BIFで旬のトレンドをキャッチ
BIFは、2003年にオープンイノベーションの概念を提唱したヘンリー・チェスブロー教授(Professor Henry Chesbrough)によって創設されました。企業の取り組みや戦略立案をアカデミックの視点から捉え、ケーススタディを共有することによって参加企業のイノベーションをサポートすることを目的としています。
2023年はChatGPTを中心とした空前の生成AIブームでしたが、IITはBIFでの活動を通して、生成AIブームを主導してきたMicrosoftとAWSの取り組みを直接聞くことができました。
Microsoftは、時間をかけて慎重に進めてきたプロセスを次のように説明しています。
- ChatGPTに見られるAIブームは2023年に突然始まったものではなく、2012年にDeep Learning革命が起きた流れの上にある。
- 2019年7月にOpenAIに1回目の出資をするまで、2年以上の準備期間を設けていた。
- 2019年の出資から共同で具体的な協業体制とサービスコンセプトを創り上げた。
- その結果、2023年に追加投資をしてマーケットへアピールした。
- 2017年の調査開始から注目を集めるまでに6年を要したが、常に「How to build up new market」を考え、そして今、トレンドの1つを作った。対照的に、AWSはイノベーションを「Press release first」の考え方で推進しています。
- 完成されたものを発表するのではなく、意思決定したことを伝えるため第1回のプレスリリースをする。
- プレスリリースに反応した顧客と、プロジェクトを開始する。
- 顧客からのFAQを通してフィードバックを得られるように視覚化(コンセプト設計)する。
AWSは顧客を引き寄せるためにプレスを活用しており、初回のプレス時は1行もコードを書いておらず、当然ですが試すこともしていないとのことでした。イノベーションのスピードを重視するAWSの考え方は理解できるのですが、日本人にはMicrosoftのプロセスの方が馴染みやすいのかもしれません。みなさんのお考えはどうでしょうか。
BIFでIITが取り組みを発表
BIFで登壇する企業は、Microsoft、AWS、Google、NVIDIA、Adobe、NASA、IBM、Intelなど世界の超一流企業ばかりです。2023年9月、IITはこれらのCEO、CTO、CIOと並んでBIFでオープンイノベーションの取り組みを講演する機会をいただきました。
IITが提唱したのは、各企業のメタバース利活用ニーズに着目し、メタバース参入に必要な機能を1つのプラットフォームにまとめ上げてノーコードで利用できるVaaS(metaVerse as a Service)の構築です。1つのサービスやデバイスに拘らず、さまざまなサービスやデバイスを接続可能なハブとして機能する設計にしました。人物の実写リアルタイムキャプチャ技術(Holotch, Inc.)、XRゴーグルなしでのホログラムの投影技術(IKIN, Inc.)、バーチャル空間を自由に作成する技術(WEVR, Inc.)など、特殊な技術を持った企業とパートナーシップを結んで構築しています。
このコンセプト設計と機能を構成する3社のスカウティングは、Haas出身でシリコンバレーの有力アクセラレータ、Xploration Partners(https://www.xplorationpartners.com/、以下XP社)との協業で創り上げたもので、まさにシリコンバレーのエコシステムを活用したオープンイノベーションです。講演当日はXP社の取締役であるAna Martinez氏が応援に駆け付け、IITのチャレンジが今後のメタバース市場にもたらす効果や、XP社との複数プロジェクトを通じてIITと構築した信頼関係のすばらしさ、現地エコシステムやHaasネットワークとIITの密接な関係をアピールしてくれました。
講演後は会場内のブースでVaaSのデモを行い、いくつかの企業とは自社の業務に活かすことができるか話をさせてほしいと商談につながりました。自分たちが発信することで本当の意味で現地ネットワークの仲間入りを果たし、より深い情報をキャッチするための足場を固めるよい経験となりました。
キーワードはAIとメタバース
BIFで1年間活動してみて、現時点におけるイノベーションのキーワードはAIとメタバースだと感じています。IITは、VaaSのユーザーインターフェース(もしかしたらメタバース空間にアクセスするという意味でUser Inter Spaceと言った方がよいかもしれません)にAIを活用し、実用化に向けた取り組みも開始しています。
そんな中、家に帰ると高校生の息子が数学の解析学と格闘していました。授業についていけないのかと尋ねると、今回の先生の授業は毎回YouTubeを流しておしまいなので、自分で何とかするしかないのだとか。このような日常のペイン(抱えている課題)にも、AIとメタバースによる教育ソリューションというアイデアがありそうです。
IITは、今後も新技術を日常に適用するための研究を続けていきたいと考えています。