老朽化・複雑化し、業務改善の妨げとなっていた自社開発の基幹システムを刷新販売・生産・原価管理、会計までの一元管理を実現しDXに対応可能に
株式会社伊勢半(以下、伊勢半)ではAS/400上で稼働する自社開発の基幹システムを約30年にわたって利用してきた。業務拡大により処理能力の限界が近づいていたが、開発当時の人材はすでに退職し、設計書も失われていた。創業200周年を前に基幹システムの刷新を決断し、製造業向けのSCM総合パッケージシステムと会計システムを導入して業務プロセスの抜本的な改善に取り組んでいる。基幹システム刷新の背景、経緯と効果について財務・情報管理本部本部長兼情報システム部部長・野中信良氏、同部課長・橋本雅人氏、生産本部生産管理部副主事・川島志津子氏、同・高橋ときわ氏にお話をうかがった(文中敬称略)。
KEY POINT
- 販売・物流管理、生産管理、原価管理を製造業向けSCMパッケージで統一
- パッケージの標準機能をベースに業務改革を実施
- システムの基盤には、クラウドコンピューティングのIaaSを利用
30年前から稼働する基幹システムが業務改善・ビジネス拡大の足かせに
──貴社についてご紹介ください。
野中:
2025年に創業200周年を迎える伊勢半グループは1825年(文政8年)に江戸日本橋で創業した紅屋から始まりました。以来、伝統の紅作りの技を守りつつ化粧品メーカーとしてメイクアップ製品やスキンケア製品の製造・販売を中心に事業を行っています。
伊勢半ではマスカラ・アイライナーが人気の「ヒロインメイク」や、眉メイク専門ブランドの「ヘビーローテーション」をはじめとするブランドを展開し、マスクメイクに対応した「リキッドリップシールド」など様々な製品を開発・販売しています。グループの伊勢半本店では江戸時代から続く製法で日本の伝統的な紅を作り続けています。
──基幹システムの刷新に取り組んだ背景について教えてください。
野中: 当社ではAS/400上で稼働する自社開発の基幹システムを使用していました。開発時から30年近く経ち、最新技術の恩恵を受けるための拡張性や保守性が低減しており、早急なDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要なことは明らかでした。
川島: 旧システムでは投入したデータがシステム上反映されるまで一日かかる、前月に入力した単価が修正できないなどの問題がありました。生産管理の現場では機能が足りない部分を個人が各自のノウハウで補うことが定常化し、業務が属人化していました。
課題1基幹システムの安定的な稼働が期待できない
ハードウェアの老朽化も進み、安定稼働のためにはリプレースが必要。AS/400を知る社内要員も少なくなり、継続的な人員確保もできず、いずれシステムがブラックボックス化するのは必至。
課題2BCP対策が不十分
AS/400はデータセンターに設置はしていたが、帳票利用が前提で、本社に来なければ業務が困難。大規模災害やパンデミックなどの緊急事態に業務継続するには不十分。
課題3業務の変化への対応が困難
時代に応じた業務の変化に加え、「2025年の崖」やDXへの対応を進めるのが難しかった。
──この課題をどのように解決しようと考えたのですか。
野中: 当社の規模では情報システム部門がスクラッチで基幹システムを開発し、運用・サーバの保守まですべてを担うことはもはや現実的ではありません。そこで製造業向けのSCMパッケージを導入することによって販売から生産管理、原価管理までを一元的に管理すること、これと連動可能な会計パッケージを導入することにしました。基幹システムのインフラとなるハードウェアも自社では保有せず、クラウドサービスを利用することにしたのです。
化粧品業界の基盤業務に強いインテックのソリューションを採用
──パッケージシステムに求めた条件とはどんなものだったのでしょうか。
野中: 化粧品業界での実績があることを重視しました。今回導入したmcframeは化粧品メーカーでの先行事例が多かったことが採用の決め手です。
川島: 化粧品はSKUと呼ばれる受発注・在庫管理を行う際の管理単位が多いことが特徴です。たとえば、同じ型番の口紅でも色の違いがあり、パッケージの台紙だけが異なることがあります。これらは製品の型番は同じでも製造に必要な部品表(BOM)が変わってきます。システムがこうした管理の仕方に対応していないと、生産管理の現場では大量の手作業が発生してしまいます。
──SIerとしてインテックを選んだ理由を教えてください。
野中: インテックにはこれまでにも旧基幹システムの調査や当社のネットワーク基盤の構築、Web EDIシステムや生産スケジューラーなどのサブシステムの導入を発注していました。われわれのシステム環境をすでによく知っていることが新基幹システムの構築において大きなプラスになると考えました。
橋本: インテックが日用品・化粧品メーカーや卸売業社が利用するEDIプラットフォーム「プラネット」に創設時から関わっていること、mcframeの導入実績が豊富であることも安心感につながりました。
──システム構築において気をつけた点、こだわったポイントを教えてください。
野中: 情報システム部門としては要件が膨らみすぎないよう、現場との調整に注力しました。旧来の仕事のやり方に合わせて基幹システムをカスタマイズするのではなく、新しい基幹システムをどう使えば仕事の効率が上がるのかを現場が自分たちで見出せるようにするため、稼働可能なテスト環境を早めに整え、リアルなテストデータを用意することを意識しました。
リアルタイムにデータを把握し変動する需給にも柔軟に対応
──基幹システムの刷新は御社のビジネスにどのような効果がありましたか。
橋本: 業務の属人性を払拭して業務プロセスを改善できたことが挙げられます。また、部門間の連携もスピードアップしました。さらに、社会的状況の変化にも柔軟に対応できるようになりました。
川島: プリンタ出力された帳票を手作業で修正してファクシミリで工場とやり取りするといった古い仕事のやり方と決別できていたことで、コロナ禍でも社員はスムーズに在宅ワークに切り替えることができました。
高橋: リアルタイムでデータ共有ができることから、部署内の他のメンバーがどんな仕事をしているのか見えるようになり、業務分担の見直しや仕事のやり方そのものの変更が可能となりました。
成果1業務の効率化
データを通じて業務全体の流れが見えるようになったことで、業務の効率化や社員のスキルアップにも寄与。
成果2販売から生産、原価までを一元管理
営業部門と生産管理部門、工場で正確なデータが共有できるようになり、需給の変動による生産計画の変更への対処などもよりスムーズかつ迅速に。これまで見逃していた入力ミスなどの発見も容易に。
成果3業務や時代の変化にシステムが追随できるように
プロプラエタリーなシステムからオープン系のシステムになったことで利用できるシステムやアプリケーションの選択肢が広がり、今後のビジネス環境の変化に十分対応できる基盤ができた。
──今後の展開についてお聞かせください。
橋本: 社内にはまだ十分デジタル化の進んでいない部門もあります。工場のIT化、AI化は今後推進していきたいと考えています。
野中: 将来はさらにデータの活用を進めて未来の需要予測などもできるようにしたいと考えています。理想は毎日、経営陣に経営判断の基礎となるデータを提供できるようになることです。インテックには今後も頼れるパートナーとして期待しています。
Client Profile 株式会社伊勢半様
会社名 | 株式会社伊勢半 |
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本社 | 東京都千代田区四番町6番11号 |
URL | https://www.isehan.co.jp/ |
1825年(文政8年)に江戸日本橋で紅屋として創業。伝統の紅作りの技を守りつつ、化粧品メーカーとして「KISSME」をコーポレートブランドに掲げ、多くのメイクアップ製品やスキンケア製品の製造・販売を行っている。
- ※本事例の情報は、2021年3月現在のものです。
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公開日 2021年05月10日
導入した商品・サービス
- 生産管理パッケージ導入サービス(mcframe)
- 導入実績No.1の経験に基づく基幹ソリューションを提供します。
- SuperStream-NX導入支援サービス
- 企業のバックオフィスの最適化を実現する経営基盤パッケージ