DXもビジネスも加速させる「ローコード開発」とは?
企業をとりまくビジネス環境の変化が加速し、より柔軟で、迅速な対応が求められる時代になっています。企業のニーズに応え、ITをビジネスの成果に直結させる手段として「ローコード開発」が注目されています。ローコード開発とはどのようなものなのか、従来の開発手法との違いやメリット・デメリットなどを紹介します。
いま注目の「ローコード開発」とは?
日本語では「高速開発」や「超高速開発」と呼ばれることもある「ローコード(Low-Code)開発」は、いま世界的なトレンドとして急速な広がりを見せています。ITがビジネスを大きく左右する時代の象徴的な技術といわれるローコード開発とは、どのようなものなのでしょうか。
ローコード開発とは?
ローコード開発とは、可能なかぎりソースコードを書かずに、アプリケーションを迅速に開発する手法やその支援ツールのことです。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)と呼ばれる視覚的な操作で、画面部品やロジック部品を組み合わせることよって、工程を省略または自動化します。従来のシステム開発と比較しても短い開発期間で、高品質かつ安定したシステム開発を行うことが可能です。必要な部品を組み合わせてひとつのアプリケーションをつくり上げていく手法です。
ローコード開発が注目される理由とは?
かつてないほど先行きの見えない、変化の激しい時代のいま、業種を問わずDX(デジタルトランスフォーメーション)の実行が求められるようになっています。どの業界においても、急速に変化するビジネス要件に対して、迅速かつ柔軟に対応する必要が生じているのです。こうした風潮は、アプリケーションの開発手法に対しても例外ではなく、開発速度や品質、安定性など、あらゆる側面に変革が必要とされています。そのようななかで、ローコード開発が注目されています。
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DXとは?
ローコード開発がDXの推進において注目されていることを紹介しましたが、なぜそういわれるのか紐解いていきます。
そもそもDXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、2004年に、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。
日本におけるDXは、2018年に経済産業省によって再定義されており、DX推進ガイドラインには以下のように記されています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
つまり、ITを活用してビジネスにかかわるすべてをより良くし、企業文化までを変えて取り組むべき覚悟が必要であることを示しています。
DXの推進と切り離せない「2025年の崖」問題
2018年9月7日に経済産業省が発表したDXレポートは、DXへの取り組みの重要性に言及し、「2025年の崖」について警告しています。具体的には、老朽化した既存の基幹システムの問題点を指摘し、2025年までにシステムの刷新をしないと、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると説明しているのです。政府が民間企業のシステム導入に口をはさむのは異例といえます。いまやDXへの対応は、デジタル競争のなかで企業が存続し発展していくうえで、必ず取り組まなければならない課題であるといえるでしょう。
ローコード開発はDXの推進に役立つ技術
DXへの取り組みとして、既存のシステムをローコード開発ツールで再構築することで得られるメリットは多く、「2025年の崖」を回避することにもつながります。具体的には、以下が挙げられます。
- レガシーシステムの刷新により、開発が容易になり、市場の変化に応じてビジネスモデルを柔軟・迅速に適応させることができる
- ローコード開発ツールが新技術に対応することで、DXを推進しやすくなる
- システムの保守・管理が容易になり、コスト削減できる
- 予算や財源が確保でき、サービスの向上や新規事業を展開できる
古いシステムでは難しかったこと、不可能だったことを実現し、本格的なDXが可能になることから、ローコード開発はDX推進と合わせて言及されているのです。
ローコード開発のメリット・デメリットとは?
これからの時代のニーズにぴたりと合致するローコード開発。その具体的なメリットとはどのようなものなのでしょうか。また事前に知っておくべきデメリットについても解説します。
ローコード開発のメリットとは?
開発生産性の向上
これまでに述べたように、ローコード開発には開発にかかる時間を短縮し、開発コストを削減するという大きな特長があります。システム開発にある、「長い期間が必要」というイメージを払拭するとともに、プログラマーの工数を減少させ、開発にかかる人件費を削減できます。こうした特長を生かして、開発生産性を大きく向上させられるのがローコード開発のメリットです。
人員の技術ハードルを下げる
システムを構築するためには、高い技術力を持ったエンジニアが必要です。しかし、ローコード開発では、ツールの機能を利用することで技術的ハードルが下がります。データベースの構築、HTMLの記述など従来必要だった技術を習得しなくてもシステム開発を行える場合があります。
セキュリティ対策の負担を削減
ローコード開発はベンダーが用意したツールを活用するため、ゼロからシステムを構築するフルスクラッチ開発よりもセキュリティ対策の負担が軽くなります。一般的にはツール自体がセキュリティ対策を施されたかたちで提供されます。
品質の向上
プログラミングを行う部分が従来に比べて少ないため、必然的にミスが減少すると同時に、バグの修正にかかる時間やコストの軽減が期待できます。またローコード開発では、エンジニアが主体となって進めてきた従来の開発手法と違い、ユーザーみずからが主体となり開発を進めることも可能です。そのため業務要件との相違が起こりにくく、結果としてユーザーの目線に立った、品質の高い開発が行えるようになります。
新しいIT技術の利用
ローコード開発ツールは新しい技術を利用できるよう日々進化しています。新しい技術の導入によって機能の拡張や外部連携の幅が広がるため、使い勝手の向上、省人化が実現します。また、エンジニアの単純労働を減らし、高い付加価値を生む活動に専念させることができるでしょう。新しい技術を常に取り入れていく、という考え方そのものがメリットになるとも考えられます。
ローコード開発のデメリットとは?
ツールによる制約
従来の開発手法では、すべての機能をオーダーメイド形式で開発するため、顧客の細かい要望にも柔軟に対応することができました。しかしローコード開発の場合は、開発ツールが提供するパーツを使って実装するシステムであるため、開発者が用意したパーツのデザインや機能を拡張・変更することができないことがあります。システムに対して強い要望やこだわりを持っている場合、その要望に沿うことは難しく、イメージとは異なるシステムとなってしまう場合があります。
ツールの知識が必要
ローコード開発は技術的ハードルが低く、新しい言語を習得するより、比較的早くエンジニアの育成が可能です。一方で、ローコード開発の特性を生かし、品質の高いシステムを構築するには利用するツールの習熟が必要です。ローコード開発によるメリットを得るにはツールの特性を理解した上で使いこなさなければなりません。
DXを推し進めたローコード開発活用例とは?
ローコード開発は、官公庁から銀行や金融、医療、物流、ITなど、さまざまな業界・業種で活用されています。なかでもレガシーシステムを抱えている大企業では、DXを推し進めるべく、新しいプラットフォームに移行が行われています。ここでは、ローコード開発が活用できる場面を3つ紹介します。
1. レガシーマイグレーションにおけるローコード開発の活用
マイグレーションとは、プログラムやデータ、OSなどの環境やプラットフォームを移行することです。なかでも古い設計や仕様、メインフレームにもとづいて構築されたシステムをオープン系システムや製品をベースとしたものに置き換えることを、レガシーマイグレーションといいます。2000年代に開発した基幹となるレガシーシステムを改修しながら使い続けるケースもめずらしくないため、多くの日本企業が今後取り組むべき問題とされています。
レガシーシステムを使い続けることで起きる問題
レガシーシステムは古い技術で構築されているため、新しい技術に対応していないものがほとんどです。また、業務プロセスへの依存性がきわめて高いシステムは、ブラックボックス化されていることが多く容易に変更できなくなっています。市場の変化に応じて、柔軟で迅速な対応が求められるビジネスにおいて、業務プロセスが硬直化しかねない既存システムにしばられるのは致命的な問題となりかねません。また、たえず補修・改良・機能追加を繰り返すことで、開発・運用・保守などに制約やコストが高まるリスクもあります。
ローコード開発を活用して開発効率の向上とコスト削減を実現
レガシーシステムを刷新することは、DX促進をはかるうえでも非常に重要です。レガシーシステムから脱却し、新技術に対応するシステムに切り替えるにあたってローコード開発は効果的な手法です。ローコード開発ツールは、設計や実装といった基本的な機能が充実していることに加え、モバイルアプリへの対応に優れ、既存システムとの高い接続性を備えています。また、簡単な操作でアプリケーションの開発ができるので、開発・運用などのコストを大幅に削減し、市場の変化に柔軟に対応できるようになります。システム開発や運用を大幅に効率化すると同時にコスト削減も実現できるため、ローコード開発はレガシーマイグレーションに有効なのです。
2. システムのサイロ化の解消におけるローコード開発の活用
サイロ化とは、各部門や部署が独立して業務を行っていることで各々の間に壁が生じ、情報の連携や共有ができない状況のことを指す言葉で、タコツボ化とも呼ばれます。サイロ化はどのような組織でも起こりえますが、とくに部門が細かく分かれている大企業では解決難易度が高くなる傾向にあり、深刻化しています。
システムのサイロ化の問題点
なかでも、システムのサイロ化は大きな問題とされています。システムのサイロ化とは、システムが個別に最適化されていることにより、情報がばらばらになっている状態のことです。様々なシステムを併用している企業にとって、情報が各システム内で孤立してしまうと社内での共有や連携ができないばかりか、業務効率を低下させるなど多くの問題が生まれます。
ローコード開発を活用して会社全体の生産性向上を実現
システムのサイロ化を解消する一番の方法は、システムの基盤を統合することです。同じ基盤にのせてしまえば、データの連携を考えることなく情報の連携が可能になります。そこで役立つのがローコード開発ツールであるOutSystemsです。OutSystemsで基盤を統合することで、ローコード開発ツールのメリットをシステム全体で得ることができます。また、基盤の統合ができないシステムがあったとしても、OutSystemsは他機能との連携に優れているため、システムのサイロ化が再発することを防ぐことも可能です。このように、ローコード開発ツールの活用により全社的なシステム基盤の統合を実現することで、各部門の連携や情報の共有が円滑になり、業務の大幅な改善が進められます。会社全体がまとまるだけでなく、分析したデータをもとに新たなアプローチを生み出すなど、企業の生産能力の向上にも役立つでしょう。
3. Notesマイグレーションにおけるローコード開発の活用
Notes(ノーツ)は、1989年にロータス・デベロップメント社によって開発された草分け的なグループウェアです。Notesは組織内での円滑な情報共有やコミュニケーションを実現し、効率的に業務を遂行できると、大企業を中心に多くの企業に導入されてきました。しかし、リリースから30年が経ったいま、Notesから新しいプラットフォームへ移行する必要性が叫ばれています。
Notesを運用し続ける問題点
Notesは部署ごとにアプリ開発をしているため、個別最適化に強い反面、拡張性や保守性が低くなっています。それにより、サポート切れによるセキュリティの低下や、バージョンアップを行わず使い続けたためデータ蓄積が要因のレスポンスの悪化が起きています。また、個別最適化されているがゆえにアプリとデータベースは1対1の関係になっています。アプリを横断した情報の検索ができず、作業工数が膨らんでしまうのです。これらの問題を解決するために、Notesの改修で対応してきた企業も少なくありません。ですが、一番の問題はNotes専門の知識や技術なしではメンテナンスができないことです。30年以上経った現在、Notesの開発技術をもつ人材は限られています。これらの要因から、Notesマイグレーションの必要性が高まっているのです。
Notesマイグレーションと相性のよいローコード開発
Notesマイグレーションの方法は、おもに3つあるといわれています。スクラッチ開発、ローコード開発、ソフトウェアパッケージサービスの利用です。ここではローコード開発の活用に絞って紹介します。OutSystemsはクラウドやオンプレミスなどの環境を問わず、またマルチチャネル対応のローコード開発ツールです。Notesマイグレーション時に課題となりやすい、Notesの要件を満たすツール選定が難航する、開発期間が長期化するといったことを解決できるという利点があります。また、開発生産性の向上や様々なシステムとの連携も実現できます。ローコード開発を活用することで、DX推進において重要な開発スピードと柔軟性のあるシステムに生まれ変わらせることができるのです。
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ローコード開発でのシステム構築の流れは?
それでは実際に、ローコード開発でシステムを構築するにあたり、従来の手法に比べてどのような違いがあるのでしょうか。
ローコード開発と従来のシステム開発の違いとは?
GUIによって画面部品やロジック部品の組み立てを視覚的に行い、またプログラムの自動生成によって工程の省略や自動化を実現します。これによって開発期間を短縮し、ミスのない高品質なコードによる安定したシステム開発を実現できます。
行程ごとに見るローコード開発の優位性
設計行程:設計内容の可視化
従来のシステム開発では、多くの場合、EXCELを用いて要件や設計内容を記載していました。多くのドキュメントが必要で、実際のプログラムと内容が乖離するということも起こっていました。システムが大きくなると設計内容の把握にかかる工数も増えていきます。ローコード開発では優れたGUIで設計内容を登録でき、EXCELのドキュメントの一部を省略することが可能となります。設計内容がツールで可視化されるため、システムの機能変更の際には、影響箇所を調査しやすく、調査漏れによる修正ミスを減らすことができます。
開発行程:品質確保と開発工数の削減
従来のシステム開発手法では、すべてエンジニアによるコーディングで機能を開発するため、開発する機能が複雑になればなるほどプログラムごとの不整合が生じ、より多くの開発日数が必要でした。ローコード開発ではツール上で整合性が守られています。たとえば、データベースに存在しない項目を画面に表示する処理を登録するとツールが警告するか、処理を作成できないようになっています。そのため、間違った内容でシステム開発を進めることがなく、高い品質を実現できる上、修正に必要だった工数が不要となります。ローコード開発による生産性向上はツールによるミス削減の効果もあると言えます。
まとめ
ITがビジネスを左右する時代の象徴といえる技術であるといっても過言ではないのが、ローコード開発です。DXの導入が進み、システム開発やアプリケーション開発の効率化によってビジネスがさらに加速することで、企業の差別化が進むことが予想されています。
世界的なトレンドとなりつつあるローコード開発をご検討中の方向けに、システム開発を変えDXを実現する、ローコード開発のお役立ち情報をまとめた資料をご用意しました。本書では、「開発生産性の向上」・「自社でGUIベースの開発によりプログラムの見える化」・「技術ハードルの低減」・「DXに対応する新技術の利用」というローコード開発の4大特長を基に、いま求められるローコード開発ツールの特長を詳しくご紹介しています!ローコード開発にご興味のある方はぜひご覧ください。
公開日 2021年04月28日
資料ダウンロード
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システム開発を変えDXを実現する「ローコード開発」
ローコード開発のメリット・代表的なツールのご紹介【全22ページ】
1章 システム開発を変える!ローコード開発とは?
2章 「2025年の崖」とITシステムの課題
3章 DXを実現する!ローコード開発がもらたすメリット
4章 ローコード開発を試してみよう