電子帳簿保存法とは?改正の内容や対応方法をわかりやすく解説

1998年に制定された電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿書類について電子データ形式で保存することを認めた法律です。当初は電子データ保存の要件が厳しかったのですが、ペーパーレスやデジタル化を推進するために度々規制緩和が行われてきました。2021年度にも大きな改正があり、さらに規制緩和が進んだ一方で、電子取引データの電子保存が義務付けられたことにより、大きな話題になりました。各企業が電子保存に対応しなければならなくなったためです。

とはいえ「改正後の内容を調べても、どんな対応をすべきかよくわからない」「いつごろから何を準備すべきか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。2021年度改正の電子帳簿保存法について、概要と改正ポイント、対応する際の注意点をわかりやすく解説します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法(電帳法)は、国税関係の帳簿書類の電子保存を認めた法律です。1998年7月の制定以降、時代の変化に合わせて複数回改正されています。まずは対象となる書類や保存区分などを概要から見ていきましょう。

対象となる書類

電子帳簿保存法の対象となる書類は、次の3種類です。

  • 国税関係帳簿 仕訳帳、総勘定元帳など
  • 決算関係書類 貸借対照表、損益決算書など
  • 取引関係書類 見積書や契約書、領収書や請求書など

上記の帳簿・書類は電子帳簿保存が可能なものと、スキャナ保存が可能なものとに大別されます。

電子データの保存区分

電子データの保存区分と、区分ごとに保存可能な書類・帳簿については、以下のとおりです。

電子帳簿等保存

最初から帳簿や書類を電子データとして作成し、それを維持した状態で保存することを定めた区分です。

電子帳簿等保存の区分に該当するのは、仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿や貸借対照表・損益決算書などの決済関係書類、契約書や請求書などの取引に使用する書類です。

スキャナ保存

紙で作成した書類や受け取った書類を電子データとしてスキャンし、保存することを許可した区分です。以前は認められていなかったスマートフォンやデジタルカメラで撮影する方法も、現在は要件が緩和されたことにより可能になっています。

スキャナ保存の区分に該当する書類は、契約書や請求書といった取引関係書類であり、自分が作成したものや相手側から受領したものも保存できます。紙でやり取りする取引関係の書類について、スキャナ保存が可能になっているのです。

電子取引

契約書や請求書などの取引関係書類を紙ではなく、電子データでやり取りすることに関する区分です。 従来は電子メールやクラウドサービス、EDI取引などで受領した書類を紙に印刷して保存することも可能でしたが、今回の改正によって電子データでの保存のみとなりました。

電子帳簿保存法の適用条件

電子帳簿保存法には、次の適用条件があります。

真実性の確保

書類が改ざんされていないと証明することです。

帳簿の電子データの訂正・削除の際に履歴と操作内容を確認できるようにすることや、訂正・削除を業務遂行に必要な期間が経った後に行った場合、その事実を確認できるようにする「訂正・削除履歴の確保」。

帳簿の電子データとそれに関連するデータの間で、関係性を相互に確認できる「相互関連性の確保」。

さらに、電子データ保存に関連するシステムの関係書類を備え付ける「関係書類等の備付け」が該当します。

なお、「訂正・削除履歴の確保」と「相互関連性の確保」は電子帳簿等保存にかかる要件です。

可視性の確保

誰でも視認・確認ができるようにすることです。

電子データの保存場所にパソコン等の電子計算機やディスプレイ、プリンタおよびそれらの操作説明書を用意し、誰でもすぐに閲覧できるようにする「見読可能性の確保」。取引年月日や金額など、所定の要件を満たした検索ができる「検索機能の確保」が該当します。

電子帳簿保存法の改正ポイント

2022年1月以降の改正電子帳簿保存法の、6つの改正ポイントを解説します。

全体として手続きの簡略化と各種要件の緩和が進みました。しかし、一方で電子データ保存が義務化されたり、罰則が強化されたりしました。

1.事前承認制度の廃止

改正前は電子帳簿等保存・スキャナ保存には、税務署への事前申請が必要でした。しかし改正後は税務署長による事前承認手続きが廃止されたため、速やかに電子データ保存を開始できるようになりました。

2.タイムスタンプ要件の緩和

タイムスタンプの付与期限が約2ヶ月と7営業日以内に緩和され、より真実性の確保がしやすくなりました。また、スキャナ保存に関しては訂正又は削除の履歴が確認できるシステムを利用している場合は、タイムスタンプの付与そのものも不要となっています。


*タイムスタンプの詳細については、下記の記事をご覧ください。

関連記事 電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは?仕組みや利用方法を解説

3.検索機能要件の緩和

従来と比較し、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データの保存について、必要な検索項目が減りました。原則として、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の項目で検索ができれば要件が満たせるようになりました。

4.スキャナ保存における適正事務処理要件の廃止

従来は紙で受け取った請求書や領収書等をスキャナ保存するには、適正事務処理要件(社内相互牽制・定期検査・問題の再発防止策)を設け、タイムスタンプ付与後の記録事項の確認やデータチェックが必要でしたが、改正後はそれらが廃止されました。

5.電子取引データの電子保存が義務化

従来は電子取引でやり取りした請求書や領収書等の電子データは、紙での保存も可能でした。しかし、改正後は電子データのままで保存することが義務化されました。

電子データ保存には、検索機能を確保することが必要です。また、改ざん防止のための措置として「改ざん防止のための事務処理規程」を定めることやタイムスタンプの付与できる環境を整えることなども求められます。2023年12月31日までの宥恕期間が設けられていますが、早めに保存体制を整えておきましょう。

6.罰則の強化

改正後の電帳法では、スキャナ保存や電子取引データ保存時に隠ぺいや偽装取引などがあったり、要件を満たさない保存がされたりした場合は、重加算税が10%加重されるようになりました。

改正電子帳簿保存法の対応をする際の注意点

改正後の電子帳簿保存法への対応時は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

1.社内ルールを整備し周知を徹底する

改正後の電子帳簿保存法に沿った社内ルールを整備し、社員全員に徹底させましょう。

経理部門はもちろんですが、領収書や見積書などのやり取りはすべての社員が関わる可能性があります。紙の書類をスキャンする方法から、電子取引データの保存や管理についてすべての社員が必要な要件を理解しておくことが大切です。紙の書類と電子データで取り扱いが変わるため、それぞれの管理ルールを整備し、徹底することが必要になります。

2.電子化する書類を整理する

まず電子化が必要な書類を整理します。量が膨大な場合は、電子化が必要な書類から優先的に電子化を進めるのもひとつの手段です。まずは自社でどのような種類の書類を、どの程度取り扱っているかを把握しましょう。

電子取引データは電子データ保存が義務化されているため、誰がどんな電子データをやり取りしているのか、保存形式は統一されているのかなど、早急に確認する必要があります。

3.電子データの管理方法を確認する

表計算ソフト等で電子データの一覧表を作成することにより検索性を高める、フォルダ名・ファイル名のルールを規定し各ファイルを見やすく格納していくなど、電子データを一元管理できるようにします。また、万が一に備えてバックアップを取っておきましょう。

4.データの一元管理が可能なシステムを導入する方法もある

電子データの管理方法を解決するためには表計算ソフト等で管理する方法の他にも、電子データの一元管理や受発注のやり取りをネットワーク上でできるシステムなどを導入する方法があります。システムを活用することで、スムーズな対応や業務の円滑化が期待できるでしょう。

ただし、電帳法対応を目的としたシステムを導入する場合は、以下の点に注意しましょう。

JIIMA認証の有無を確認する

JIIMA認証は電子帳簿保存法の要件に適したシステムに付与されます。なお、JIIMA認証システムではなく自社独自のシステムを構築することも可能です。その場合は、自社のシステムが要件を満たすかどうか、税務署等に確認します。

  • JIIMA認証についてはこちらをご参照ください。
既存システムとの連携が可能な確認する

導入予定のシステムが、既存システムとの連携可能かどうかをチェックします。連携ができるようであれば、その分手作業やシステム改修のコストを削減できます。

改正電子帳簿保存法への対応を進めよう

改正電子帳簿保存法では、複数の変更がなされました。要件が緩和された箇所は、書類の電子データ保存をより進めやすくなったといえるでしょう。しかしその一方で、電子取引データについては、電子保存が義務化されました。対応が済んでいない企業は、2023年12月31日までの宥恕期間内に電子データ保存の体制を整えなければなりません。

対応が済んでいない場合はシステム導入を検討することで、効率的な電子化を進めていきましょう。

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快速サーチャーGX

公開日 2023年01月25日

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