電子取引の事務処理規程とは?改正電子帳簿保存法への対応方法を解説

2022年1月施行の改正電子帳簿保存法において、特に影響が大きいのが電子取引データの保存義務化です。これに対応するためには、保存要件に沿って電子取引データを保存する必要があります。その要件の一つである「真実性の確保」のためには、訂正・削除履歴が残る、またはタイムスタンプを付与するシステムの導入や、事務処理規程を制定で対応しなければなりません。いずれかの方法で対応すればよいのですが、システム導入で対応した場合でも、事務処理規程を制定しておいた方が運用上良いケースがあります。事務処理規程の策定は手間のかかる作業かもしれませんが、自社にとって必要かどうか確認は大切です。

本記事では、事務処理規程の必要性や制定のポイントなどを解説します。

事務処理規程とは

事務処理規程とは、電子帳簿保存法における「電子取引データ」の保存に対応するための方法のひとつで、訂正削除(改ざん)の防止に関するルールを定めたものです。
電子帳簿保存法では、電子取引の保存要件において真実性を確保するための措置として、次の4つの方法が示されています。

  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備え付け
  • タイムスタンプが付与された電子データの授受
  • 電子データの授受後、速やかなタイムスタンプの付与
  • 訂正削除の作業履歴が残るシステム、もしくは訂正削除ができないシステムの使用

上記のうち、ほとんどは専用のシステム導入で実現できますが、事務処理規程の備え付けは各社で規程を定める必要があります。

多くの企業は、効率を重視しシステムを活用して電子帳簿保存法の改正に対応しようとしています。しかし、システム導入のみで真実性の確保を行っている企業だけではなく、システムの導入とあわせて事務処理規程も備え付けている企業があります。

次章以降、事務処理規程を制定しておくとよいケースや事務処理規程制定のポイントについて解説します。


*電子帳簿保存法についての詳細は下記の記事をご覧ください。

関連記事 電子帳簿保存法とは?改正の内容や対応方法をわかりやすく解説

事務処理規程が必要な理由

事務処理規程が必要な理由として、システムの導入だけでは対応できないケースを見ていきます。

システムが対応しきれないケースがある

電子帳簿保存法の改正内容に対応するシステムを導入しても、次のような制限があり事務処理規程の備え付けを選択した方が良い場合があります。

  • タイムスタンプ付与の対象となるファイル形式が限られる。もしくはスキャナ保存にしか対応していない
  • 取引先から受け取ったファイル形式が自社の会計システムでは授受できない

システム上の課題は、システム改修や自社の業務フローに完全に対応するシステムへの移行によって解決できるかもしれません。しかし、それには一定のコストがかかります。現状のシステムに大きな不満がない状況であれば、事務処理規程を定めてシステム以外の運用で不足を補うほうが現実的といえるでしょう。

システム導入後の移行が難しくなる懸念がある

また、改正後の電子帳簿保存法に定められた条文では、単一のシステム上で「授受」と「保存」の要件を満たす必要があります。

例えば、Aというシステムで取引先から受け取って保存した電子データをBというシステムに移行する場合は、システムBで「授受」をしていないので要件を満たせなくなります。企業において、コスト削減や業務効率化などを理由にシステム移行が行われることは珍しくありません。しかし、現行の条文では、システム移行することで電子帳簿保存法の要件を満たさなくなってしまうのです。

システムだけで改正電子帳簿保存法に対応すると、柔軟な運用ができなくなる懸念があります。しかし、事務処理規程により補完することで、様々なケースで真実性の確保が可能となります。そのためシステム導入とともに、自社にあった事務処理規程を定めておくことが望ましいといえるでしょう。

内部統制強化につながる

この他メリットとしては、事務処理規程の制定は内部統制強化にもつながることが挙げられます。事務処理規程で訂正削除の運営を定める場合は、事務処理規程の内容に沿って申請書(取引情報訂正・削除申請書)の記載・提出をし、管理責任者による認可を得て行うことになります。このように事務処理規程の順守によって電子データの取り扱いが厳格化し、内部統制の強化を図れます。

事務処理規程の作成方法

事務処理規程を制定する際は、国税庁が公開しているひな型を参考にすると短時間で作成が可能です。そこで、ひな型をもとに作成する際に押さえておくべきポイントを解説します。

電子データによる取引の範囲を詳細に示さなければならない

例えば「EDI取引」「電子メールを利用した請求書等の授受」「クラウド会計システムを利用した請求書等の授受」のように、取引の形態を明確に記載しなければなりません。ECサイトで商品購入をした際の金額明細や領収書、出張時の交通機関の明細や領収書なども付け加えておくとよいでしょう。

どのデータが対象になるかを詳細に示さなければならない

「見積依頼情報」「見積回答情報」「確定注文情報」「注文請け情報」「納品情報」「支払情報」などが該当します。自社の業務フロー上、対象となるデータをもれなく記載します。

訂正や削除をする場合の条件や方法を詳細に示さなければならない

訂正や削除の手続きは厳格に定めなければなりません。例えば、訂正や削除を申請するための「申請書」の内容や申請方法、申請を受けた管理者がとるべき対応、また訂正や削除の後には「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成することなどを記載します。

管理責任者・処理責任者を明確にし、規程に従う人の範囲も示さなければならない

適切な運用体制として、管理と処理の責任者を記載し、担当者が変わったら規程に変更を反映させます。規程に従う人の範囲も単に従業員とするのではなく、「役員」「社員」「契約社員・パートタイマーおよび派遣社員」のように正確に記載します。

事務処理規程の項目は、自社の運用体制に応じて修正が必要です。また、作成した規程の内容が法令に沿っているかを適宜確認し、定期的に見直しすることをおすすめします。2ヵ月毎、3ヶ月毎のように見直しを業務フローに組み込むことで、修正漏れを防いでいくとよいでしょう。


*参照:参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁

改正電子帳簿保存法への対応に事務処理規程制定も検討しよう

事務処理規程を整備することは簡単な作業ではなく、規程を定めた後もしっかりと社内に周知しなくてはなりません。制定から周知など一連の作業を億劫に感じる企業もあるでしょう。しかし、システム利用だけで改正電子帳簿保存法に対応するのには難しい場合があるため、事務処理規程の制定も検討するべきといえるでしょう。

電子帳票システム「快速サーチャーGX」は、電子帳簿保存法に関わる多種多様な電子書類を一元管理し、ブラウザで閲覧できる電子帳票システムです。
必要なときに書類をすぐに閲覧できる利便性の高いシステムです。事務処理規程の制定とあわせて導入することで、効率的な電子データの管理・運用を実現できます。ぜひご検討ください。


*INTECが提供する電子帳票システム「快速サーチャーGX」の詳細はこちらのページをご覧ください

快速サーチャーGX

公開日 2023年01月25日

資料ダウンロード

  • 【改正された電帳法への対応に悩んでいる担当者必見!】電帳法対応におすすめのシステムを紹介

    本書では、電子帳簿保存法の改正の概要や電帳法に過不足なく対応するための方法を紹介しています。
    電子帳簿保存法への対応の準備にぜひお役立てください。

お問い合わせ

Webから問い合わせる

あわせて読まれているコラム

関連する商品・サービス

お問い合わせ

インテックへのお問い合わせは、こちらからお願いいたします。

Webから問い合わせる
ページトップへ戻る