電子取引が活用されている具体例は?実例を合わせて解説

インターネットを介して行う請求書などのデータの取引を「電子取引」と言います。以前はこれらのデータを出力して紙で保存することが主流でしたが、2021年度に改正された電子帳簿保存法によって、電子データによる保存が義務付けられました。

そこで本記事では、電子帳簿保存法における電子取引について具体例や保存方法を解説します。

電子取引の具体例

電子取引に該当する取引について、国税庁の規定をもとに、具体例をみていきましょう。

国税庁によると、下記は電子取引と認められるケースであり、いずれも電子データの保存が必要です。

  • 1. 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
  • 2. インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
  • 3. 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
  • 4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
  • 5. 特定の取引に係るEDIシステムを利用
  • 6. ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
  • 7. 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
    (引用:『電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和4年6月)』の問4)
  • EDIとは「電子データ交換」という意味。EDIシステムを使用し取引データの送受信が可能。

インターネットや電子メールなどの電子媒体を介して行う取引は、すべて電子取引とされます。
そこで小売業を営むA社の業務を例に、どの取引が電子取引に該当するのか見てみましょう。

受注

A社は顧客が注文しやすいように、商品名と価格が記載済みの発注書フォーマットを表計算ソフトで作成していました。通常、顧客(取引先)からは注文内容を記載した発注書がメールに添付され、送られてきます。ただし、ときには発注書が送られてきた後に、メールの本文に「先程の発注に○○を追加」と記載した連絡で追加注文を受領することもあります。

請求

受注をこなした後は、請求書をメールに添付して顧客に送ります。

仕入

仕入れにかかる請求書は、仕入先からメールに添付されます。もしくは、データでFAXが受け取れる複合機で請求書を受領し、そのままPCで電子データを読み込む場合もあります。なお、直接仕入れ先に出向く場合の交通費は、交通系ICカード機能を搭載したスマートフォンで支払います。

備品購入

事務処理に使う帳簿や筆記具、クリップ、ホワイトボードペンなどの備品類は部署ごとに通販サイトで購入するため、部署の責任者が法人クレジットカードで精算します。

上述した複数の業務のすべてが電子取引に該当します。

受注

顧客からのメール添付で受領した発注書や、追加注文の情報が記載されたメール本文も電子取引に該当し、所定の方法で保存しなければなりません。

請求

自社が発行した請求書の控えも電子取引となり、保存が必要です。

仕入

仕入先からメール添付で受領した請求書も電子取引となり、保存が必要です。またスマートフォンアプリを利用して支払った交通費は、利用実績をスクリーンショットで撮影し、画像を保存する方法もあります。

備品購入

通販サイトで購入した備品はクレジットカードで精算しているため、クレジットカードの利用明細データの保存が必要です。あわせて、通販サイトでは通常、購入・決済した際に領収書をダウンロード可能ですが、この場合はクレジットカードの利用明細データとは別に、領収書等データの保存が必要とされています。

つまり、見積書・契約書・請求書・領収書などの電子データを送付・受領した場合には、一定条件のもとに電子データを保存する必要があります。

ただし対象となる電子データの種類は多く、ファイル形式もさまざまです。それらの電子データを、経理部は該当の部署から収集して適切に管理していく必要があります。クレジットの利用詳細データも必要となることを周知し、電子データ保存に対応していくことも求められるでしょう。

なお、電子帳簿保存法は法人・個人事業の別や事業規模は問わず、すべての事業者が遵守しなければなりません。

電子帳簿保存法における電子取引の保存方法

電子取引を保存する際には、検索機能を確保することが重要です。検索機能を満たした保存方法をご紹介します。

電子取引データの保存方法

自社のPCに電子取引データを保存する場合は、次のように行います。

  • 1. 領収書等の電子データをダウンロード
    メールに添付されたファイルや、通販サイトから取得する領収書データなどをダウンロードします。
  • 2. ファイル名を検索しやすいものに変更
    ファイル名については、検索に必要な「日付」「取引金額」「取引先」の情報をファイル名に入れることで、検索性を高めます。
    これは、電子取引データ保存に、「検索機能の確保」という要件が定められているためです。検索条件は「取引年月日その他の日付、取引金額、取引先」かつ、統一した順序で規則性を持たせることとされており、例えば2022年の10月20日に30,000円の取引をB社と行った場合は、「20221020_30000_B社」とする方法があります。
  • 3. 所定の場所にデータを保存
    「事業年度別」「取引先別」など、特定のフォルダを作成してファイルを集約します。

上記のほかに、「取引年月日その他の日付、取引金額、取引先」を記載した一覧表を表計算ソフトで作成して、検索簿として活用する方法もあります。

また、検索機能の充実した会計ソフトや文書管理ソフトなどを利用することで、効率的に保存することが可能です。ただし、利用する会計・文書管理ソフトが電子帳簿保存法の保存要件を満たしているか、確認のうえ利用しましょう。

電子帳簿保存法改正による電子取引の基本

改正電子帳簿保存法では、電子取引は電子データによって保存を義務付けられました。ポイントを見ていきましょう。

電子取引は電子データでの保存が義務化

電子帳簿保存法では、改正前から「電磁的記録(電子データ保存)」に関して記載されていました。従来では、紙と電子データ、どちらで保存してもよいとされていました。しかし2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法により、電子取引の電子データは電子データで保存することが義務付けられました。
ただし、電子化対応が間に合わない企業が多数生じたため、2023年12月31日までは紙保存も認める宥恕措置がとられています。宥恕措置については「電子取引データ保存における注意点」の章でご紹介します。


*電子帳簿保存法についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

関連記事 電子帳簿保存法とは?改正の内容や対応方法をわかりやすく解説

電子取引の電子データ保存では真実性や可視性が必須

電子取引の保存は「電子取引」による情報を、単に電子データで保存するだけではありません。前述した「検索機能」のほか、「真実性」や「可視性」を確保する必要があります。

「真実性」の確保とは、電子データが正当なものであり、保存された電子データが改ざんされていないことの確認ができるかという意味です。例えば電子データの変更や修正が行われた場合は、その履歴が分かることが求められます。

「可視性」の確保は、検索機能が備え付けられているか、PC画面やプリンタなどで、電子データがいつでも見られる状態を確保しているかを指します。検索した際に、その保存データをすぐに、整然・明瞭とした形式・状態で、画面および書面で出力できるようにしておく必要があります。

電子取引データ保存における注意点

電子取引データの保存に関して、運用時には次の点に注意しましょう。

改ざん防止のための措置をとる

電子データは、紙の書類と比較して改ざんが容易です。そのため改ざん防止、および真実性を確保するために、次のような措置をとる必要があります。

  • 電子データに対しタイムスタンプを付与する
  • 訂正や削除の履歴を確認できるシステムを利用して保存する
  • 改ざん防止のための事務処理規程等を備える

自社における電子取引データの保存方法に応じて、対応方法と運用を検討していきましょう。なお、事務処理規程は国税庁のサイトからサンプルをダウンロードできます。


*タイムスタンプについての詳細はこちらの記事をご覧ください。

関連記事 電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは?仕組みや利用方法を解説

宥恕措置は義務化の延期ではない

電子取引の電子データ保存は、次のとおり2023年12月31日まで義務化が猶予(宥恕措置)されました。

2023年12月31日までに行う電子取引

保存すべき電子データを印刷して保存することも可能です。税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば、事前申請等は不要です。

2024年1月からの電子取引

保存要件に従った電子データの保存が完全義務化。事前に必要な準備をしておく必要があります。

ただし、あくまで改正電子帳簿保存法の施行日は2022年1月1日であり、義務化自体が延長されたわけではありません。宥恕措置がとられたことに安心してしまい、電子データ保存の対応を先延ばししてしまうことは避けなければなりません。未対応の事業者は早めに対応しましょう。

電子取引における電子データの改ざんや不正作成、架空取引などが生じると、重加算税10%が加重されます。そのような事態を防止するためにも、社員すべてが電子データ保存の重要性を認識できるようにしておきましょう。
なお、個人事業主においては、電子帳簿保存法に適切に対応しないことで、最大65万円の特別控除が受けられる青色申告の承認を取り消される可能性があります。

電子取引の具体例を確認し、漏れのない保存を

電子帳簿保存法の改正により、電子取引に関する情報を電子データで保存することが必須となりました。また保存の際は、「真実性」「可視性」といった要件を担保しなければなりません。電子取引は日常業務のさまざまなシーンで行われています。そのため全社的に、電子取引の要件や対象を正しく理解し、適切に対応していく必要があります。

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公開日 2023年01月25日

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