現場出身のスタッフが主導する、独自のデータ統合基盤を構築
部門間に点在する70のシステムを統合し、病院経営を可視化
医療情報連携プラットフォームが救急患者の受け入れ最大化を実現

春日井市民病院

  • DX
  • 医療/医薬/福祉

愛知県春日井市の市立病院として1951年に42床で開院した春日井市民病院は、75年の長きにわたり地域医療を支え続けています。現在は年間1万台を超える救急車を受け入れ、一般病床と感染症病床を合わせて558床を擁する、地域基幹病院としての役割を担っています。
同院では、院内に点在する約70もの部門システムが「サイロ化(孤立化)」しデータ活用が進まないことが大きな課題となっていました。この状況を打破すべく、インテックの医療情報連携プラットフォームを導入し、データの統合とリアルタイムな可視化を実現。
今回は、システム導入を主導した経営戦略室の理学療法士 中﨑亨氏、診療放射線技師 馬場勇人氏、看護師 小木曽正憲氏に、現場主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)がもたらした成果についてお話を伺いました。

課題

部門ごとにシステムが「サイロ化」しデータ活用が本来の業務を圧迫

── 医療情報連携プラットフォーム導入前は、どのような運用課 題がありましたか。

春日井市民病院
経営戦略室
管理課情報担当
馬場 勇人 氏

馬場: 当院には電子カルテや各部門の専用システムなど、およそ70ものシステムが稼働していますが、それぞれのデータが独立し、相互に連携できない「サイロ化」が起きていました。経営分析や原価計算に必要なデータを取得する際も、各担当者がそれぞれのシステムへ個別にログインし、直接抽出できないデータはCSV形式で書き出した後、手作業で加工・結合するという煩雑な工程を経て資料を作成していました。

── データの分散が大きな負担になっていたのですね。

馬場: はい。情報が必要になるたびにシステムごとの接続設定を確認し、複数の部門システムにまたがっている場合、その回数分だけ同じような作業が発生するため、同じ操作を繰り返すという「情報の集約」そのものが目的化していました。そのため、本来の分析業務に注力できないことが最大の課題でした。

春日井市民病院
経営戦略室 看護師
小木曽 正憲 氏

小木曽: 経営戦略室として病院全体の収支や稼働状況を可視化しようとしても、各システムから人海戦術でデータを集めてExcelで集計するには限界があります。資料が完成するころには状況が変わってしまい、今の病院の姿をリアルタイムに捉え、迅速な経営判断を下すための仕組みが決定的に不足していました。

── 現場業務では、どのような課題がありましたか。

春日井市民病院
経営戦略室 主査
中﨑 亨 氏

中﨑: 現場視点では、電子カルテの画面だけでは自病棟の情報に閉じてしまい、病院全体を俯瞰して見ることができない苦労がありました。全病床の空き状況や患者さんの詳細な経過を把握しづらいため、病院全体のリソースを最適化して無駄なく運用することが難しい環境でした。

馬場: 特に病床管理(ベッドコントロール)に関しては、かつては紙の資料やホワイトボード、そして担当者間の口頭での確認が主体でした。各病棟の師長は自部署の空き状況を把握していても、病院全体のコントロールを担うマネジャーがその情報を即座に把握する手段がなく、情報の不透明さや属人化が管理上の懸念となっていました。

導入システム

柔軟性と将来の標準化を見据えた拡張性を評価

── 導入の経緯を教えてください。

小木曽: データの統合を目指すプロジェクトが立ち上がった際、かねてより交流の深い藤田医科大学様での先駆的取り組みを知ったことがきっかけです。

── 採用の決め手となったポイントを教えてください。

小木曽: 比較対象としてSQLなどの汎用データベースも検討しましたが、医療情報連携プラットフォームで採用するインターシステムズ社のInterSystems IRIS for Health(データ統合・分析の基盤となるプラットフォーム。以下、IRIS)は、国内外の金融機関や大規模な基幹システムでの稼働実績があり、信頼性が非常に高いと判断しました。また、当院の組織特性に合わせて自分たちで独自のデータ構造を作り込んでいくというニーズには、IRISの柔軟性が不可欠でした。

馬場: 現実的なコスト感に加え、米国のヘルスケア領域や国内の他病院で安定稼働している実績も大きな安心材料となりました。

小木曽: 技術面では、次世代規格「HL7 FHIR」に標準対応している点も重要でした。将来的な他医療機関とのデータ連携や共同研究において、この拡張性は他製品にはない優位性になると確信しました。

効果と展望

リアルタイムなデータで病床管理を効率化し、地域医療へ貢献

── 導入効果はいかがでしょうか。

馬場: 各システムに点在していたデータをIRISが自動的に集約・可視化することで、毎月繰り返していた定型的な集計業務から解放されました。

中﨑: 1画面で全病床を俯瞰できるようになりました。入院予定や退院見込みが一覧化されたことで、救急患者の受け入れ可否が即座に判断できます。現場の師長たちにも全体の逼迫ひっぱく状況が共有できるようになり、「救急車を断らずに受け入れる」という前向きな姿勢に変化したことが、非常に大きな効果だと感じています。

小木曽: AIとの連携で、膨大な診療録や看護記録を自動要約して保持する仕組みを構築しました。わずかな時間で患者さんの状態を把握し、的確な判断を下せるようになっています。

── 同様の課題を抱えている病院へのアドバイスをお願いします。

馬場: 病院内にある膨大なデータが各システムに閉じ込められていては、真の価値を発揮できません。まずは、現場のスタッフのニーズを拾い上げ、現場を知るコメディカル(医療従事者)が経営的な視点で関わることが、実効性の高い仕組みを作る近道です。

小木曽: システムの選定では将来的な拡張性や標準規格を重視すべきです。IRISのような柔軟なプラットフォームがあれば、自分たちの手で必要なアウトプットを自在に作り出せます。

中﨑: 見える化」は現場の意識改革に直結します。客観的な数字が見えれば、経験や勘に頼らずに、組織全体で同じ目標に向かえます。まずは小さな成功体験を積み重ね、データの価値を現場に広めていくことがDX成功の鍵です。

── インテックに期待することや要望はありますか。

小木曽: システムを導入して終わりではなく、今後も継続的な関係を期待しています。将来的にはAI を活用した、一歩踏み込んだ医療ITへと進化してほしいです。

馬場: 技術的に不明な点が生じても、インテックが迅速かつ丁寧に対応してくれます。また、他院での成功事例の共有など、独学では得られない知見を得られました。こうした医療業界全体の効率化につながる情報発信も期待しています。

── 今後の展望をお聞かせください。

馬場: 電子カルテ情報共有サービスへの参画に向け、IRISを活用したHL7 FHIR規格でのデータ出力実装を進めています。大学病院などとの共同研究を加速し、将来的な疾病の新たな治療法の確立などで、地域社会へ還元したいと考えています。

中﨑: 市民の安心を支える救急医療の使命を全うしながらも医業収支を安定させ、持続可能な病院経営を実現していきます。

Company Data 春日井市民病院

1951年に内科・外科の2科を有する42床の病院として開設。1998年に22科552床の地域基幹病院として、現在の鷹来町に新築移転した。人材不足や人件費・医療資材費の高騰により、日本のほとんどの病院が経営難の中、DXやロボットの導入など最新技術を積極的に取り込みつつ、『心が通い合う温かい医療』を目指し、公営企業として健全な経営に努めている。
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公開日 2026年05月11日

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