専用スーパーチャージャーで充電中のモデルY

テスラユーザーになって見えてきたものとは
“テスラ式エコシステム”の実情

Silicon Valley Today
公開日:2025.03.28
INTEC Innovative Technologies USA, Inc.

コロナ禍が落ち着き、お客さまの視察も再開されてきた2022年、カリフォルニア州環境当局によるZero Emissionが宣言されました。そこで23年11月、お客さまのアテンドにも使用するため、IIT(INTEC Innovative Technologies USA Inc.)でもテスラのモデルYを社用車にしました。
今回は、実際にテスラ車を購入(リース)し、約1年使って見えてきた“テスラ式エコシステム”を紹介したいと思います。

テスラは電気自動車のメーカーなのか?

テスラは電気自動車(EV)メーカーとして知られていますが、その周辺分野にも事業を広げています。①電気自動車(EV)、②ソーラーパネルなどエネルギーソリューション、③AIと自動運転、④保険サービス、⑤バッテリーなどの製造とサプライチェーン、⑥スーパーチャージャーネットワーク、⑦ロボティクス、⑧リースやローンなどの金融サービス、この8分野が、一般に公開されているテスラの事業分野です。
「TESLA is a highly sustainable tech conglomerate.(テスラは、サスティナブルな複合テック企業です)」
これは、シリコンバレーで開催されるカンファレンスで、よく耳にする言葉です。2024年、自動車販売台数は初めて前年割れとなりましたが、テスラはこれまで右肩上がりで伸びてきました。ユーザーの取り込みを含めて、複合的な独自のエコシステムを形成した結果と言えそうです。実際、車の所有者となった私には毎週のようにソーラーパネルの設置に関する広告が届きますし、車の購入を機にソーラーパネルを設置した方も多くいるようです。

テスラの保険以外は割高になる料金設定

まずは、購入(リース)の手続きから振り返ってみます。テスラはディーラーが存在せず、購入方法はオンラインのみです。
申し込みの中で自動車保険の手続きがあり、テスラ保険なら割安になるというメッセージが出ましたが、テスラ車にしか適用できません。私は自家用にハイブリッドRV車を保有し保険に入っていますので、既存の保険にテスラを追加すると回答して次のステップに進もうとしました。すると、保険に入ってからでないとプロセスが進められないというメッセージが…。急いで保険のブローカーに連絡し、既存の自家用車リース切れに伴うテスラへの乗換登録をお願いした結果、保険料がもとの2,100ドル(約32万円)のから3,200ドル(約49万円)になってしまいました。テスラは、自社の保険に入らない場合は比較的高いマージンを乗せており、既存の保険会社をサードパーティーとして位置付けていることがわかりました。

車を取りに行く苦労はメンテナンス不要で挽回できる?

納車は、近所の店舗で受け取る選択をすると3,000ドル(約46万円)ほど移動費が追加されるということで、自宅から60km離れているテスラ指定の店舗まで取りに行くことにしました。ちなみに60kmは往復2時間半かかるので、アメリカでも日常生活圏外の距離です。
やっと着いた指定店舗での受付は、納車日時と場所の確定通知画面を見せて完了。「受取りサインをお願いします。あそこに置いてあるから乗って帰っていただいて大丈夫です。操作方法で分からないことがあれば、彼に聞いて下さい」。
正直、何もわかりません…。ロック解除の仕方もわからず立っていると、初めて自分の担当となる“彼”がロックの開け方やエンジンのかけ方を教えてくれました。説明を受けたのはわずか5分でしたが、ここで初めて人が登場し、自分に時間を使ってくれたことに帰路が明るくなりました。「僕も5年テスラに乗っているけど故障はゼロ。タイヤ交換やウォッシャー液の補充は、近所にあるAmerican Tire(自動車整備施設のチェーン店)に行くと良いよ」。
自家用ハイブリッドRV車は、半年に一度オイル交換などのメンテナンス費用が掛かっていますが、これが不要になると聞いて、テスラのコストパフォーマンスに対する期待は一気に高まりました。

意外な駐車時の電力消費

テスラYは満充電で航続可能距離400km前後といわれています。今や街の至るところにある専用チャージャー(スーパーチャージャー)で充電すると、30分で約50%充電できます。
75%の充電で約22マイル(35km)の事務所まで行ってみると、着いた時は68%でした。テスラアプリの充電量を走行可能距離で表示する機能を使うと、22マイル走ったことになり、正確です。このように走行中の電力消費に違和感はないのですが、駐車時にも少なからず電力を消費してしまうのは意外な落とし穴でした。
一晩駐車して5%消費してしまうこともあり、そうなると走行距離20~25km分に相当します。現在のワークスタイルは在宅がメインなので、出勤前に充電するようにしていますが、50%の充電に毎回約20ドル支払っています。カリフォルニア州は全米一ガソリン代が高いのですが、それでもRV車で出社にかかるコストは往復で5ドル強なので、コストパフォーマンスではガソリン車に軍配が上がることになりました。

テスラが選ばれる理由

カリフォルニア州の建築省エネルギー基準では、2023年から新築する全ての戸建て住宅、集合住宅および住宅以外の建築物(オフィスや商業施設、倉庫、学校など)に太陽光発電設備の設置を義務付けています。住宅向けの太陽光発電設備に対する税額控除は、設置費用の最高30%まで引き上げられ、この水準は32年まで続く予定です。この優遇制度でソーラーパネルを設置し、電力自給を実現した家庭では電気自動車の充電費用を抑えられるのだと思います。
実際、環境意識の高いシリコンバレーで乗っている人は非常に多く、10台に2、3台の感覚で目にします。これだけ街で走っていながらモールのスーパーチャージャーが満車になっていることは少ないので、私のように自宅に発電設備を持たずにテスラユーザーとなる人間は少数派なのでしょう。
そして何よりテスラが選ばれてきた理由は、多岐にわたる事業分野も含め、社会課題に向き合うスタンスを崩さず、それをブレなく発信しているからだと考えられます。

  • テスラのミッション
    「地球上の持続可能エネルギーへの移行を加速」
    To accelerate the world's transition to sustainable energy.
  • テスラのビジョン
    「持続可能な未来を実現する」
    To create a sustainable future.

現時点では販売不振やリコール問題で苦戦している印象がありますが、テスラの明確なビジョンや革新的な技術を支持するコアなファンは多く、信頼回復するための迅速な対応や新モデルの投入などで、巻き返しも早いかもしれません。
私たちIITは今年、創立10年を迎えます。今年を第二創業期のスタートと位置づけ、シリコンバレーの動向やトレンドをウォッチしながら、社会課題を解決する取り組みを行っていきたいと考えています。

  • 記載内容は公開時点のものです。
  • 記載されている社名、製品名、ロゴは各社の商標または登録商標です。
  • 記載されている事項の一部または全部を複写、改変、転載することは、いかなる理由、形態を問わず禁じます。
  • 記載されている事項は予告なく変更することがあります。
ページトップへ戻る