電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは?仕組みや利用方法を解説
電子帳簿保存法において保存要件のひとつであるタイムスタンプをご存知でしょうか。電子保存を検討している企業の担当者であれば、言葉は聞いたことがあるでしょう。しかし、具体的にどういうことかわからない、実際に何をすればいいのかわからないという方も少なくありません。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプは、電子書類が改ざんされていないことや発行された日付に間違いがないことを証明できる技術です。本記事では、タイムスタンプについてその仕組みや利用方法を解説します。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプ
1998年に初めて施行された電子帳簿保存法は、電子帳簿類の電子保存について規定している法律です。経済・社会のデジタル化の進行に合わせて何度か改正を重ねてきましたが、2022年1月の改正では、複数の要件が緩和されました。タイムスタンプの付与要件も、緩和されたもののひとつです。
タイムスタンプの意義を確認したうえで、2022年1月の改正点を紹介します。
タイムスタンプの意義とは
タイムスタンプの意義は、次の2つです。
- タイムスタンプが付与された時点で、データが存在していたことを証明する
- タイムスタンプを付与した後にデータが改ざんされていないことを証明する
つまり電子帳簿保存法におけるタイムスタンプは、付与された時刻に文書(電子データ)が存在していたことを示す証拠です。あらかじめ契約した時刻認証局(TSA)が発行するタイムスタンプを残すことにより、付与された時刻にその文書(電子データ)があったことを示します。またそれ以降に変更を加えていないことを示す証拠にもなります。
タイムスタンプを押された文書(電子データ)が原本であることを示すものであり、複製が容易な電子保存において、その信頼性を担保することができる重要な技術といえます。
電子帳簿保存法改正による変更点
2022年1月の電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプについて緩和された要件は大きく次の3つです。
タイムスタンプの付与期間が、最長「2ヶ月と概ね7営業日以内」となった
従前は、最短のタイムスタンプの付与期間が「概ね3営業日以内」であったことと比較すると、付与期間は大きく緩和されたといえます。
スキャナ保存における自署が不要に
スキャナ保存において、受領者が請求書や領収書等をスキャナで読み取る際には自署が必要でした。しかし改正により不要になりました。
訂正や削除が確認できるシステムを利用する場合、タイムスタンプの付与は不要となる
スキャナ保存において、訂正や削除の事実、内容の確認が可能なシステムを利用する場合、タイムスタンプは不要となりました。
これらの変更によって、スキャナ保存の業務負担は大きく軽減するでしょう。また、タイムスタンプ付与について、一定の要件のもとではありますが、選択ができるようになったことも利用者にとってメリットと言えるでしょう。
*電子帳簿保存法についての詳細は下記の記事をご覧ください。
関連記事 電子帳簿保存法とは?改正の内容や対応方法をわかりやすく解説
タイムスタンプの仕組み
タイムスタンプは、時刻認証局(TSA)と呼ばれる事業者が発行します。なお、TSAは指定調査機関から認定を受けた事業者です。
発行手順は、次のとおりです。
タイムスタンプの要求
利用者(企業側)は電子書類を作成し保存する際に、TSAにタイムスタンプの付与を要求します。この際「ハッシュ値」と呼ばれる特定のアルゴリズムから生成された不規則な文字列を送信します。「ハッシュ値」は電子ファイルの内容を少しでも変更すれば、あわせて変わる性質を持ちます。そのため「ハッシュ値」が変わらないことが、原本である証拠になります。
タイムスタンプトークンの発行
TSAは利用者から要求を受けると、電子書類のハッシュ値に時刻情報を付与したタイムスタンプトークンを発行します。利用者はその後電子書類を保存・使用します。タイムスタンプトークンにはカギがかけられており、利用者が変更することはできません。
タイムスタンプの検証
利用者は原本が改ざんされていないことや、日付が確かであることを確認する際にTSAからカギを受け取り、タイムスタンプトークンを確認します。原本と保存されたタイムスタンプトークンのハッシュ値が同じであれば改ざんされていないことになります。
タイムスタンプの利用方法
電子データにタイムスタンプを付与する方法として、外部システムと連携する方法があります。そこで、電子帳票システムや会計システム等を利用してタイムスタンプを付与する際の一般的な流れを紹介します。
1.事前準備
タイムスタンプの付与が可能なシステムであるか確認します。システムによっては設定の変更や、別途オプション契約が必要になることもあります。
2.書類を準備
タイムスタンプを残す書類を準備します。紙の書類に誤りがあると、後に電子データの訂正が必要となるため記載内容に誤りがないか、しっかりと確認しなければなりません。
3.スキャン
スキャナで書類をスキャンします。スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した電子データも使用可能ですが、画像が不鮮明にならないように注意します。
4.システムやクラウドにアップロード
スキャンした書類を利用しているシステムやクラウドにアップロードします。システムにより操作性が異なりますので導入時は比較精査したうえでシステムを選ぶといいでしょう。
5.タイムスタンプを付与
アップロードした書類にTSAからタイムスタンプが付与されます。タイムスタンプが付与されたことで、その書類が原本であること、その時間に確実に存在したということが証明されます。
もしも、現行で利用している電子帳票システムや会計システム等がタイムスタンプを付与できないタイプの場合、システム移行を検討してもいいでしょう。また、タイムスタンプを付与できるPDFの編集アプリケーションソフトもあります。自社の状況に応じて環境を整えていきましょう。
なお、TSAでタイムスタンプを利用する際には利用料を支払います。通常利用しているシステムを通じて支払うことになります。
タイムスタンプを付与するうえでの注意点
タイムスタンプを利用する際に、確認しておきたい注意点を3つ紹介します。
1.タイムスタンプの付与期間
タイムスタンプの付与期間が以前よりも長くなったとはいえ、タイムスタンプの付与期間に制限が無くなったわけではありません。付与期間が長くなったことに安心してしまい、うっかり期限を過ぎてしまうことは避けなければなりません。余裕を持った業務フローを規定し、早めの対応を周知させるようにしましょう。
2.社内での原本の取り扱い
2022年1月の改正により、スキャナ保存した後はすぐに原本を破棄することが可能となりました。とはいえ、業務フローや内部統制等によりスキャナ保存後に、すぐさま破棄を認める企業ばかりではないでしょう。
まずは自社の方針を決定します。そのうえで、「社内で保管期間を設定する」「上長がデータを確認したら破棄する」「この書類はすぐに破棄可」などの規則を設定して、社員が原本の取り扱いに迷わないようにしなければなりません。
3.タイムスタンプの利用には費用がかかる
料金体系はシステムによって異なります。通常は初期費用と月額料金がかかりますが、初期費用なしで月額料金は少し高めに設定されているものもあります。また、電子帳法システム等の月額利用料にタイムスタンプの利用料が含まれているタイプと、タイムスタンプの付与ごとに料金が追加されるタイプがあります。
タイムスタンプの付与に追加料金がかかる場合は、タイムスタンプを利用する頻度により、適した料金体系が異なってくるでしょう。使う回数が多めならば定額制、使う回数が少ないのであれば従量制というように、自社に適したタイプを検討しないと、コスト高になる可能性があります。
なお、一定数までは定額制で、所定の数を超えると都度追加料金が発生するといったケースもあります。ただし、現状ではタイムスタンプを付与する回数が少なかったとしても、将来的に増える可能性もあります。今後、取引における電子データのやり取りは増えることが予測されるため、月額料金にタイムスタンプの料金が組み込まれているシステムか、定額制がよいかもしれません。
タイムスタンプを理解して電子帳簿保存法に対応を
電子データは、もはやビジネスになくてはならない存在です。しかし、単に保存しただけでは、データの信頼性は確保されません。電子データが原本に相違ないこと、存在の時刻が確かであることの証明となるのがタイムスタンプです。タイムスタンプの重要性を理解して、電子帳簿保存法に対応していきましょう。
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