
「インテックの技術力」
高岡市教育委員会様
高岡市教育員会は、人口約16万4千人を抱える富山県第二の都市である高岡市で、所管する小・中・義務教育学校・特別支援学校に在籍する約1万1千人の児童生徒のため、教育施設・設備の管理、学校教育、生涯学習、スポーツ振興、文化財保護などを担っている。
2020年6月には慶應義塾大学SFC研究所と連携協力協定を締結し、同研究所の協力を得て、インテックのサービス構築(導入)により校務のクラウド化を実現。このたびのシステム構築の背景と経緯・特長等について、高岡市教育委員会 参与 川辺 勝治様、慶應義塾大学SFC研究所・大学院政策・メディア研究科 特任准教授 梅嶋 真樹様、同SFC研究所 松沢 佳郎様にお話をうかがった。(文中敬称略)
導入の背景
教職員に「いつでもどこでも仕事ができる」環境を
── 今回インテックの提案を選んでいただいた背景ですが、導入前は、どのような課題を抱えていましたか。
川辺:
2020年度、高岡市内の学校では学習系として、各学校から直接インターネットへ接続する環境を構築しました。高速・大容量通信を実現し、快適な環境でGIGA端末を利用できるようになったのです。
その一方で、校務には、各学校に設置した校内サーバーを活用していました。インターネットへは閉鎖系の地域イントラネットを経由して接続。学校内からしかネットワークへアクセスできませんでした。そのため、ホームページの更新や保護者向けの緊急メール配信は、すべて担当者である校長や教頭が学校へ来て行う必要がありました。しかし、これでは緊急時などの対応が制限されてしまいます。そこで、校外でも校務ができる環境・体制を求めていたのです。
── 具体的に検討されるきっかけはどのようなことだったのですか。
川辺: 校内サーバーの更新や校務用PCのリース契約終了の時期を迎えたことが好機になりました。また、統合型校務支援システムを整備しておらず、文部科学省の指導があったこともきっかけのひとつですね。
梅嶋:
学校の教育情報システムで最も大事なことは、児童生徒が「いつでもどこでも学べる」こと。それは教職員の方々も同じです。
日本は校務のシステム化こそ早くから進めてきましたが、その一方で「学校の中で仕事をする」慣習はずっと残ってきました。なぜならずっと「学校の中でなければセキュリティが担保できない」状況だったからなのです。高岡市教育委員会が、長らく校務のシステム化に踏みきらなかったのもうなずけます。校務をシステム化したとしても学校以外で働くことは難しい。「それならまだ必要ではなかった」という考え方もできるでしょう。
選定理由
高いセキュリティが担保されたシステムへの安心感
── 今回、校務のクラウド環境の構築をインテックに依頼した決め手はどのような点でしょうか。
川辺: 決め手はやはりセキュリティ、その次に予算といったところでしょうか。インテックは、ISO/IEC27001、27017を取得しているなど、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に準拠し、高いセキュリティを確保したシステムを構築できるということで安心感がありました。また、多要素認証、暗号化通信など、クラウドサービスが高いセキュリティで守られており、いわゆる「ゼロトラストセキュリティ」を実現していることも重要でしたね。それでいて、従来のサーバーを利用した場合と比べて費用はほぼ同等でしたので、予算の範囲内に収められると考えました。
厳しいスケジュールでもRFP通りに仕上げる技術力
梅嶋:
本学SFC研究所は、多くの研究者が多分野にまたがる共同研究をインテックと推進してきた実績があります。そうした実績においても確認されているインテックの技術力は、今回の高岡市のイノベーションを支えていると思います。
文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」はまさに政府戦略でもある、クラウドバイデフォルト【政府が情報システムを調達する時は、最初の選択肢にクラウドを検討する】を支える最新の制度設計として話題ですが、遅れることなくきちんとその要求仕様を押さえていて、引き出しが豊富だと感じられました。
そして、その開発・実装スピードにも高い敬意を表すべきだろうと。なにせ、実際に仕様を公開してから納入までは6ヶ月しかなかったのです。厳しいスケジュールでありながら、高岡市教委の支給したRFP通りに論理設計から始めて作り上げ、期限内にしっかり納入されている。これは、高岡市教委側が徹底して「RFPに書いてある以上のことを要求しない」姿勢を貫いたことも貢献していると思います。お互いが真摯に、確実に進めてきたからこそ「最後のすり合わせで食い違いが明らかになり、余計なコストがかかる」という、システム開発で陥りがちな状況を回避できたのですね。
構築・導入
セキュリティは「技術・制度・運用」が揃っていることが重要
── 校務のクラウド化を実現するまでの様子について教えてください。
川辺:
校務のクラウド化決定前の2021年度は、クラウドストレージのフォルダ構造やデータのアップロード方法を検討したり、学校が保有している情報を重要性分類に位置付けたりしました。
2022年度には8月から12月にかけて各学校にサーバーデータの整理を依頼し、「高岡市教育情報セキュリティ管理基準」の発表、校長研修会などを行いました。このセキュリティ管理基準は梅嶋先生が原案を作成してくださり、それを高岡市に合うよう調整しながら、半年ほどかかって完成させたものです。10月にインテックと契約、校務用クラウドストレージサービス、統合型校務支援クラウドサービスを準備してもらった後、2月には各学校でクラウドストレージにサーバーデータをアップロードしてもらうとともに、クラウド利用のための端末設定をして2023年度を迎えました。
梅嶋:
こうした準備作業は年単位で続くことも珍しくないのですが、今回は短期間で突破することができました。先生方がITリテラシー改善に尽力され、ご苦労しながらも端末のキッティングを進めてくださったからだと感じています。SFC研究所の研究員の松沢さんが先生方にマッチしたマニュアルを作成してくれたことも大きいですね。
松沢: 技術者の方だとマニュアルを手順どおりに全部きっちり書こうとされることが多いようですが、私はどちらかというとユーザー側の立場です。そこで「手順に合わせ、その時表示される画面のキャプチャが出てきて、そのとおりに操作すると目的が達成できる」という方向性の、専門的な知識がなくても扱えるマニュアルを作っていくようにしました。こうしたユーザー目線が、サポートのお役に立ったのかなと。
── 「高岡市教育情報セキュリティ管理基準」作成について、注力したのはどのようなポイントでしたか。
梅嶋:
まず、「学校環境において『技術的に可能/不可能』な要素をしっかりと分け、可能な部分のみを盛り込む」ことを心がけました。何より難しかったのは「学校環境では技術的に難しいけれども必須である」といった要素を、どのような運用でカバーするか。教職員の皆様が「これだけはみなさん守りましょう」という運用方針を理解してくださったことで、現在の高岡市教委のモデルが成り立っているんです。
もうひとつ、「高岡市教委における要件定義書が、全国の市町村や都道府県でも活用できる」ことを重視しました。高岡市の厚意によって、教育委員会や学校設置者が希望すれば、高岡市教育委員会、慶應義塾大学SFC研究所、文部科学省学校DX戦略アドバイザー事務局(https://advisor.mext.go.jp/)にアクセスすることで、セキュリティを含めた校務クラウド化へ向けた仕様書を入手できるようになっています。
── なぜ、「学校環境でできること」と「仕様書の公開」を重視されたのですか。
梅嶋: セキュリティは、技術と制度と運用という三つがセットにならないとうまくいきません。しかし、実際の運用ではガイドラインの順守がいわば建前になっていることもよくあります。高岡市教委は文部科学省のセキュリティポリシーに基づくガイドラインをベースに、独自の規定を完成させました。しかし、全国の自治体には、まだそうした規定を持たないところも多いのが現実です。そこで、技術・制度・運用がうまくセットになっている高岡市のセキュリティの基本方針を、より多くの教育関係者に参考にしていただきたいと。
効果
高度なセキュリティと便利さ、効率性を両立
── システム利用の様子について教えてください。
川辺:
統合型校務支援システムは、名簿、出席簿、通知表、指導要録の作成、出勤簿の管理などに利用しています。また、クラウドストレージサービスでは、各学校のサーバーと同じように、ファイルを共有して利用できるようにしています。
現在、校務用のクラウドシステムにアクセスできるのは、臨時的任用講師を含む教員、栄養職員、事務職員のみとなっていて、学習専用端末として教職員に配布した端末に端末証明書をインストールすることで、校務を行っています。学習専用端末は、校長の許可があれば校外に持ち出せるので、緊急時や出張の際なども校外で執務できるようになりました。一方、他の端末からアクセスすることができず、高い安全性を保っていることで、市教委は安心して運用することができています。ちなみに「高岡市教育情報セキュリティ管理基準」の重要性分類Ⅰ類、Ⅱ類にあたる文書は、該当の校務を行っている者のみが利用できるようにして、個人情報を管理しています。
── 構築したシステムについて、どのような成果がありましたか。
川辺:
校外でも校務ができる環境・体制が整い、子育てや介護と仕事の両立や、先のコロナ禍のような事態への対応でも有効に活用できることで、教職員からの期待、安心感につながっています。また2023年4月以来、すべての月で前年同月よりも時間外勤務が減っています。例えば「統合型校務支援システムで、児童生徒名簿のデータをさまざまな帳票に反映できるようになった」など、効率化しているのは明らかですから、まさに導入の効果だと思われます。
運用開始前からしっかりインテックにサポートしてもらったおかげで、最近では運用が定着してきたのを感じます。当初こそヘルプデスクの活用も活発でしたが、問い合わせしなければならない状況も減り、落ち着いてきましたね。
── 他にも、効率化やセキュリティ面に関する具体的な例をうかがえますか。
川辺:
従来学校間のデータやり取りは、メール、USBメモリーなどを利用して行われていましたが、クラウドストレージサービスで学校間のデータやり取りができるようになり「安心して受け渡しできるようになった」と好評ですね。重要性分類Ⅰ類、Ⅱ類のデータも安心してクラウドストレージサービスに預けられますから。
職員会議はクラウドでファイルが共有できるため、ほとんどの学校でペーパーレス化しています。特に、秘匿性のある書類については、印刷せず端末上で閲覧しながら会議を行えるのがセキュリティ上も安心だと聞いています。
クラウドストレージサービスを利用するにあたって、提供されているツール(アプリケーション)を評価して取り入れたことも功を奏しました。「端末上に表示されるアイコンをクリックすることで閲覧、編集できる」など、クラウドであることを意識しなくても利用できるため、浸透しやすかったですね。アプリケーションをログアウトすると、端末に一時保存されているすべてのファイルがなくなるため、安心して端末を持ち出すことができるようになったのもよかったようです。教職員はこのクラウドストレージサービス上に個人フォルダを持っているため、人事異動があっても自分が作成した教材等をそのまま次の学校で利用できます。
アップデートの足並みが揃いよりセキュアな環境に
── 今後、教育現場のDXはどのように展開していくと考えていらっしゃいますか。
梅嶋:
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、高岡市にも被害をもたらしました。しかし、教育情報システムの稼働に問題は発生しませんでした。これもクラウド化のメリットの一つだと考えます。また、完全クラウド化した学校では、これからさまざまな部分が同時にアップデートしていくのではないでしょうか。セキュリティパッチに関しても、クラウド側に関しても一定の周期でアップデートしていくことになりますから。
それによって双方の通信経路の安全性もセキュリティも担保され、児童生徒の情報資産も守られる。ゼロトラストクラウド時代のセキュリティはこうあるべきだと思います。
ただ、それは技術だけでは実現できません。児童生徒にも運用ルールを守ってもらう必要があるし、教職員の皆様にも運用の規則を守ってもらう必要がありますよね。そういったことが明文化されているのが情報管理規定ですので、しっかりと作っていかなければなりません。
川辺: そうですね。我々も歩みを止めず、今後もやっていきます。
梅嶋: 校務をシステム化できていなかった高岡市が「他の自治体に追いつきたい」というところから始まって5年、今や全国の自治体が問い合わせや視察を打診し、「高岡モデル」を目指すまでになりました。ぜひ、全国の教育委員会の皆様に、高岡市教委の管理規定を読んで活用していただきたいですね。そしてインテック社にも、今後とも永く我々のパートナーとして教育環境を支えてくれることを期待しています。
Client Profile 高岡市教育委員会様
人口約16万4千人を抱える富山県第二の都市である高岡市で、所管する小・中・義務教育学校・特別支援学校に在籍する約1万1千人の児童生徒のため、教育施設・設備の管理、学校教育、生涯学習、スポーツ振興、文化財保護などを担っています。
会社名 | 高岡市教育委員会 |
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所在地 | 富山県高岡市広小路7-50 |
- ※本事例の情報は、2024年1月現在のものです。
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公開日 2024年02月22日
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