医療データの二次利用を可能にする医療情報連携プラットフォームを構築、レポートの既読管理、未読通知と遠隔地への読影依頼オーダーを可能に
岩手医科大学附属病院様
KEY POINT
- 医療情報連携プラットフォームを構築し、電子カルテや部門システムを連携
- レポートの既読管理、未読通知を可能に
- 読影依頼オーダーをアプリで実現
岩手医科大学附属病院では医療データの二次利用を目的に医療情報連携プラットフォームを導入。同プラットフォーム上に読影依頼オーダーと各種レポートの既読管理ソリューションを構築した。医療情報連携プラットフォーム導入の背景と経緯、効果について岩手医科大学歯学部教授で岩手医科大学附属病院総合情報センター長の田中良一氏、病院事務部 病院企画課の安田信玄氏にお話を伺った(文中敬称略)。
電子カルテを中心としたシステム構成では医療データの二次活用が困難
──貴院についてご紹介ください。
田中: 岩手医科大学附属病院は東北最大規模の病床数(1000床)を持つ大規模地域拠点病院です。県内唯一の特定機能病院として高度医療提供の役割を担っています。2019年9月に盛岡市内丸地区から紫波郡矢巾町に移転し、内丸地区に高度外来機能病院として内丸メディカルセンターを開院。現在は2つの病院を運営しています。
──医療情報連携プラットフォーム(以下、プラットフォーム)構築に取り組んだ背景について教えてください。
田中:
そもそものきっかけは、2017年に電子カルテと放射線画像管理システム(PACS)が同時に更新時期を迎えたことでした。当時は内丸地区で循環器医療センターや岩手県高度救命救急センターなど4つの医療センターに分かれていましたが、それぞれが独自のオーダリングシステムを使用しており、PACSも静止画像と動画像で別のシステムを使用していました。各部門システムがそれぞれ電子カルテと連携する形式であったため、部門相互の情報連携ができないほか、部門システムを他のベンダー製品に入れ替える際は、その都度データ移行を行って電子カルテとの連携・接続をやり直す必要があり、時間もコストもかかるという課題がありました。
そこで、複雑化していたシステム連携やデータの保管方法を整理し、情報を一元管理して二次利用を可能にする方法について検討を開始しました。
課題1データの一元管理が困難
電子カルテや部門システムがデータを保持しているため、情報の一元管理や二次利用が難しい。
課題2医療安全へのさらなる取り組みが必要
各種レポートの既読管理をシステムで処理したい。
課題3電子カルテや部門システムの変更・更改負担が大きい
電子カルテと部門システムが個別に連携しているため、システムを入れ替えるたびに情報連携をやり直すコストと時間がかかる。
──この問題をどのように解決しようと考えたのですか。
田中:
電子カルテを中心とした連携ではなく、電子カルテも他の部門システム同様に一つの部門システムとして情報連携できるプラットフォームを導入することを考えました。
そこで調べてみたところ、医療情報連携に特化した製品としてインターシステムズ社のInterSystems HealthShare®があり、医療情報連携のための様々な標準規格に対応していることや、その上で情報活用のためのアプリケーションの開発・実装が可能であることがわかりました。HealthShareはその後、医療に特化したデータプラットフォーム InterSystems IRIS for Health™(以下IRIS)がリリースされ、最近注目されているHL7 FHIRにも対応しました。
安田: 当初は情報連携の仕組みを自分たちで構築することも考えたのですが、日常のシステム運用業務を続けながら開発をするのは難しいと感じました。
田中: そこでSIerの力を借りる方が良いと判断し、インターシステムズ社から電子カルテに精通し、IRIS上でのシステムインテグレーションも経験豊富と紹介されたのがインテックでした。
レポートの既読管理・読影依頼オーダーを医療情報連携プラットフォーム上で実現
──レポートの既読管理システムと読影依頼オーダーを構築された背景を教えてください。
田中:
当院が矢巾町への移転を終えた2019年頃、医療の世界では、画像レポートや病理診断レポートの見落としや確認不足によるインシデントをいかに防ぐかが課題となっていました。レポートの開封確認に止まらず、既読管理までできるシステムが必須でした。
また移転によって内丸地区には読影できる常勤の放射線科医がいなくなったため、読影レポートの作成が課題となりました。そこでまず担当医が読影を行い、必要に応じて専門医に読影依頼オーダーをできる二段階チェックが可能なシステムの要望が内丸地区のセンター長から出されたのです。
──SIerとしてインテックを選んだ理由を教えてください。
田中:
読影依頼オーダーのシステム開発を電子カルテのベンダーに相談するとかなり費用がかかると言われましたが、既読管理システムと合わせてプラットフォームを利用して構築できないかとインテックに相談したところ、具体的な方法を提案してくれたのです。
これからの医療情報システムでは、機能をモジュール化し、新たな案件が出てきた場合にモジュールを再利用してコストと時間を節約することが重要です。インテックは将来の地域医療情報連携にも対応できる仕組みづくりを提案してくれたため安心感があり、選ぶ決め手になりました。HL7 FHIRへの対応に前向きに取り組む姿勢があったこともポイントの一つです。
──システム構築でとくに気をつけた点、こだわったポイントなど教えてください。
田中: 院内で対応できる読影依頼オーダーの数には限界があり、一部は外部の読影サービス会社を利用しています。今回構築したシステムでは、読影依頼オーダーがあらかじめ定めた数を超えると自動的に読影サービス会社に遠隔読影を依頼する仕様としたことで、読影依頼の振り分けに人的リソースを割くことなく、院内での読影と同様の運用で対応が可能になりました。
──既読管理・読影依頼オーダーの運用を開始して、どのような効果がありましたか。
田中: レポートの既読管理をシステム化する以前は、未読情報からデータを抽出して各診療科のドクターに回覧していましたが、今ではリアルタイムの既読情報がプラットフォーム上で可視化されるようになっています。これから本格運用が始まり管理部門でも適時に情報を把握できるため、医療安全に貢献すると考えています。 また、電子カルテを経由せずにデータを二次利用する道が開けました。今後のシステム構築において1からインターフェースを作る必要がなくなったことは大きな成果であると考えています。
成果1医療安全への貢献
各種レポートの既読管理をリアルタイムで可視化、未読通知の送付により見落としを未然に防止。
成果2医師等の負荷軽減
読影依頼オーダーは、院内・遠隔双方に対応し利便性を向上。
成果3将来のシステム更改・構築の自由度拡大
プラットフォームにデータが蓄積されるため、データの自由な二次利用が可能に。部門システム更改や新たなシステム構築も病院が主体的に行えるようになった。
──今後の展開についてお聞かせください。
安田: これまでとワークフローが変わった点があり、まだシステムを使いこなせていない場面もありますが、今後どうやって院内全体の運用に乗せていくかが、重要なポイントだと考えています。
田中: 岩手県には県域をつないだ地域医療情報のネットワーク構想があり、県立病院同士はすでに接続されています。今後の地域医療情報連携において、県立病院ネットワークとの接続にこのプラットフォームを活用していきたいですね。
Client Profile 岩手医科大学附属病院様
会社名 | 岩手医科大学附属病院 |
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所在地 | 岩手県紫波郡矢巾町医大通二丁目1番1号 |
東北最大規模の病床を持つ大規模地域拠点病院。明治30年に私立岩手病院として設立以来、高度医療、医学教育、医学研究を進め、2017年に創立120周年を迎えた。北東北における医療拠点として患者をトータルに診療する「総合医療ホスピタリティ」を提供している。
- ※本事例の情報は、2021年8月現在のものです。
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導入した商品・サービス
- 医療情報連携プラットフォーム
- 特定の製品やサービスに依存せず、医療機関のニーズ/課題に合わせて医療データの高度利用を可能とするプラットフォームです。